はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

加齢で?

2011-04-02 12:34:20 | はがき随筆
 湯たんぽを愛用して数十年。泊まりの旅行にも持参するほど、私にとっては必需品となっている。体に寄り添う温かさ。そして何より、温めてやっているという主張のないところが私は好きだ。
 ある日、私は内股の不快さで目を覚ました。パジャマのズボンはぬれ、アフリカ大陸を描いている。あわてて敷布団をなぞってみると、微妙に湿気を感じた。
 「とうとう来たか……」
 老眼鏡をかけ、大鏡にわが身を映す。シミ、たるみ、しわ、これも仕方のないことか。日々、便利におしゃれに進化する紙おむつの宣伝のおかげか、それほどショックはうけなかった。
 だが、湯たんぽ片手に寝起きの私の形相を見て、目が点になっていたのは夫。
 「漏らしちゃった……」と言いかけ、肌がまったくかゆくないことに気がついた私は、朝食作りそっちのけで湯たんぽ実験を始めた。
 湯たんぽを満タンにし、蓋をしっかり閉め、水滴がついていないことを確認する。3分経過したところで容器を見ると、接合部分から水がにじみ出してきた。やがて玉の汗となり、ポトリ、ポトリ……と。加齢で漏らしていたのは湯たんぽの方だった。
 「いってらっしゃい!」
 いつもより大きな声で夫を送り出し、「長い間、御世話になりました」。
容器を丁寧にふきあげ、かしわ手を打った。
  北九州市若松区 安元洋子 2011/4/2 毎日新聞の気持ち欄掲載

アブレーション

2011-04-02 12:27:42 | はがき随筆
 十数年も前から発作性心房細動、つまり不整脈を患って定期的通院を余儀なくされてきた。
 これまでの治療は不整脈の発作を一時的に抑え、血液の凝固を防ぐためのもので、根本的な治療ではなかった。
 今年になって頻脈になる回数が段々増え、ついに主治医の紹介状を携えて、北九州市のK病院でカテーテル・アブレーションという心臓の患部を焼く手術を受けることになり入院した。K病院は心臓の医療では高名とか。各地から患者が来院していた。手術約4時間、根治率70%というが、すべてを委ねたら気が楽になった。
  志布志市 一木法明 2011/4/2 毎日新聞鹿児島版掲載