はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

人生の夏休み

2010-09-12 17:35:35 | はがき随筆
 「大学時代は人生の夏休み」とアルバイト先の社員がつぶやいた。終わりゆく大学最後の夏休みを惜しむ私に向けた言葉だ。我が身を振り返れば、確かに、そうだ。講義そっちのけでサークルに励んだ。好きな本を読み、集会や講演会に参加して回った。お酒も飲み、遊んだ。まさに「人生の夏休み」と呼ぶに、ふさわしい大学生活だ。
 さて、人生の夏休み時代の最後の夏休みが、そろそろ終わる。漫然と過ごしたわけではないが、後悔もある。人生の夏休みは後悔なく終わりたい。総仕上げでもある9月からの後期課程に向けて気合いを入れ直そう。
 鹿児島市 山下智恵(23) 2010/9/12 毎日新聞鹿児島版掲載

声が聞きたい

2010-09-12 17:29:47 | はがき随筆
 脳出血で倒れて3年半。半身マヒのままの夫が携帯電話を握りしめて、じっと下を向き「お母さんが返事をしてくれないかなぁ」と言う。そして「声が聞きたいから、これで、かけてくれる?」と、私に携帯を差し出した。
 戸惑う私を見ていた13歳のひとり娘が「貸して。入れてあげる」と、カチャカチャと入力しだした。あれ、もしかして天国のおばあちゃんの番号を知ってるの? と思ったくらい、確信にみちていた。「ハイ、入力しといたよ」。渡された携帯には「天国」と書いてあり、番号は無かった。
  鹿児島市 萩原裕子(58) 2010/9/11 毎日新聞鹿児島版掲載