二つ違いの弟は、胃がんを患ってから2年余りになる。その間、鹿児島市内の病院に入退院を繰り返していたが、病気は治癒せず、退院して訪問看護を受けることになった。弟にしばらく会っていなかったので、姉妹と一緒に自宅に見舞いに行った。ベッドにふせているのではないかと思っていたら、割と元気な姿で迎えてくれた。治療のこと、病状のことなど詳しく話してくれた。
不治の病とはいえ、そばにいる奥さまより明るかった。私は帰り際に用意していた良寛さんの歌「我ながらうれしくもあるかみ仏のいますみ国に行くと思へば」を渡して帰った。
鹿児島県志布志市 一木法明(85) 2021.7.31 毎日新聞鹿児島版掲載