はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

失敗から

2011-04-05 18:00:45 | ペン&ぺん
 サッカー日本代表、遠藤保仁選手は、昔からヘディングが嫌いだった。ヘディングすると「頭が痛い」という。そう著書「信頼する力」の中で語っている。
 小中学校などを訪問すると「コンプレックスはありますか?」と尋ねられる。その質問に対し、遠藤選手は走るスピードが遅いことや、ヘディングが弱いことをコンプレックスだと思わなかったと答える。
 ヘディングの競り合いは他の選手に任せ、ピッチに落ちるボールに責任を持つ。ドリブルは速さではなく、緩急をつけて相手をすり抜ける。
 「苦手なもの、嫌いなものをそのまま放っておかないで、考え方を変えてトライする」
 「コンプレックスは、苦手なことをどう生かすか考えるチャンス」
 そう記された著書は、彼の前向きな考え方で、いっぱいだ。
    ◇
 遠藤選手は鹿児島実業OB。その鹿実が1日、選抜高校野球大会の準々決勝で東海大相模と対戦し、0-2で惜敗した。
 エース野田昇吾投手が与えた得点は、ボークによる三塁走者の生還と、犠牲フライの1点。決して打ち込まれた訳ではない。試合後の宮下正一監督の談話も「野田は今大会で一番良かった」と振り返ったほどだ。
 球の走りは上々。得意のスライダーも鋭く変化していた。だが、好事魔多し。投球ホームを崩してボークとなった場面。「球に自信があったせいで、早く勝負がしたかった。投げ急いでしまった」。こう反省した野田投手は試合後「精神力を身につけなくては」と新たな課題を語った。(2日付の毎日新聞運動面)
    ◇
 順調に行っている場面で、思わず失敗する。その失敗から新たな課題が見つかる。一方でコンプレックスになるはずの短所が、長所に変わる。
 スポーツの世界だけの話ではないと思う。
  鹿児島支局長 馬原浩 2011/4/4 毎日新聞掲載