はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

平和の鐘

2007-07-16 21:48:31 | かごんま便り
 「台風一過」の言葉通り、15日の鹿児島市は青々とした夏空が広がった。前日の激しい風雨と、濁流に飲まれ2人が亡くなったことがうそのようだ。被災者の方々には心からお見舞い申し上げる。
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 鐘の音に世界平和の願いを託す催しが16日正午から、鹿児島市東千石町の西本願寺鹿児島別院である。ユネスコ(国連教育科学文化機関)が提唱した00年の「平和の文化国際年」を機に、日本ユネスコ協会連盟が取り組む「平和の鐘(かね・おと)を鳴らそう!」運動の一環。当地では鹿児島ユネスコ協会(田中弘允会長)がその活動を担い、今年で5回目を迎える。
 ユネスコは1946年に発足した国連専門機関。設立のきっかけとなったユネスコ憲章の理念に賛同し、教育・科学・文化の振興を通じて戦争の悲劇を繰り返さないための地域活動を進めるのが「民間ユネスコ運動」だ。
 今年60周年を迎える民間ユネスコ運動が世界に先駆けて占領下の日本で誕生したことは田中会長(73)の話で初めて知った。日本の国連加盟に先立つ5年前、仙台で産声を上げて以来、その輪は全国に広がり数多くの篤志家が汗を流してきた。
 「ユネスコ授業」もその一つ。小・中・高校にメンバーが出向き、ユネスコの活動を紹介し、戦争の悲惨さや愚かさを語り、国際理解の大切さを説く。
 ある時、田中会長は授業の後に寄せられた感想文を読んでショックを受けた。鹿児島大空襲(45年6月17日、死者2316人)をはじめ、地元・鹿児島でも空襲があったことを知らない子供たちが余りに多かったからだ。教科書にも載っている広島、長崎の原爆や東京大空襲を知ることはもちろん大切だが、被害規模こそ違え足元の歴史的事実が忘れられていいはずはない。戦時世代の一人として「戦争体験の風化に大きな危機感を感じた」と田中会長は言う。
 鹿児島での今年の「平和の鐘をならそう!」は同別院鐘楼前で16日午前11時半から趣旨説明の後、参加者一人一人が鐘を突く。同様の取り組みは8月12日にザビエル教会(鹿児島市照国町)で、同15日には日本基督教団鹿児島加治屋町教会(同市加治屋町)でそれぞれ行われる。
 国内外でキナ臭い動きが絶えない昨今、私も鐘の音と共に改めて平和の尊さをかみしめたいと思う。
   毎日新聞鹿児島支局長 平山千里 2007/7/16 毎日新聞鹿児島版掲載

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