はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

アク

2018-08-14 14:06:08 | はがき随筆
 みどり濃いニガゴイと、ぱっちり張ったナスを炒め、だし汁で味付けしていただく。と、ニガイこと。口の中がひっくり返りそうである。ゴボウ、ナスなどニガーイものを食べられない私にしては一大事である。
 苦いものとの関係はアクの仕業と辞書で確かめる。①灰を水に入れてとった上ずみ、アルカリ性で洗濯や染め物に使う②植物などに含まれるしぶみ③性質、文章などのどぎつさ──とある。そうかな。小さいときから、いがらっぽいものが嫌いだった。里芋、ジャガイモ、ミガシキ、トイモガラ。ニガゴイは白っぽかったので食べたのか。
  鹿児島市 東郷久子(83)2018/8/14 毎日新聞鹿児島版掲載

母と孫の食事

2018-08-14 13:56:51 | はがき随筆
 時々孫がやってくる。はいはいができるようになり、つかまり立ちもするようになった。
 離乳食も始まり、孫を相手に「はーい、お口を開けて、おいしいね。いっぱいたべようね」と一口ずつ食べさせる。食べ方もだんだん上手になっておいしそうに食べてくれる。
 1年前、私は母に同じことをしていた。立てば危ないよと手を添え、「お母さん、おいしいよ。いっぱい食べて元気を出そうね」と、とろとろの原形をとどめない食事を一口でも食べてと祈りながら食べさせた。
 でも、母は最後には何も食べられなくなった。
 宮崎市 高木真弓(64)2018/8/12 毎日新聞鹿児島版掲載

お弁当

2018-08-14 13:50:25 | はがき随筆


 「いってらっしゃい。気をつけてね」と弟にお弁当を渡すのが、母が亡くなった3年前からの私の役割だった。
 疲れているように見えた翌朝は元気が出そうなメニュー。食欲がなさそうな時は食べやすいもの。考えるのは大変だったが少し楽しみでもあった。
 この春、進学のため県外に出ることになった彼が「3年間おべんとうありがとう。おいしかったよ」と言ってくれた。涙が出そうになり、笑顔でごまかした。
 家事の負担は減ったが、今日はどうしているか心配するようになった。今日も元気で笑っていますように。
  熊本市中央区 本田舞(27)2018/8/11 毎日新聞鹿児島版掲載