はがき随筆8月度の入選作品が決まりまし
た。
▽中種子町増田、西田光子さん(51)の「ミステリアス」(9日)
▽いちき串木野市上名、奥吉志代子さん(60)の「夏の思い出」(22日)
▽姶良町東餅田、高橋たまさん(74)の「梅仕事」(15日)
―の3点です。
近くの大学に集中講義に出かけ、その試験の時「今後の参考にするから、講義の批評をしておいてくれ」と言ったら「70歳の先生にも今後の参考が必要ですか」と逆に聞かれ、一瞬戸惑いました。文章を書く時もそうですが、自分に対する遠近法は難しいものです。
西田さんの「ミステリアス」は、雨天の皆既日食ではあったが、神秘的な体験ができた。26年後の皆既日食まで元気でいようと楽しみができたのは、日食がもたらしたミステリアスだという、明るく希望のある文章です。
奥吉さんの「夏の思い出」は小学3年の時、隣家の中学生と虫捕りに行き、のどが乾いたので田んぼのスイカを取って食べたという「生まれて初めての泥棒体験」が、まるで昨日のことのように鮮やかに描かれています。今でもドキドキしますね。
高橋さんの「梅仕事」は、今年の天候不順で梅干しの「土用干し」が出来ない。そのあせりと、昨年の作旬が結びつけられています。「梅干して母の姿のありありと」。日常のある瞬間に、亡き人のことが思い出されるのは不思議な現象ですが、その一瞬がうまく言葉に定着されています。
以上が入選作です。次に優れていたものをいくつかを紹介します。
御領満さんの「パートナー」 (27日)は、3人の子供たちが結婚して次々と家を離れ、夫婦2人だけになってしまうと、お互いに言葉遣いにも気をつけるようになった、という内容です。本当の意味のパートナーシップの始まりです。浜地恵美子さんの「脱帽です」(23日)は、宴会のくじで焼酎が当たったご主人が、その他にも孫娘のために、大きなピンクの人形を譲ってもらって抱えてきたという、想像するさえ微笑ましくなる内容です。小村忍さんの「植物採集会」(28日)は、子供だちと植物採集に出掛けた時の、子供たちの生き生きとした様子が、温かい視線で描かれています。
(日本近代文学会評議員、鹿児島大名誉教授石田忠彦)
た。
▽中種子町増田、西田光子さん(51)の「ミステリアス」(9日)
▽いちき串木野市上名、奥吉志代子さん(60)の「夏の思い出」(22日)
▽姶良町東餅田、高橋たまさん(74)の「梅仕事」(15日)
―の3点です。
近くの大学に集中講義に出かけ、その試験の時「今後の参考にするから、講義の批評をしておいてくれ」と言ったら「70歳の先生にも今後の参考が必要ですか」と逆に聞かれ、一瞬戸惑いました。文章を書く時もそうですが、自分に対する遠近法は難しいものです。
西田さんの「ミステリアス」は、雨天の皆既日食ではあったが、神秘的な体験ができた。26年後の皆既日食まで元気でいようと楽しみができたのは、日食がもたらしたミステリアスだという、明るく希望のある文章です。
奥吉さんの「夏の思い出」は小学3年の時、隣家の中学生と虫捕りに行き、のどが乾いたので田んぼのスイカを取って食べたという「生まれて初めての泥棒体験」が、まるで昨日のことのように鮮やかに描かれています。今でもドキドキしますね。
高橋さんの「梅仕事」は、今年の天候不順で梅干しの「土用干し」が出来ない。そのあせりと、昨年の作旬が結びつけられています。「梅干して母の姿のありありと」。日常のある瞬間に、亡き人のことが思い出されるのは不思議な現象ですが、その一瞬がうまく言葉に定着されています。
以上が入選作です。次に優れていたものをいくつかを紹介します。
御領満さんの「パートナー」 (27日)は、3人の子供たちが結婚して次々と家を離れ、夫婦2人だけになってしまうと、お互いに言葉遣いにも気をつけるようになった、という内容です。本当の意味のパートナーシップの始まりです。浜地恵美子さんの「脱帽です」(23日)は、宴会のくじで焼酎が当たったご主人が、その他にも孫娘のために、大きなピンクの人形を譲ってもらって抱えてきたという、想像するさえ微笑ましくなる内容です。小村忍さんの「植物採集会」(28日)は、子供だちと植物採集に出掛けた時の、子供たちの生き生きとした様子が、温かい視線で描かれています。
(日本近代文学会評議員、鹿児島大名誉教授石田忠彦)