知事選のさなか、本棚の片隅にあった1冊の本が目に留まった。
「知事が日本を変える」(文春新書、02年)。何とも勇ましいタイトルだが、当時、改革派の旗手と目された浅野史郎(宮城)▽北川正恭(三重)▽橋本大二郎(高知)──3知事の対談集だ。
地方では最も巨大な組織体の一つである県庁。その中で、とかく国や一部議員などの顔色をうかがい、一般県民の視点が欠落しがちな行政運営。対談では、そうした旧態型県政と「格闘」する様子が現在進行形で語られている。具体的には情報公開、県職員の意識改革、なれ合いを廃した議会対策、などだ。
発刊から6年、3氏ともに知事職を退いた今、読み返してもさほど違和感がないのは、裏返せば地方行政の改革はまだまだ道半ば、ということかもしれない。
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伊藤祐一郎知事が再選され、間もなく2期目の任期(28日~12年7月27日)がスタートする。首長の本領発揮は2期目から、というのが通例だ。1期目はどうしても前任者の敷いたレール(正の”遺産”も負のそれも)に影響されるからだ。
伊藤知事は「知事は行政官が8割、政治家が2割」との認識と側聞するが、失礼ながらこれは逆だろう。選挙民に選ばれる立場の首長は、まごうことなく政治家である。現代の知事には旧来にも増して県民への説明責任が強く求められる。隣県知事の例を引くまでもなく、トップセールスマンとしての役割も大きい。元タレントの派手なスタイルをまねる必要はさらさらないが、政治家としては適度のパフォーマンスも欠かせない。
伊藤知事はいわゆる「改革派知事」とは違う、独自の自負をお持ちと聞く。財政難の中ではあるが、制度設計にとどまらない真の県政改革と、豊かな県作りに向け、どんな「伊藤色」が見られるのか、期待したい。
鹿児島支局長 平山千里2008/7/20 毎日新聞掲載
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