はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

敬老パス

2006-05-12 12:24:49 | はがき随筆
 敬老パスをカードリーダーに触れて乗降するようになったのは3月1日からだった。最初の時、慣れない手つきでパスをカードリーダーに触れたが「ピッ」と音が出ず慌てた。降車時に、やり直しをさせられてバツの悪いこと。乗る度に残高表示の数字も気になる。先日、街中を二つ目のバス停まで歩いた。さわやかな日だからと言うよりも、以前のように気軽に乗降できず、ためらいがあったからだ。歩くことで目新しいものが。お店に立ち止まったり、リフレッシュできて得した気分になった。
   鹿児島市城山 竹之内美知子(72) 2006/5/12 掲載

はがき随筆05年度賞

2006-05-11 11:40:54 | 受賞作品
小村さん(志布志市)が受賞
人生への思いつづる
 はがき随筆の05年度賞が決まりました。昨年11月19日に掲載された志布志市志布志町、小村豊一郎さん(80)の「風の音」です。小村さんに執筆の経緯と喜びの声を聞きました。

 「医者は患者さんへの優しさが原点」。志布志市志布志町で64年から開業する現役外科医。80歳とは思えぬ眼光の鋭さ。だが、時折こぼれる笑顔がたまらなく人懐っこい。医師としての厳しさ、人としての優しさが顔いっぱいにあふれる。
 88年、先輩医師に誘われて初投稿した短歌が全国紙に掲載。「うれしくてやみつきになった。今ではほとんどの新聞に投稿する」ほど。投稿作品も短歌、俳句、川柳、随筆など垣根はない。
 はがき随筆掲載は100回以上。「ふと浮かんだ言葉、文章など忘れないためにどこでもメモします」。寝室の枕元、トイレ、車の中など、あらゆる場所にはメモ帳とペン。「もちろん散歩中も持ち歩く」
 受賞作品も散歩中の思いをつづった。早朝の時間と空間の移ろいに人生の無情を重ね、80年の月日とこれからを冷徹につづった。「思いを言葉にして文字にするのは、やはり、そこに私の感動があるから」。投稿の源をそう語る。
 九州大医学専門部を卒業後、国・公立病院などの勤務医を経て38歳の時に開業。「勤務医のころは治療方針で院長とけんかしたり、自ら苦労を背負い込んだ。若気の至りだった」と照れる。しかし、今でも「間違ったことやおかしなことは黙認できない」。信念は筋金入りだ。
 昨年、二つのがんを切除した。だが、退院した翌々日には診療室に戻った。「再び、命をもらったよう。私でいいという患者さんが来なくなるまでは現役を続けようかと思っている」
 診療と投稿。みずみずしい文学的完成と批判精神は、この〝両輪〟に支えられている。
説得力ある文章
はがき随筆選者 吉井和子さんの目
 小村豊一郎さんの年度賞作品「風の音」は、西行法師や藤原敏行などの歌、つまり新古今集・古今集の名歌に読まれている秋の歌に基づいて書かれています。そこが、小村さんの趣向の一つです。日本の自然の移り変わりの美しさ、その微妙な味わいがつたわるように作られた文章ですが、各文末はきっぱりと断定して残り少ない人生をしかと見つめて生きたい、一番言いたいことを書いて締めて、さらに「風の音が、秋を告げる中で……」と、叙情的な一行を加えて余韻のある文章に仕上げています。4時に起きて、健康に気をつけて生きようということが中心内容の文章に「風の音」という題目をつけたところからスタートしたいい文章でした。
     (日本文学協会会員、鹿児島女子短期大学名誉教授)

小村さんの作品
「風の音」

 風の音にぞという歌があるが、秋を連れてくるのはたしかに風である。毎朝4時に起き、朝焼けの空を待ってその後早朝の散歩に行く。次第に風のいろが青くなりつめたさを増してくる。
 風のいろにつれて雲のたたずまいも変わり咲く花もまた違ってくる。人のこころと無関係に時は遠慮なく流れてゆくのである。
 そしていつか八十年の人生がすぎてゆく。振り返るとつかの間の一生。残り少なくなった人生をしかと見つめて生きたい。たとえどうしようもなくても。風の音が秋を告げる中で……。
  2006/5/11 毎日新聞鹿児島版 掲載より

結婚40周年

2006-05-11 07:57:18 | はがき随筆
 「そういうと思った」。私たち夫婦がよく口にする言葉である。40年も一緒に生活していれば、どんな状況にぶつかっても、相手の出方はおおよそ見当が付く。その日は朝から雨が降っていた。おまけに冬に逆戻りしたように冷える。「結婚40周年も迎えたことだし、たまには美味しいコーヒーでも飲みに行こうか」と声を掛けた。「この雨が降っているのに? 私のコーヒーで我慢して」と妻。「そういうと思った」と言ったのが私。その翌日は快晴、百合の花をいつもより少し多く買って飾った。それでゴキゲン。こんな夫婦だからこそ、40年続いたのかも。
   西之表市西之表 武田静瞭(69) 2006/5/11 掲載

