はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

菜の花エコバス

2009-07-03 22:43:51 | アカショウビンのつぶやき
 鹿屋市には1895年に創立された、歴史の古い県立の農業高校がある。

 同校は、地球温暖化防止対策として、2005年から、県トラック協会との共同実験「かのや菜の花エコプロジェクト」を立ち上げた。その一環としてこのほど菜種油の廃油から作った<バイオディーゼル燃料(BDF)>で走る「菜の花エコバス」が走り始めた。

 生徒たちは、学校の水田120㌃で菜の花を栽培し、食用に使用後、その廃油を校内の精製装置でBDFとして生産している。「菜の花エコバス」の燃料はBDF100%。BDFは排ガス中の二酸化炭素削減効果があるとされ、今後、エコバスの燃費や排ガス中の二酸化炭素濃度を測定し「BDF利用に関する研究」としてまとめる予定という。

 第1号の「エコバス」は実習地への生徒の送迎車だが、これから校内の全公用車への導入を目指すという。そして廃食油が環境にやさしい燃料になることを広くアピールしたいと意気込んでいる。 

写真は毎日新聞鹿児島版掲載より

韓国岳

2009-07-03 22:03:10 | はがき随筆
 40年ぶりの懐かしさから″ちょっとだけ″と踏み込んだ登山道。緑のトンネルに抱かれ心が弾む。ミヤマキリシマの出迎えに感激しながら、下山してこられる方に尋ねてみる。「あとどれくらいですか?」「ここからだと歩きやすく、もうきつくない」と言われお礼を言いつつ、山頂に向けて足は止まらなくなってしまった。のぞき見た恐怖がいまだに残る深いカルデラも新緑とピンクに彩られている。思い切り頂の空気を吸い込み、全身を伸ばしてみる。幸せ! 食物もなく服もなく早々に下山したけど「登ろうか」「いいよ-」と同行してくれる夫に感謝です。
  鹿児島市 浜地恵美子(54) 2009/7/3 毎日新聞鹿児島版掲載



私が守る番

2009-07-03 22:00:29 | はがき随筆
 「三希子とお母ちゃんを守ってあげられなくなって、ごめんね」。夫はそう言う。
 2年前、脳出血で倒れ、半身マヒとなり、ほとんどベッドに寝たきりの生活。
 まだ幼い一人娘と私を、これからもずっとずっと守って、3人で仲良く生きていくつもりだった。2年前の春までは。
 でも、その時10歳だった娘も成長して中学1年生。私も、それなりに自宅介護をやっているし、夫には安心して、夫としてお父さんとして、自信を持って生きてほしい。
 「今度は私が守る番」だねと夫の寝顔にそっと語りかけた。
  鹿児島市 萩原裕子(57) 2009/7/2 毎日新聞鹿児島版掲載


母を連れて

2009-07-03 21:57:31 | はがき随筆
 6月の初め、いとこから梅ちぎりの誘いがあった。そこは棚田の最上段、うっそうとした森の入り口。昼間でも一人では心細い所で、清流の上に立つ老木には、ほほを真っ赤に染めた梅。それを母にも見せようと。
 石ころ道を車で数分、ふらつく足を支えながら歩くこと10分程。木の下にはブルーシート、そこに座らせ枝を手渡すと、しばらく見つめてちぎり始めた。小さなかごI杯になると横になり寝入ってしまった。
 「来年もよろしく」と梅の木に願った。そしてここに母もいるようにと。91歳、要介護5.帰り、車道まで弟がおぶった。
  薩摩川内市 馬場園征子(68) 2009/7/1 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はマグナさん

ガマの油売り

2009-07-03 21:46:58 | はがき随筆
 役所広司初監督の面白い映画を見た。帰り道、一杯飲みながら、幼い時に出会った「ガマの油売り」の話に花が咲いた。
 私の記憶では近所の市場前の大道に人垣ができ、映画の中と同じような口上や振りをやっていた。夫の方も、下校時に年1回くらい見物していたそうだ。
 ある時、夫の隣で一緒に見ていた同級生に「ガマの油売り」のおじさんが寄ってきた。顔のホクロを指して「これは無い方がいい」と、「ガマの油」を塗って針の先でぴっと取ってしまったそうだ。昔、路上では、子供たちの好奇心をかきたてることがたくさん起きていた。
  鹿児島市 高橋真理(60) 2009/6/30 毎日新聞鹿児島版掲載