はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

登山

2009-09-07 21:31:33 | はがき随筆
 富山県のある小学校で6年生になると立山登山を経験して一人前になるという映像を見た。
 そういえば初めての霧島登山も6年生の時。途中で断念した数人の中に私もいて、頂上を極めなかった後味の悪さを、ずっと引きずっていた。
 20歳の夏、立山に登ってからの私は、山のとりこになってしまった。のどの乾きを潤すために雪を食べ過ぎて数日、体が水ぶくれ状態になったことも懐かしい。当時丸々と太っていた私に仲間は「転がって下りた方が早い」などと言ったりもした。登頂のさわやかさときたら何ものにも代えがたいものだった。
  霧島市 □町円子(69) 2009/9/7 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はこばやんさん

せみしぐれ

2009-09-07 21:26:49 | はがき随筆
 小学3年生の学芸会、劇の海幸彦、山幸彦。私は釣り針のかかった魚の役。セリフは一言だったが、物語を盛り上げる大事な役目だったと思う。先生の合図で舞台挟しと転げ回り「イタイ! イタイ!」。満席の父母がドッと笑う。テレビや自動車も少なかった時代。平和で、のどかなあのころを心のどこかでいつも思い出している。
 私を育ててくれた山深き懐かしい小学校が近々閉校になるとの記事に1日訪ねた。人けのない校庭に、1人たたずむ。昔のままのせみしぐれ。
 ふと先生の声が、同級生の声が、聞こえたような気がした。
  指宿市 有村好一(60) 2009/9/6 毎日新聞鹿児島版掲載