はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

能と狂言の世界

2006-05-22 18:59:37 | はがき随筆
 兄・頼朝との確執により、都を落ちて船出することになった義経。その前夜別離の悲しみの中、恋する人の行く末を案じて舞を舞う、静御前の華麗な衣装と静かなる動きに、熱き情念がひしひしと伝わり、終演が告げられた後も満席のあちこちに、しばし余韻に浸っている姿が印象的だった。
 映像でしか見る機会のなかった日本伝統芸能、念願の地方公演が実現し、能「船弁慶」、狂言「清水」の二題を間近に観賞できた感激、興奮はいつまでも覚めやらず……。
 雨上がりの新緑がいつになく清々しく、目に染みる。
   鹿屋市札元 神田橋弘子(68) 2006/5/22 掲載

ミステリー2

2006-05-22 18:50:02 | かごんま便り
 前回(15日)に続いて、歌に暗号が秘められているという説の後半を紹介します。
  ◇いろは歌◇
 いろはにほへと
 ちりぬるをわか 
 よたれそつねな
 らむうゐのおく
 やまけふこえて
 あさきゆめみし
 ゑひもせす
 下の文字を拾って読むと「咎(とが・罪)なくて死す」と読める。
 歌の意味が通じる七・五調ではなく、7文字ずつに区切ってある。古文書にも7文字ずつ区切って書いてあり、それが慣例となっていたらしい。そうしないと、この暗号がわからなくなってしまうからだろう。
 いろは歌を作ったのは弘法大師などの諸説がある。しかし、この道の研究者の探求心には驚く。三十六歌仙で生没年不詳の伝説的な人物、猿丸大夫の歌に焦点を当てた。
 奥山丹黄葉踏(おくやまにもみじふみ)
 別鳴鹿之音聆(わけなくしかのこえきく)
 時曾秋者金敷(ときぞあきはかなしき)
 「黄葉」は色づく葉。つまり「いろは」。これをキーワードにして歌を分解すると「黄葉踏之音聆者金敷(いろはふみのこえきくはかなしき)」となり、「いろは歌」の秘密を暗示していると言う。しかも分解した中心に「鹿黄之者音(かきのものおと)」があり、「柿本人麻呂」だと推理している。
 柿本人麻呂も三十六歌仙の1人で、生没年不明。石見国で客死、あるいは刑死したとされる。刑死と考えるならば、歌が上手だった人麻呂のこと。「いろは歌」に「えん罪だ」とする暗号を込める事も出来るだろう。
 ◇結 論◇
 私自身、高校時代の日本史教科書に「仮名手本忠臣蔵」と、不思議な名の浄瑠璃が掲載されていた。江戸時代、実名による作劇は幕府批判に通じるとして禁止されたという。だから史実の赤穂事件を「太平記」の時代に移し、登場人物の名も変えて作られたとされる。
 なぜ批判になるのかと疑問だった。教科書や参考書にも説明がない。ところが、暗号説を知り、江戸時代に仮名を習う際の手本は「いろは歌」。当時は歌に秘められた暗号「罪がなくて死す」が広く知られていたのではないか。「仮名手本忠臣蔵」は「赤穂義士は罪がなく刑死になった」と言う意味となり、幕府批判になるのだと、私なりに解釈した。
 講演した内容を2回に渡って紹介しました。広く認められていない説ですが話の種にはなると思います。少し早い夏のミステリーとしてお届けします。
   毎日新聞鹿児島支局長 竹本啓自 2006/5/22 掲載

 

毎日ペンクラブ鹿児島総会

2006-05-21 23:46:43 | 毎日ペンクラブ鹿児島
平成18年度総会-3 
 昼食後、総会。新年度の活動計画や予算を協議しました。
 今年は会員の親睦と宮崎の随友との交流を兼ね、7月29日(土)~30日(日曜)に一泊二日の交流会を計画しました。場所は鹿児島中央駅西口のホテルユニオンです、多くの随友が集い有意義な交流会となりますようにと念じつつ。
 早朝からの受付、司会、諸準備など、役員の方々本当にお疲れさまでした。   (アカショウビン)

毎日ペンクラブ鹿児島総会

2006-05-21 22:45:12 | 毎日ペンクラブ鹿児島
平成18年度総会-2
 残念だったのは、今年の年度賞受賞者、志布志市の開業医であられる、小村豊一郎さんが、都合がつかず参加できなかったことでした。
 表彰式はお預けとなりましたが、九大医学部の先輩にあたる、M.Tさんが受賞作品「風の音」を心を込めて代読してくださいました。その後は選者の吉井和子先生の文章講座。何を書くか題材の選択、そして書き続けなさい、とにかく沢山書くことですと教えられました。   (アカショウビン)

