はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

チョコと風船

2011-02-02 16:05:07 | ペン&ぺん
 MI5と言えば、イギリスの情報局保安部。ミリタリー・インテリジェンス・セクション5。
 そのMI5が2005年9月に、機密指定を解除した第二次世界大戦中の文書を公開した。そこに「板チョコ爆弾」のことが書いてある。
 製造を計画したのはナチス・ドイツ。甘いお菓子に偽造して英国内に爆弾を持ち込み、破壊活動をするためだ。板チョコ爆弾の中身は鉄製。それを本物のチョコレートでコーティングしていた。端を折ると7秒後に爆発する、とロンドン発の共同電は伝えている(05年9月6日付の毎日新聞朝刊の国際面に掲載)。
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 爆弾といえば、風船爆弾もある。
 太平洋戦争末期、日本軍が極秘に指令し、実行した。直径10㍍の気球に数十㌔の爆弾をぶら下げる。これを太平洋岸から偏西風に乗せてアメリカ本土まで飛ばす。気球は和紙をコンニャクのりで張り合わせて作られた。世に伝えられる「ふ号作戦」である。
 大本営が放つように命じた風船爆弾は1万5000個。実際に放たれたのは約9000個。気球に入れる水素が調達できなかったためだという。
 米国側の研究では、北米で着弾が確認されたのは約300個。約1000個が到達したとの推計もある。1945年5月には、オレゴン州の村で1個が爆発し、ピクニック中のこどもたちら6人が死亡したという(2010年8月11日付の毎日新聞朝刊・千葉県版など参照)。
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 甘いチョコレートは子どもたちの好物。風船は遊び道具のはず。戦争はそれを人殺しの道具にしてしまう。
 バレンタインデーが近づく。店頭にチョコレートが並び始めた。
 義理チョコでもいい。平和の味をかみしめて食べたい。
 鹿児島支局長・馬原浩 2011/1/31 毎日新聞掲載