雨の日のご馳走

2006-05-10 17:21:19 | はがき随筆
 雨の日にも楽しみはある。温泉での水風呂はたまらなくいい。身近に温泉があり、小一時間でリフレッシュ出来る恵まれた環境に感謝しながら、きょうも温泉に足が向く。雨の日は庭仕事も出来ず気分的にゆったり出来る。朝風呂ならぬ昼風呂は3時ごろから、同じ思いの方々が数人、入れ替わり立ち替わり。温泉に入り、水風呂を効果的にするためのサウナ風呂、続いての水風呂は体の中がよみがえる気がする。口々に「生き返った」と。水風呂は私にとって、雨の日のご馳走である。
   霧島市国分中央 口町円子(66) 2006/5/10 掲載

童地蔵

2006-05-09 09:12:38 | はがき随筆
 庭園の杉木立はほどよい間隔で、下枝をすっきり落としてあるので日差しが地面まで届いて明るい。苔庭の所々に生えている猩々袴はちょうど花どきで青紫の花の塊を掲げている。楓は若葉が形を成しはじめていた。苔庭はふくよかさを取り戻し、緑の光をたたえ、奥へと広がっていた。
 丸っこい石が幾つか見えた。近づくと愛らしい童子の顔だった。小首をかしげほほ笑んでいる。2体寄り添うものもある。苔の中から這い出たかのように苔むしている。日差しの中のそのお姿は、この世に生まれ出た喜びにあふれていた。
   出水市明神町 清水昌子(53) 2006/5/9 掲載

おじゃましました

2006-05-08 22:17:21 | はがき随筆
 先日、宮崎県毎日ペングループ県南の月1回の定例会に、鹿児島ペンクラブより7人参加させていただいた。
 持ち寄りの原稿を自分で読み、まわりの方が意見を述べた後、先生の批評を頂く形式だ。
 今回の県南は、指導の先生と会長のみ男性で、あとは女性ばかり8人。その女性の方たちは、生き生きしておしゃれで、話し言葉は率直で豪放、ユーモアにあふれていた。きっと日ごろの交流が密なんだろうな。おかげで私は笑い通し、元気もいただいて帰った。会の益々の発展をお祈りし、深謝!
   いちき串木野市上名 奥吉志代子(57) 2006/5/8 掲載 特集版-6

異常気象

2006-05-08 21:55:03 | はがき随筆
 この季節、桜を散らした後もなお、雨が降り続いている。菜種梅雨と呼ばれる雨だが、今年は冬から気象が異常である。温かいはずの12月に雪が降ったりして、その後の天候も狂ったままである。桜がとうに散り、つつじが咲いて散り、初めの若葉が萌えてきたのに、一日おきに雨が降り、風が冷たくてセーターと縁が切れない日が続いている。地球そのものがおかしくなったのかも知れない。そう言えば人間の世界にもトラブルが多く異常である。早く天候が落ち着いて、人間の生活も平和になってほしいものである。
   志布志市志布志町 小村豊一郎(80)2006/5/8掲載 特集版-5

心の宝物

2006-05-08 21:46:27 | はがき随筆
 「よく来てくれたね」と言った途端、胸の奥から熱い物がこみ上げる。東京から会いに来てくれた4人。昭和20年8月6日の彼たちとの行動が走馬灯の様に浮かぶ。外で夕食を済ませ自宅で明け方近くまで3年生から6年生までの思い出に笑い転げる。木登り、相撲など……。貧しく、苦しく、つらい戦中、戦後の4年間。宿直を共にし、土曜の午後は自宅の風呂に入れ、爪切り散髪、洗濯をした。常に児童たちと一緒だった。
 60余年も便りが続き、訪れてくれる教え子たちは私の心の宝物だと感謝している。
薩摩川内市高江町 上野昭子(77) 2006/5/8掲載 特集版-4

子供の見守り

2006-05-08 21:39:35 | はがき随筆
 「通う児童(こ)に 先に声かけ 無事の日々」と拙句を作ってみた。地域の22人の子供が小中学校に通っているので、登下校に気取らず先に声かけをしている。教育は学校・家庭・地域の強力な支え合いに大きな期待がかかっていると言われるが、簡単に学校にも家庭にも入れない。せめて声かけやあいさつ、見守り位は誰でもできる。しかし見知らぬ人に警戒し危急に備え機器を携帯させる程だから、適切な声かけが大切である。地域の防犯や安全対策も形でなく即実践である。子供は地域で遊ぶ機会が多いので、市民として自然な形で見守りたい。
   薩摩川内市樋脇町 下市良幸(76) 2006/5/8 掲載特集版-3