毎日ペンクラブ鹿児島総会

2006-05-21 22:00:33 | 毎日ペンクラブ鹿児島
平成18年度総会-1
 五月晴れとはなりませんでしたが、まあまあのお天気。随友36名が総会会場・鹿児島市勤労者交流センターに集まりました。会場準備もスムーズに進み予定時刻前に全て完了、余裕をもってお迎えできました。全員が集うのは年に2回、久しぶりの参加もあり、賑やかな挨拶が続きます。会員の平均年齢は67歳、今年も元気で会えたことを喜び合いました。
 多忙ななかを竹本鹿児島支局長も参加してくださいました。
    (アカショウビン)

万葉の里

2006-05-21 17:40:32 | はがき随筆
 降り立った「初瀬あさくら」の駅はひんやりと土のにおいが漂い、向かいの棲家の老木とおぼしき楓が胸を突くような真っ赤に、照り映えていた。
 登りつめた高円の宮跡あたりは紫のスミレが咲き盛り、籠もよみこも踏み迷う程にとしのびつつ、橋立山が遠く薄く霞んでいる。大宮人の月影待ちを思いしばしたたずむ。
 下を望むと、隠口に電車が見えつ隠れつ今昔の感一入である。帰路、松林に潜む鏡王女の墓所に詣でた。
 遠い万葉の旅の思い出。いまだに鮮明な秘中の宝である。
   南さつま市加世田 寺園マツエ(84) 2006/5/21 掲載
画像は 花調べさんより

初夏の風

2006-05-20 08:24:58 | はがき随筆
 テッセンやアマリリスは元気いっぱいなのに、私は何となくうっとうしい。常日ごろ、お灸の効用を語る近所のK子さんに相談をしてみた。
 「左の肩甲骨の奥が痛むの。体調が悪いと必ず痛みが走るのね」
 彼女は私の背中をさすりながら「うわあ、ない。肩甲骨がない。肉に埋もれている。運動をしないと病気をどんどん拾うことになるよ」と、厳しい口調で言った。
 ニンニク灸をしてもらった。エキスが体に染み込む感じでいい気持ちだ。日を追って気分がよくなってきた。
 初夏の風が優しく過ぎていく。
   阿久根市赤瀬川 別枝由井(64) 2006/5/20 掲載
     画像は季節の花300より 

譲り合い

2006-05-19 06:33:09 | はがき随筆
 「お母さん、今日は剣道で遅くなります」と高2の長男。
 私は力の付く物と卵1個を汁わんに入れてやった。そのころ、主人はキンジス病気で床の中であった。卵1個は貴重であった。
 後で私の汁わんに卵があった。二男も三男も兄の様子を見て、お母さんのわんに入れて行ったとのことだった。父は子に長男は弟に、互いに譲り合う人生であった。
 優しい長男は、学校でもいろいろと思い出を残して天国へ行った。あの時代が脳裏から離れない。まずしくても幸せだった。
   さつま町 浅山清子(84) 2006/5/19 掲載

我が家

2006-05-18 11:14:51 | はがき随筆
 人手に渡っていた生家を買い取ってから36年の歳月が流れた。
 築120年ともなると、雨漏りがしたり、壁が傷んだりするので、どうして、こんな苦労までして古家に固執するのかと思うことがある。祖父が7年かけて建築した家を買い戻したとき、伯母たちは涙を流して喜び、病床の母は終焉の家となったことに安堵し、安らかにあの世へ旅立った。捨てることも、壊すことも出来ず、姉は、たとえ住まなくても朽ち果てるともそのままにと遺言した。カヤノキの天井、ヒトツバ(マキ)の柱の我が家である。
   肝付町前田 竹之井 敏(81) 2006/5/18 掲載

竹馬の友

2006-05-17 16:24:49 | はがき随筆
 GW、好天に恵まれた。裏山から流れ出る清水のせせらぎを聞き、とある温泉宿の露天風呂。自然に囲まれた風情は格別で竹馬の友と満足にひたっていた。露天には同じ年ごろの女性客も入浴しており、気持ちも高ぶっている。それぞれのポーズで記念撮影となった次第である。
 カメラは我が愛用のデジタル一眼レフ。撮るのはもちろん我が輩。
 腰にタオルを巻き構えシャッターを押し掛けたその瞬間「パラリ」とタオルが。思わず周囲を見渡す。プリントしてみると見事なピンボケ。腕のせいではないと強がり言い訳する。
   鹿児島市武 鵜家育男(60) 2006/5/17 掲載

奈良の旅

2006-05-16 16:41:45 | はがき随筆
 春の大和路を訪ねた。
 奈良街のにぎわいを抜けると猿沢池、興福寺、奈良公園を過ぎ、やがて朱色鮮やかな楼門の春日大社に至る道にはあちこち八重桜が愛らしく咲き始めている。そっとふれてみる。ふわっとやさしい感触に旅の心も癒されてゆく。
 奈良を遠く離れてみると思いはいっそう深く、懐かしさがこみ上げてくる。
 「万葉集」を繙いてみたい……。大宮人のような風雅な気分で、時を忘れ飛火野辺りを歩き通した。
 「あおによし奈良の都は咲く花の匂ふがごとく今盛りなり」
   姶良町西餅田 中村頼子(61) 2006/5/16 掲載

