ご存知、イソップ童話「ウサギとカメ」。それを少し書き直し、換骨奪胎してみたい。
スタートから一気呵成(いっきかせい)でトップのウサギ。追うカメは全力疾走。だが、動きはスローVTRを見ているよう。カメの頭は汗まみれ。粉骨砕身、足を運ぶのに、差は開くばかり。いつまでたっても前途遼遠(ぜんとりょうえん)。
ところが、ウサギはゴールに着く前、大胆不敵に「休んでいくか」と一時休憩。半覚半睡のうちに、ふっと睡魔に襲われて、夢の中へ。ウサギがお昼寝している間に、カメは一心不乱。全身血液フル回転で、息切れし疲労困憊(ひろうこんぱい)しながらもフィニッシュする。
それが原作。油断大敵という教訓だ。
リライトすれば、こうだ。
カメがゴールする直前、ウサギはパッと目を覚ます。「ヤバい」。お昼寝して体力回復、気力充実したウサギ。前にも増して速度倍増。勇往邁進(ゆうおうまいしん)走り出し、ゴール直前でカメを振り切る。電光石火の早業で、お見事、1等賞。
教訓。休む時は、ちゃんと休みましょう。
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多事多難だった2010年。冬季五輪があったのは2月。銀盤の女王争いで「真央ちゃん惜しくも銀メダル」に日本中が切歯扼腕(せっしやくわん)。6月はサッカーW杯。桜島出身の遠藤選手が八面六臂(はちめんろっぴ)の大活躍。開催地の南アフリカとの時差から、地元の応援も昼夜兼行。
徳之島は、ふってわいた基地誘致。官房長官の鹿児島入りは5月。
7月に参院選挙。秋には阿久根で解職請求、奄美で集中豪雨。あれやこれやで記者派遣。記者たちは、まさに東奔西走、南船北馬。
でも、ちょっと、疲れました。
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今年はウサギ年。あくせくして跳びはねるだけでなく、時には、ゆっくり休んでパワーを充電することも考えつつ、1年を過ごしたいものです。
鹿児島支局長 馬原浩 2011/1/4毎日新聞掲載