主演女優賞

2006-05-08 21:30:51 | はがき随筆
 結婚記念の日に、かねての罪滅ぼしに家内に感謝状を贈ることにした。金婚記念の時にと思ったりしたが、それまでにはまだ7年もある。喜ばせるのは早い方が良さそうだ。思い付きは良かったが、感謝状の文面に困った。思案のあげく、見出しは「主演女優賞」とした。なかなか良い。文面は「姫は24歳の春より今日まで嫁として妻としてまた母として多岐にわたりその役を懸命に演じてきました。本日ここに43回目の結婚記念の日を迎えるに当たり、主演女優賞を贈り心から感謝します」と書き、花束を添えて伝達した。白髪の姫が喜んでくれた。
   志布志市志布志町 一木法明(70) 2006/5/8 掲載 特集版-2

吟行句会

2006-05-08 20:42:02 | はがき随筆
 素晴らしい春の吟行日和となった。4月の初め、川内くすのき会の吟行会に参加した。出席者は15人。場所は高城川。堤防に植えられた桜があでやかな姿で私たちを迎えてくれた。Aさんに案内されて妹背川を通り、薩摩街道へと歩く。爽やかな風と光の中で薩摩武士の往昔をしのぶ時が静かに流れて行く。川上は温泉街と聞き、昔を思い出した。句の会場はB様宅。選評では主宰の温かい助言に緊張感も緩み、なごやかな雰囲気のうちに終了。初参加の私は「来てよかったなあ」と感謝の気持ちになった。
 天日のほかは動かず桜花
   出水市上鯖淵 橋口礼子(72)2006/5/8 掲載 特集版-1

夢よ再び

2006-05-07 21:51:42 | はがき随筆
 久しぶりに、つんちゃんが出席して1年8組のミニミニ同窓会。校舎の裏の福昌寺跡を1周し、吹奏楽の心地よい音の響く中、満開の桜並木を通り抜ける私たち4人は、笑顔だけはあのころのまま。
 そこへ偶然通りかかった部活帰りの5人の1年生野球部の若者たち。
 記念に写真を撮ってもらって「昭和46年以来の甲子園出場を楽しみにしているわよ。がんばれ後輩!」と、まだ新しい制服の礼儀正しい姿に感激して声を掛けた。ベロニーテ(恩師のニックネーム)も空の上から応援してくださいね。
   鹿児島市川上町 川崎泰子(50) 2006/5/7 掲載

私は「だちゅ~」

2006-05-05 07:16:18 | はがき随筆
 2歳になった二男の言葉がだいぶはっきりしてきた。母親を「おかあはん」、長男は名前の一文字をとって「かん」と呼ぶ。さすれば自分は「おとうはん」かと思いきや、出てきた言葉は「だちゅ~」。
 抱っこの時も、散歩に誘う時も、そして長男に泣かされ助けを求める時もすべて「だちゅう~」なのだ。風呂から上がろうものなら、タタタと台所に走ってきて、「だちゅう~、チュウ」と、焼酎の一升瓶を差し出す。うれしいやら、おかしいやら。腕力にも驚く。それにしても、どうして私は「だちゅう~」なの。
   垂水市本城 川畑千歳(48) 2006/5/5 掲載

春宵一刻

2006-05-04 07:25:30 | はがき随筆
 連日の雨は雨なりに楽しくあるものだ。今夜は久しぶりに晴天で散歩に出た。まんまるお月が、今、山並みの上である。稜線がくっきり見える。田園のこの地域は、葉タバコが日ごとに伸びている。農家の方々は忙しくなるのだろう。そろそろ田圃は水を張り、田植えの準備である。
 「こころから、こころから君を愛す」とカエルの合唱が始まっている。すれ違うウォーキング仲間に「良か晩です」と声掛け合う。一足一足歩けることに喜びをかみしめる。時々ロケットガスをぶっ放す。至福感正に春宵一刻値千金であった。
   大口市小木原 宮園続(75) 2006/5/4 掲載

毎日ペンクラブ鹿児島・平成18年度総会

2006-05-03 22:41:04 | 毎日ペンクラブ鹿児島
5月21日、鹿児島市で総会
 毎日ペンクラブ鹿児島の総会を21日、鹿児島市で開きます。はがき随筆の05年度賞の表彰式を行い、選者の吉井和子・鹿児島女子短大名誉教授が作品の講評と随筆作りのポイントを紹介します。午前中の表彰式・講評は一般の方も聴講できます。奮ってご参加ください。
 日時 5月21日(日)午前10時半~午後2時半(昼食休憩あり)
 会場 鹿児島市勤労者交流センター(0992・285・0003)7階第1会議室(JR鹿児島中央駅前のダイエーが入っているビルです)
 参加方法 ハガキに住所、氏名、電話番号を明記し、「総会参加希望」と書いて〒893-0063 鹿屋市新栄町12-25 毎日ペンクラブ鹿児島事務局へ郵送を
 ペンクラブ加入 希望者は年会費2000円を当日、会場でお支払いください。会員も当日持参してください。
 ※昼食と飲物は各自ご用意ください
主催 毎日ペンクラブ鹿児島
後援 毎日新聞社鹿児島支局