はがき随筆・鹿児島

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もう一つの〝夏〟

2007-07-16 21:47:50 | かごんま便り
 もう一つの〝夏〟
 高校球児たちの夏がやって来た。
 鹿児島市の県立鴨池球場及び鴨池市民球場では連日、甲子園を目指した熱い戦いが続いている。
 もう一つ忘れてならない大会がある。6日に姶良町野球場で開幕した全国高校軟式野球選手権の鹿児島大会だ。出場は5校5チーム。91校87チームが参加する硬式に比べ規模ははるかに小さいが、若人のひたむきなプレーが興奮と感動を与えてくれることは、硬式と何ら変わりはない。
   ◇   ◇   ◇   ◇
 開幕試合の育英館-鹿実戦はドラマチックなゲームだった。後攻の育英館が初回に1点を先制。鹿実は直後の二回、初安打が2点適時打となり逆転。鹿実が六回までに5-1とリードしたが、雨が七回ごろから激しさを増す中、思いも寄らぬ展開になった。
 七回二死から4安打を集めた育英館が同点に追いつき、八回にも2点を加えて試合をひっくり返した。九回、後がない鹿実は一死満塁から走者一掃の逆転三塁打。その裏、再逆転をもくろむ育英館無死一、二塁の場面で降雨中断となった。
 一面水たまりのグラウンド。コールドなら八回終了時で7-5とリードした育英館の勝ち。九回の鹿実の3点はまぼろしとなる。1時間余の後、小降りになって試合再開。立ち直ったエースが後続を断ち、鹿実が辛くも逃げ切った。
 雨の試合は選手、特に大魚をあと一歩で逃した育英館ナインには気の毒だった。だがボールが滑り、足元がぬかるむ中、懸命のブレーが見る者を熱くさせたのも事実。両校の選手たちには本当にありがとうと言いたい。
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 野球は米国発祥のスポーツだが、軟式野球は日本で生まれた競技だ。硬式と同じグラウンドでルールもほぼ同じだが、ボールの弾み具合が全く違い「似て非なるスポーツ」という見方さえある。
 高卒後、大学や社会人で硬式野球を続けるのは多分、少数派だろう。一方、軟式は子供から高齢者まで幅広い競技人口を抱える。高校の軟式野球ももっと注目されていい。
 鹿児島大会は2日連続で順延となり、順調に進めば決勝は10日午前10時から。8月1、2日には県立鴨池球場で、全国大会出場をかけた南部九州大会もある。高校野球の盛んな土地柄だけに、多くのファンの観戦を期待したい。
   毎日新聞鹿児島支局長 平山千里   2007/7/9毎日新聞鹿児島版掲載

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