はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

明日の農

2008-09-04 21:36:51 | かごんま便り
 「農学部に進みたいと言うと、おやじに『百姓を継ぐのに大学なんぞ行かんでいい!』と一喝されたよ」。昔ある人からそんな話を聞いた。
 今時、農学部が単に作物の耕作法を教える所と信じている人はいまい。農学部の守備範囲は素人が「農業」と聞いてイメージする分野にとどまらない。農業高校も同様でバイオテクノロジーや環境保護、食の安全・安心など、極めて今日的なテーマに取り組んでいる。
 先日、九州・沖縄の農業高校生たちが集う「九州学校農業クラブ連盟発表大会」が鹿屋市で開かれた。プロジェクト(研究)発表と意見発表が大きな柱で、それぞれ食料▽環境▽文化・生活──の3区分。地元の資源や特産物を生かした新たな製品開発、地域の福祉拠点づくりや近隣の学校への啓発活動など、どの発表も素晴らしかった。パソコンやプロジェクターによる視覚的な分かりやすさも取り入れ、専門知識を持ち合わせていない私でも十二分に楽しめ、かつためになった。
 農産物の自由化、農家の高齢化と後継難に伴う農地の荒廃など、農業を取り巻く環境は厳しい。にもかかわらず、目を輝かせて明日の農を熱く語る彼らの姿のすがすがしさと頼もしさ。彼らの夢が夢に終わらず現実になれば、日本の農業の行く末には間違いなく一筋の光が見えると思う。
 審査の結果、10月の全国大会には県内から2人が進む。養鶏農家の跡取りとして更なる品質・経営向上へのビジョンを語った野迫昌平さん(鹿屋農2年)、農業がもたらす土壌や水質などの環境汚染に切り込んだ近藤舞さん(同1年)。2人とも頑張ってほしい。
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 第36回毎日農業記録賞の締め切りが迫った。今年も農業を学ぶ生徒たちの意欲作が多数寄せられると期待している。もちろん高校生部門ばかりでなく一般部門にも力作をお待ちしています。
鹿児島支局長 平山千里2008/9/1 毎日新聞掲載