岩国市 会 員 安西 詩代
グループホームに入居する96歳の義母は、食欲がなくなって2ヵ月近くたつ。足がむくみ、肺やおなかにも水がたまるようになった。主治医から昨年11月、「終末期です」と言われた。施設でも最期のみとり方を相談した。
いざという時の救急車の搬送は断った。しかし、本当に最後の苦しみはないのだろうか。救急車を呼ばず、後悔はしないのか。正直、わからない。
義母は早くから日本尊厳死協会のカードを持っていて、「単なる延命治療はしない」と言っていた。食欲はなくなったが、まだまだのどは通る。
1日3回は通えないけれど、夕食だけでも食べてもらおう。スタッフの人では□を開かない。でも私だと、どういうわけか「もういらない」と言いながら完食してくれる。義母ののどが食物を拒否し、通らなくなるまで食べてほしい。
そしてすべての器官が終わりを告げ、ロウソクの火がそよ風でふっと消えてしまうように、息が止まることを析る。
悲しい別れが遠くないことを感じつつ、穏やかな死を、と願っている。そのうち必ず訪れる私の最期のときの理想の死を義母に求めて、そして重ね合わせる。
さあ、午後6時だ。夕食が始まる。自転車のあかりをつけ、義母のもとへ出かけよう。
(2011.01.26 朝日新聞「ひととき」掲載)岩国エッセイサロンより転載
グループホームに入居する96歳の義母は、食欲がなくなって2ヵ月近くたつ。足がむくみ、肺やおなかにも水がたまるようになった。主治医から昨年11月、「終末期です」と言われた。施設でも最期のみとり方を相談した。
いざという時の救急車の搬送は断った。しかし、本当に最後の苦しみはないのだろうか。救急車を呼ばず、後悔はしないのか。正直、わからない。
義母は早くから日本尊厳死協会のカードを持っていて、「単なる延命治療はしない」と言っていた。食欲はなくなったが、まだまだのどは通る。
1日3回は通えないけれど、夕食だけでも食べてもらおう。スタッフの人では□を開かない。でも私だと、どういうわけか「もういらない」と言いながら完食してくれる。義母ののどが食物を拒否し、通らなくなるまで食べてほしい。
そしてすべての器官が終わりを告げ、ロウソクの火がそよ風でふっと消えてしまうように、息が止まることを析る。
悲しい別れが遠くないことを感じつつ、穏やかな死を、と願っている。そのうち必ず訪れる私の最期のときの理想の死を義母に求めて、そして重ね合わせる。
さあ、午後6時だ。夕食が始まる。自転車のあかりをつけ、義母のもとへ出かけよう。
(2011.01.26 朝日新聞「ひととき」掲載)岩国エッセイサロンより転載