はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

コロナと空襲

2021-08-13 17:01:07 | はがき随筆
 この1年半はコロナに翻弄されて怖かった。それでも私がはっきり記憶している恐怖は小学生の時に体験した空襲である。
 昭和20年、鹿児島でも米軍の空襲が始まった。学校の授業は空襲を避けて、山の中で行われた。空襲警報が鳴ると、防空頭巾をかぶり防空壕に避難する。8月には母校が焼夷弾で焼失し、間もなく終戦となった。
 戦後は食糧難に見舞われた。「おなかがすいた」と、母に弟と訴えると、なけなしの切干カンショを煮て食べされてくれた。空襲の怖さとあのひもじさを思えば、コロナなど何のそのと言いたくなる。
 鹿児島市 田中健一郎(83) 2021/8/13 毎日新聞鹿児島版掲載

バリウム検査

2021-08-13 16:53:06 | はがき随筆
 3年前、会社の検診で胃透視検査を受けた。その時もう二度とやらないと決めたのに……。今年定年退職予定の私は、最後だからと受けることにした。
 しかし、段々募る不安。問題は狭い台の上でのすばやい体位変換だ。極め付きは台が傾き頭が下がる状況。両手で手すりをつかんでいるだけ。手を離したら絶対落ちる。ああ、やっぱり3年前と変わっていない。むしろ3年分、私の体力は落ちている。「早くして! まだ?」。心の中で叫ぶ。ほんの数秒が、とてつもなく長く感じられる。
 無事終わったが、次は絶対、胃カメラにする。
 宮崎県延岡市 渡邉比呂美(64) 2021/8/12 毎日新聞鹿児島版掲載

虫の勉強

2021-08-13 16:45:49 | はがき随筆
 ブロック塀に止まった黄色い虫の写真を小2の孫娘に送る。折り返しかかった電話で「これはチャドクガ。絶対触っちゃだめだよ。ツバキの葉などにいっぱい卵を産み付けてるかもしれないから、十分注意してね」ときつーいお叱り。
 一緒に送った写真も「これはツマグロヒョウモン、こっちはしっぽの先が大きいからウチワトンボ」など、すらすら。図鑑でしっかり勉強してるらしい。当世〝虫を愛づる姫君〟の知識。昆虫ではせいぜいモンシロチョウやイトトンボ、アブラムシ止まりのこっちは、あぜんとさせられるばかり。
 熊本市東区 中村弘之(85) 2021/8/11 毎日新聞鹿児島版掲載