はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

収穫の楽しみ

2018-08-08 19:08:25 | はがき随筆


 タケノコの皮、卵や枝豆の殻、料理の際に出る野菜の生ごみがレジ袋にたまると庭のあちこちに穴を掘って埋め、その度ごとに土をかぶせているが、1カ月もたつと跡形もなく消えて生ごみは土に返っている。
 生ごみの中からサトイモの茎が伸びて葉が広がり、別の場所でツルが伸びて黄色い花が5個ほど開いているのはカボチャだろうか。生ゴミが肥料になっているのか、元気がよい。
 自宅は路地の一番奥だから雑草だらけの庭も人目につかず気にすることはない。秋風が吹き始めるころに収穫するのが楽しみだ。
 熊本市東区 竹本伸二(90)2018/8/8 毎日新聞鹿児島版掲載

芋の草取り

2018-08-08 18:58:25 | はがき随筆
 終戦後、我が家に旧航空隊跡の畑が2反歩手に入った。両親は非常に苦労して開墾し、芋を作っていた。私たちもその草取りを暑い中行った。たくさんの草と長い畝で大変だった。
 当日はアイスキャンデーを自転車で鈴を鳴らしながら売っていた。遠くに鈴の音を聞くと欲しくて走って行って買った。そのおいしかったことは今でもはっきり覚えている。
 あの畑にはその後行かなくなったが、農地解放でなくなったのか親も教えてくれなかった。今その畑には家や小さな工場が建っている。親に聞いておけばよかったと悔やんでいる。
  鹿児島県出水市 畠中大喜(81)2018/8/7 毎日新聞鹿児島版掲載

真夏の夜の夢

2018-08-08 09:20:01 | はがき随筆
 厳寒、猛暑、豪雨、竜巻、よそでは山火事。どれも「数十年に一度」「今までに経験のない」と前置きがつく。だが多発する異常気象を目前にしても、地球温暖化など信用しないと公言する人もいる。要は金をもうけ、豪奢贅沢、便利であれば環境などどうでもいい。そんな人たちは金を食べるし飲めもする。空気として吸える。驚く健啖の化け物。驚がくする方は思考停止し、側杖を食う前に、お先にごめんとおさらばか。弱肉強食。わずなか餌を奪い合う戦争ってなことに? ああ妄想をと笑えるけれど、SFも今では現実ってあります。
 熊本県阿蘇市 北窓和代(63) 2018/8/5 毎日新聞鹿児島版掲載

肥薩線真幸駅

2018-08-08 09:07:10 | はがき随筆


 「ちょっと寄りませんか?」車で仕事に出た昼休み、同僚がハンドルを切った真幸駅。桜吹雪につつまれていた。熊本県八代から鹿児島県隼人までのJR肥薩線28駅のうち、ただ一つ宮崎県に
ある駅だ。古い駅舎には郷愁がある。遠い日の別れや再会、涙や笑顔、さざめき。
 漢字は違っても私と同名の駅があるとは知らなかった。ホームの駅名標にひらがなで「まさき」とあり、横に「幸せの鐘」がある。幸せ願い鐘を打つ。ちょっとの幸せは一つ。もっとの幸せは二つ。いっぱいの幸せは三つ。乗客でない私はカンカンと小さく二つ打った。
 宮崎市 柏木正樹(69) 2018/8/6 毎日新聞鹿児島版掲載

孫に納得する

2018-08-08 08:58:58 | はがき随筆
 大阪で6月、大地震があり、驚愕する人々。一瞬の時間差が運命を左右する。私の弟孫が今年大阪でピカピカの新1年生。入学前に私宅を訪問、下車して大喜びでイノシシのごとく庭を走り回る。車道の方は危ないと案じた事も。今では毅然と登校。教室で落ち付きあるかな。
 地震の朝、「行ってきます」と家を出たそのとき地面が揺れ「何これ」と自宅へ急ぎ避難。大声で「怖い」と。時折鹿児島のじいじが「元気で学校行ってるか」。即答「決まってるよ」。「勉強の方は?」「やってるよ」。そのうち孫から叱られる日がくるかもと皆で納得。
 鹿児島県肝付町 鳥取部京子 2018/8/4 毎日新聞鹿児島版掲載