はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

そうだ、指輪と!

2011-02-09 19:04:39 | はがき随筆
 夫が旅立ち7ヵ月が過ぎた。この寂しさは、どうしようもない。人生の折り返し点も過ぎ、いずれ、どちらかが1人になるのだと漠然と思ってはいたが、こんなに早く現実になるとは想定外だった。夫の写真をバッグに忍ばせ、持ち歩いていた。
 ある日、鏡台の引き出しの奥の結婚指輪が目に留まった。38年経たプラチナは鈍い光を放っていた。左手の薬指にはめようとするが、寄る年波の弛みに難渋。何とか納まった。
 夫の勤務は多忙で、私と出かけることはめったになかった。これからは、このきつめの指輪と一緒に歩いていこう。
  伊佐市 山室浩子 2011/2/9 毎日新聞鹿児島版掲載