ミステリー1

2006-05-15 22:11:51 | かごんま便り
 鹿児島に着任して、あちこちで講演する機会を得ている。ある会場で「テーマは何でもいいですから」の依頼に、思い切って学界からの支持はほとんどない「歌に秘められた暗号」なるものをテーマに話した。
 十数年前に、その不思議な説を知り、一概に否定は出来ない内容だと思った。以来、機会ある度にその事について書かれた本に触れ、自分なりに読み知った内容をしゃべったところ、会場の皆さんも関心を持たれたようだった。今回は、その説をこのコーナーでも紹介したい。
 ◇前置き◇
 和歌や俳句などの区切れの部分の文字を拾って意味を持たせたのが「折句」。例えば伊勢物語にある歌。
 からころも
 きつつなれにし
 つましあれば
 はるばるきぬる
 たびをしぞおもふ
 上の1字を拾って読めば「かきつばた」と花の名前が出てくる。
 次に徒然草の吉田兼好法師が、親友の頓阿法師に送った歌。
 世にも涼し
 寝覚めの仮庵
 手枕も
 眞袖も秋に
 隔てなき風
 同じように上の文字を拾うと「米賜へ」。下には「銭も欲し」。
 頓阿法師の返歌。
 夜も憂し
 ねたく我が背子
 はては来ず
 なほざりにだに
 しばしとひませ
 上に「米は無し」、下に「銭少し」の言葉が折り込まれている。兼好法師も生活に困っていたようで、親友も助けたいが事情がある。それを歌を通して連絡し合うとは、大らかで気持ちには余裕がある。
 上の部分に読み込むことを「冠(かんむり)。下の部分は「沓くつ)」と言う。
 ◇本 題◇
 ここからが不思議な説で皆さんご存じの「いろは」歌。
 いろはにほへと
 ちりぬるをわか
 よたれそつねな
 らむうしのおく
 やまけふこえて
 あさきゆめみし
 ゑひもせす
 「沓」(下の部分)に「とかなくてしす」。「とか」は「咎(とが)」で罪のこと。「罪がなくてしす」。となり、これは大変な事が隠されている歌になる。えん罪事件に巻き込まれた人物か、あるいは知っている人物か、あるいは知っている関係者が作ったと考えられ。それは誰か──。(続く)
 2回に分けて、講演内容を紹介します。次回をお楽しみに。
   毎日新聞・鹿児島支局長 竹本啓自   (毎日新聞 鹿児島県版 2006/5/15掲載より)
 


歴史探訪

2006-05-15 21:38:45 | はがき随筆
 水俣の源光寺は花木の中に風格を備え堂々と建っていた。本堂の裏で念仏を唱えたという板張り2畳ほどの暗い隠れ部屋に通された。
 島津氏の一向宗団弾圧の目を凌ぎ夜中に寺の床下から出入りし説教を聞き闇に去るも捕まり拷問の悲劇は絶えなかったという。浄土真宗にすがる信者の逞しさが伝わって来る。
 そして徳富家を見学し「吠え狂う 八重の汐路を 凌ぎ来て 心静けく 港に入りぬ」と蘇峰の晩年の句を胸に、しばしいにしえの風が参加者の心を吹き抜け意義のある探訪となった。
   薩摩川内市宮里町 田中由利子(64) 2006/5/15 掲載

たくましい

2006-05-15 21:10:20 | はがき随筆
 いつの間にか庭の梅の木がゆっさゆっさと葉を茂らせ、暖かい春風にさらさらと小さな葉を揺らしている。
 この梅の木、もうかなりの年を積み重ね、幹などはかさかさで、子猫が通れるぐらいの穴が開いていて、支え木に支えられてはいるが、とてもたくましい。毎年、綺麗な真っ白い花を咲かせ、青々と葉を茂らせ、いっぱい実をつける。母と「今年も綺麗な花を咲かせてくれてありがとう。綺麗だ、綺麗だ」と梅の花を眺め、「今年もおいしい実をつけてくれてありがとう」と梅の実をちぎる。祖父の代にやって来たこの梅の木は、家族の一員だ。
   出水市高尾野町柴引 山岡淳子(47) 2006/4/14 掲載

憧れの髪型

2006-05-13 10:20:26 | はがき随筆
 「今日はどんな髪型になさいますか?」と聞く美容師さんに「ボブにしたいので段差をなくして、下をそろえる感じでお願いします」。  こんな会話を3回ほど交わしてようやく理想の髪型に近づいてきたのに、また頓挫しそうだ。毎年のことに嫌気がさす。体感温度より先に、強い日差しに視覚で暑さを感じてしまうこの時期。顔にかかる髪が疎ましい。一度そう思ったが最後、気になって仕方がない。くせ毛の私がボブなんて、所詮ないものねだりよ、と今までの努力も一刀両断。風になびく長い髪。ンー憧れるなあ。
   薩摩川内市高江町 上野昭子(45) 2006/5/13 掲載