はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

味覚

2009-09-09 15:00:13 | 岩国エッセイサロンより
 秋は一年中で一番好きな季節。果物は豊富で、なかでも無花果がおいしい。子供のころ我が家ではあちこちに植えてあり、学校から帰ると木に登り、手当たり次第食べた。大人の□にはなかなか入らなかった。

 そのうち、クレームがついた。兄の提案で、自分の持ち木を決めた。生(な)り木はけんかをすると枯れるという言い伝えがあった。なんとその年、見事に枯れた。うそのようなほんとの話。遠い昔の苦い思い出。

 今スーパーでは、ふっくらと柔らかく熟れた無花果が並んでいる。値段もそこそこ高い。買って食べてみるが、やはり我が家のあの味は忘れられない。 
  岩国市  岩国エッセイサロン会員   檜原冨美枝
   (2009.09.03 毎日新聞「はがき随筆」掲載)
写真はyushitaさん





妻の消費期限

2009-09-09 14:07:13 | 岩国エッセイサロンより
 ある朝「もっと早く出せよ」「これ、もう食べられないよ」と私は妻を怒鳴る。妻はたちまち不機嫌になり「まだ大丈夫よ」と食べてみせる。一昨日の夕食用に作ったポテト・サラダで、既に36時間を経過している。

 こういう諍いは、これまでも度々である。妻は食あたりらしきことの経験がない、細菌に強い胃腸の持ち主。私は全く逆で、いとも簡単に食あたりする。この体質の違いは深刻である。 

 おおらかな夫でありたいと思うが、身を守る方が先決で悩ましい。これから年を重ねると、さらに妻の食品に対する消費期限が延びそうで心配が募る。
  岩国市  岩国エッセイサロン会員   山本 一
    (2009.08.20 毎日新聞「はがき随筆」掲載)