はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ママの理髪店

2011-02-14 21:56:58 | はがき随筆
 小3のころまで娘の散髪は私がした。ナイロン製の風呂敷を身にまとい、イスに腰掛け、型は「おかっぱさんよ」。ハサミでチョキン、チョキン切ると「痛い」と娘が声を発した。耳に少し切り傷が……。「痛かったね」。血がにじんでいた。娘は「耳は付いている?」と心配したが「耳はしっかり付いているよ」
 私は「ごめんね」と謝った。髪はおおよそ真っすぐに切れた。娘は鏡を見てほほえんだ。
 髪も清楚になり、学童らしい装いで登校した。ママの散髪を先生は褒めてくれた。ほのぼのとした心の小さな達成感……。
  姶良市 堀美代子 2011/2/13 毎日新聞鹿児島版掲載

寒さを楽しむ

2011-02-14 21:50:19 | はがき随筆
 この冬一番とか、観測を初めて以来という言葉が頻繁に飛び出すこの冬。陋屋で暮らす僕たち2人、かろうじて寒さを凌いでいる。しかし、寒いと言っても南国の寒さ。雪国のそれを思えば「ごめんなさい」と頭を下げるしかない。
 夜明け前、星空を見上げ、愛犬「遼太郎」に引かれ2人で歩けば、火照るような温もりを感じる。渋茶を口に背を丸めていては寒さを楽しむことはできない。庭に出れば早咲きの水仙は開花したし、梅の蕾も花弁の色が分かるまで膨らんだ。河津桜の花芽を確かめる時、枯れ葉舞う庭もいいものだ。
  志布志市 若宮庸成 2011/212 毎日新聞鹿児島版掲載

躍動

2011-02-14 21:43:37 | はがき随筆
 ひ孫のような孫を預かることになった。できるかなと思いながら、半分以上、娘のお世話をあてにしている。雪の日、いよいよやって来た。私は体調不良で困っていたが、娘親子が先に来てくれて助かった。
 車から降りて娘にだっこして半ベソをかいていたが、歳の離れた従弟のおかげで、たちまち笑顔になった。そして終日、ピアノを弾く娘の膝に乗り、お手玉投げ、ボール投げ、かくれんぼと大騒ぎ、その揚げ句お昼寝。まあ寝る前の泣き方のすごいこと。娘が抱いて寝かせたくれたので「新しいママは上手ね」と孫へ賛辞を送る。
  鹿児島市 東郷久子 2011/2/11 毎日新聞鹿児島版掲載