はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「無料クーポン券」

2011-12-12 18:14:26 | 岩国エッセイサロンより
山陽小野田市  会 員   河村 仁美


今年は周辺に入院する人が多い。夏パテもせず、いつもパクパクとご飯を食べ、風邪もめったにひかない私も気になってきた。

乳がん検診の無料クーポン券が届いた。娘と一緒に行こうと思っていたら職場の健康診断ですでに済ませたという。普通ならパスするところだけど、私は無料という言葉に弱い。よく見ると有効期限が来年の1月だ。「早めの予約を」の文字を横目で見ながら電話をかけた。クーポン券で受診することが世界一安くて、とても有効な「がんで命を落とさないための特効薬」とある。自分自身を守るためにも有効に使いたい。

(2011.12.09 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載




「ノルマだったが」

2011-12-12 18:11:45 | 岩国エッセイサロンより
岩国市  会 員   山本 -

長女が2歳、次女が0歳のころは大阪勤務だった。両方の実家の強い要望で、お盆と年末年始は必ず帰省した。まだ新幹線はないころで、安上がりな夜行旅客フェリーを使った。

超満員で1人分のスペースは畳1枚よりも狭い。長女はトイレを連発し、次女は辺り構わず泣く。妻の実家は岩国、私の実家はさらにバスで2時間もかかる島根の山間だ。帰省は嫌だった。親は二の次で結婚したが、長男と長女の現実は重かった。

今、娘や孫たちが我が家にやってくると素直にうれしい。帰省を「苦痛なノルマ」と思っていたあのころの心がとける。

(2011.12.10 毎日新聞「はがき随筆」掲載) 岩国エッセイサロンより転載