はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

腹八分目

2021-08-06 16:36:24 | はがき随筆
 「腹八分目っていい言葉よね。仕事も遊びも目いっぱいやると疲れる。ほどほどがいいわ」と若い友人が言った。「そう?」と聞き流したが、40代の頃、腰痛でかかった整形の医師の言葉を思い出した。「快適な60代を迎えたかったら体重を落としなさい。膝にきますよ。そのためには腹六分目を心掛けるように」と。「えー、腹八分目も大変なのに六分目なんて」と反発したら、「自己責任ですから」と事務的に言われた。
 そして後期高齢者になった今、またその言葉に出会う。友人にも逆らいたかったが、黙っていたい膝をさすっている。
 宮崎県延岡市 島田千恵子(77) 2021/8/6 毎日新聞鹿児島版掲載

西瓜仕事

2021-08-06 16:28:57 | はがき随筆
 仕事場から母屋に戻ると上がり框に大きな西瓜が転がっている。母がまた買ったのだ。細い体でよく大玉に挑むものだと感心する。酷暑にある家族に滋養との気持ちはありがたいが、切るのは私。よいしょとまな板に上げればため息が出る。
 さて、大玉を12等分し皮を外して一口大に切っていく。今日は大鉢四つのカットスイカが出来上がり、汗だくながら程よい達成感を得る。
 最後は皮の浅漬け。緑の外皮を除いて作る浅漬けは熊本の始末料理だが、カット処理の皮ならば歯形もないのでマダムも抵抗なく召し上がれマス。
 熊本県八代市 廣野香代子(56) 2021/8/5 毎日新聞鹿児島版掲載

世界地図

2021-08-06 16:21:00 | はがき随筆
 先立っての本紙中畑流万能川柳欄に「その国が真ん中にある世界地図」の句があった。全くその通りで、外国旅行の時、気を付けていると、その国が真ん中にある世界地図にお目にかかる。
 私は以前、米国で暮らしたことがある。当然、米国を中心にした世界地図を何回も見たのであるが、見慣れた日本での世界地図と随分違ったはずだが、全く違和感を感じなかった。
 ある時、気がついた。この違和感の無さ、どこの国に行ってもそうだろう。これは結局、人間は自己中心の見方、考え方をするんだと考えた次第だった。
 鹿児島市 柏木正樹(69) 2021/8/4 毎日新聞鹿児島版掲載