はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆11月度入選

2011-12-27 21:38:49 | 受賞作品
 はがき随筆11月度の入選作品が決まりました。
▽出水市大野原町、小村忍さん(68)の「背伸びした夢」(1日)
▽同市緑町、道田道範さん(62)の「博士」(22日)
▽志布志市志布志町内之倉、一木法明さん(76)の「お陰さま」(4日)

──の3点です。

 小説家の海音寺潮五郎忌で大口に行きました。北薩の初秋の風物を愛でていると、市役所の人に、「でも寒いですよ」と言われました。来訪者と生活者との感覚の違いに思い至りましたが、それでも、澄んだ空気を満喫して帰って来ました。
 今月も、季節の推移それに老後の生活を内容としたものが、目立ちました。
 小村忍さんの「背伸びした夢」は、光を失った方の音楽会を成功させようという、身の丈をこえた夢の実現に向けて頑張った挙げ句、夜中に悪夢にうなされたという内容です。ご自分の背の低さを背伸びした夢に結びつけた書き出しの意外性が面白く、また夢の多様性が生きています。
 道田道範さんの「博士」は、野菜売り場の店先で、ご婦人方に大根の漬物の作り方を教授していると、大根が売り切れただけでなく、翌日には漬物博士絶賛のレシピとして、広告に使われたという飄逸な内容で、文章のこの軽みがいいですね。
 一木法明さんの「お陰さま」は。他力へ感謝しての生活態度の感謝ですが、それが抹香臭くなく、日常茶飯事として書かれているところに説得力があります。私も、人は生かされているという信念で描かれる、東山魁夷の日本画が好きです。
入選作の外に3編を紹介します。鹿児島市錦江台、岩田昭治さん(72)の「私の生き方」(5日)は、現役生活の時は何かと多忙であったが、感謝の気持で回顧している。さて、今からの生活をいかに送るか、……。誰にとっても、自分の老いとどのように和解するかは、大問題ですね。
 同市城山、竹之内美知子さん(77)の「母に似て」(13日)は、外反母趾だった母親の足に自分も似て来たという内容です。亡き人の思い出は、何がきっかけになるか分かりません。
 鹿屋市串良町上小原、門倉キヨ子さん(10日)は、秋の訪れは、初めは背後から忍び寄り、やがて正面からやって来るという表現がすばらしい。ところが今年はいきなり真正面からやって来たので、慌てている。それでもムカゴご飯を楽しめたという内容です。
  (鹿児島大学名誉教授・石田忠彦)

「続けるぞ」

2011-12-27 21:09:36 | 岩国エッセイサロンより
2011年12月27日 (火)

岩国市  会 員   片山 清勝

京都に住む孫へ手作り新聞を送り始めて10年になる。きっかけは平仮名を読み始めたという嫁のメールで、孫とコミニュケーションを図ろうとパソコンで作り始めた。日々のたわいないことをデジカメ写真と一緒に載せる。やり始めたら面白くて、今では月刊になった。ファイルをめくると、成長の跡が残り、その折々のことを思い出す。

大きな患いもなく、今日まで育ったことが何よりの喜びだ。孫は中学1年生。素直で優しい今のまま成長してほしい。「このまま作り続けて」。10年に際して孫からのメール。うれしい一言。目が潤む。

(2011.12.27 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

年々歳々

2011-12-27 20:58:36 | ペン&ぺん
40年。
福島第1原発1~4号機の廃炉を終えるまでに要する年数だ。政府と東京電力が21日に了承した工程表に盛り込まれた数字は、幅があって30年から40年とされた。
 しかし、記者会見した細野豪志原発事故担当相は「達成にはさまざまな不確定要因があり、現時点では言い切れない」と話しており、40年以上かかる可能性もある。さらに廃炉にかかる費用は工程表には明記されなかった(22日の本紙朝刊)。
 記事を読んで改めて思った。原発が事故を起こしてしまった場合、時間的にも金額的にも想像以上に膨大なコストがかかることを。
  ◇
 20年。
 事故を起こした原発の廃炉に要する年月の半分で人は成人とみなされ、大人として扱われる。
 年明けに成人式を迎える人への記念冊子「成人おめでとう」を毎日新聞西部本社販売開発部(093・521・0668)が販売している。A4判で52㌻。580円。
 内容は過去20年間の主な出来事を報じた紙面を縮刷し掲載したもの。1991年の雲仙・普賢岳(長崎)の大火砕流、皇太子殿下ご成婚、95年の阪神大震災、04年のアテネ五輪など。今年3月の東日本大震災まで続く。
 10年ひと昔というが、20年間という年月の長さを改めて示しているようでもある。
  ◇1年。
 今年もあっという間に年末を迎えた。毎年のことながら、印刷した年賀状を前に、筆が進まない。とりわけ大震災の被災地に住む友人知人あてに、なんと書くべきか思い悩む。
 県内でも出水市での鳥インフルエンザ禍や霧島・新燃岳の噴火など災難が起きた1年だった。
 「来年こそ、平穏な年に」。思いを新たにする年の瀬だ。
  鹿児島支局長・馬原 浩 2011/12/26 毎日新聞掲載