はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ミステリー2

2006-05-22 18:50:02 | かごんま便り
 前回(15日)に続いて、歌に暗号が秘められているという説の後半を紹介します。
  ◇いろは歌◇
 いろはにほへと
 ちりぬるをわか 
 よたれそつねな
 らむうゐのおく
 やまけふこえて
 あさきゆめみし
 ゑひもせす
 下の文字を拾って読むと「咎(とが・罪)なくて死す」と読める。
 歌の意味が通じる七・五調ではなく、7文字ずつに区切ってある。古文書にも7文字ずつ区切って書いてあり、それが慣例となっていたらしい。そうしないと、この暗号がわからなくなってしまうからだろう。
 いろは歌を作ったのは弘法大師などの諸説がある。しかし、この道の研究者の探求心には驚く。三十六歌仙で生没年不詳の伝説的な人物、猿丸大夫の歌に焦点を当てた。
 奥山丹黄葉踏(おくやまにもみじふみ)
 別鳴鹿之音聆(わけなくしかのこえきく)
 時曾秋者金敷(ときぞあきはかなしき)
 「黄葉」は色づく葉。つまり「いろは」。これをキーワードにして歌を分解すると「黄葉踏之音聆者金敷(いろはふみのこえきくはかなしき)」となり、「いろは歌」の秘密を暗示していると言う。しかも分解した中心に「鹿黄之者音(かきのものおと)」があり、「柿本人麻呂」だと推理している。
 柿本人麻呂も三十六歌仙の1人で、生没年不明。石見国で客死、あるいは刑死したとされる。刑死と考えるならば、歌が上手だった人麻呂のこと。「いろは歌」に「えん罪だ」とする暗号を込める事も出来るだろう。
 ◇結 論◇
 私自身、高校時代の日本史教科書に「仮名手本忠臣蔵」と、不思議な名の浄瑠璃が掲載されていた。江戸時代、実名による作劇は幕府批判に通じるとして禁止されたという。だから史実の赤穂事件を「太平記」の時代に移し、登場人物の名も変えて作られたとされる。
 なぜ批判になるのかと疑問だった。教科書や参考書にも説明がない。ところが、暗号説を知り、江戸時代に仮名を習う際の手本は「いろは歌」。当時は歌に秘められた暗号「罪がなくて死す」が広く知られていたのではないか。「仮名手本忠臣蔵」は「赤穂義士は罪がなく刑死になった」と言う意味となり、幕府批判になるのだと、私なりに解釈した。
 講演した内容を2回に渡って紹介しました。広く認められていない説ですが話の種にはなると思います。少し早い夏のミステリーとしてお届けします。
   毎日新聞鹿児島支局長 竹本啓自 2006/5/22 掲載

 

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