はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

赤ちゃんと絆

2011-12-16 23:09:22 | はがき随筆
 清く澄んだ瞳、鼻はピラミッド形、口はおちょぼ調、手は小さいモミジ、髪は昆布の黒光り。ほおが紅潮して弾けるように泣く。「おぎゃあ」の泣き声は一様に聞こえる。判別が難しい。おっぱいが欲しい。おしっこやウンチの時、眠たさからの皮肉な泣き方は勘で分かる。生後60日、重さ5000㌘。玉のような赤ちゃん。抱けば重たい。おっぱいのにおいが漂う。泣く笑うの仕草は自然本能であどけない。「神々しく神秘な聖母像様」。純真な目や指。赤ちゃんと母親は絆で結ばれている。家族に敬愛され、幸せに。孫娘が健やかに育つように。
  姶良市 堀美代子 2011/12/16 毎日新聞鹿児島版掲載

肉体改造

2011-12-16 23:02:58 | はがき随筆
 「ちょい不良親父」の私。イタリアの伊達男、イギリスのトラッド紳士、ファッショ雑誌のモデルにも負けない。プレッピーもユニオンジャック、アーガイルもOK! おしゃれに必須なものはセンス。それ以上に体形が大事。
 メタボ体形ではブランド服やバッグ、靴、小物がかわいそうに見える。自分もアイテムとの相乗効果で輝かなきゃ。わが郷土の兄貴「長渕剛」。歌に酔いしれ、体形にあこがれる。
 まずは、「ジョギング」と「腕立て伏せ」から始めよう。夢は、「細マッチョ体形」かな……。
  鹿児島市 吉松幸夫 2011/12/15 毎日新聞鹿児島版掲載

シンニョンクロ

2011-12-16 22:56:43 | はがき随筆
 子どものころ、近くの海によく釣りに行った。道具は小さい竹に木綿の糸と小石と針をつけたものだった。餌は足もとの小さい巻き貝を割って使った。魚はシンニョンクロと呼んで黒い小さな魚で目と口が大きくハゼに似ていた。潮が引いた後の潮だまりが釣り場でわらぞうりを履いて行った。「ドボン」と投げて手前に引くとググッときた。ぶら下がってはねていた。何匹も釣れた。えらから口へ針金を通して持ち帰った。母はみそ汁に入れてくれた。出しがでてよいタンパク源だったのだろう。今、そのあたりは住宅が並んで昔の面影はなくなっていた。
  出水市 畠中大喜 2011/12/14 毎日新聞鹿児島版掲載

水仙の花

2011-12-16 22:41:12 | はがき随筆


 水仙の花が咲く季節。寂しくなった庭先。今あちこちに咲いている。花の少ない季節を彩る花として広く愛されている。寒気の中に凜として咲き、かれんな花の風情は、日本人の心にかなうものがあるようだ。
 日暮れが早くなる時期、そばにたたずむと身も心も和やかになる。思い切り深呼吸する。住んだ空気が体の隅々まで行き渡り気分爽快になる。この花を見ていると、亡き友Bさんのことを思い出す。花園に咲いた水仙と笑顔で迎えていただいたその人は、私の尊敬する大好きな人だった。あの温かい人柄、優しさが今でも心に残っている。
  出水市 橋口礼子 2011/12/13 毎日新聞鹿児島版掲載

共呆け

2011-12-16 22:35:16 | はがき随筆
 ベランダ網戸が破れたのは暑い盛り。「すぐ修理する」と快く夫が言ったので当てにしていたのに未だにそのまま。
 「修理屋さんが休業中かも」
 「すっかり忘れていた。忙しくて」
 「リタイヤしたのに何が忙しい? もう呆けてきたようね」
 他人事のように言いながら自分のことが気になり始めた。
 曜日を間違える、しょっちゅう物捜しをする、何をしに大急ぎして2階にかけ上がったのかケロリと忘れる……。
 古希を迎える夫と私の呆け度はどっこいどっこい。トホホ……。
  鹿児島市 馬渡浩子 2011/12/11 毎日新聞鹿児島版掲載