はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

見過ごせない

2006-05-03 22:23:58 | かごんま便り
 鹿児島弁に「テゲテゲ」という言葉がある。大概大概が転じた言葉らしく大ざっぱ、いい加減を意味する。細かな指示をしたり、されるのが苦手な性格の私は「テゲテゲ、ワロ(奴)」だ。
 人にはそれぞれの個性があり、意見を持っている。自分の意見を押しつけないで、大らかにすればいいじゃない。こんな調子でテゲテゲで生活している私も最近、「おかしな雲行きだな」と心配する動きがある。
 憲法改正の手続きを定めた国民投票の与党案に、じわりと締め付けてくるような項目が盛り込まれているからだ。報道機関に自主的な取り組みを求める訓示規定で「虚偽の事項を報道し、又は事実を歪曲して記載する等表現の自由を濫用して国民投票の公正を害することのないよう自主的な取り組みに努める」とある。
 簡単に言うと、事実を偽ったり、ゆがめた内容の報道をしてはいけない。もっと突っ込んで考えるならば、与党がやることに対して、批判する報道をしてはいけないとなる。罰則はない。が、これが法律に明記されれば〝公権力〟に変ぼうして言論への介入につながってしまう。
 まるで、明治政府が自由民権運動などを抑圧した、著作類で人をそしる者を罰した「讒謗律」や「新聞紙条例」「集会条例」「出版条例」のように、時代が逆戻りした世の中になる。
 国民である以上は、憲法改正の動きに対して、もっと敏感になるべきだ。改正派がいて、それに対する反対派がいる。両派ともつまるところは、平和で豊かな日本をどう守っていくかであろう。数の論理で押し切る意見は、全て正しいということはありえない。
 私を含め、日ごろ憲法などは考えて生活している人はいないと思う。ただ漫然としていれば、気がつかないうちに、時の最大勢力が決めた方向に流れてしまう。批判は許されず、触れてもいけない。9条なども暴走する危険をはらんでいる。
 憲法を改正するにも、一つの方針を打ち出して、批判を受け止めてより良い道を見つけだす。そんな懐の深い政府を望みたい。
 憲法改正の手続きと、国民投票の与党案。報道機関に求める訓示規定は、反応を見るアドバルーン的な項目かもしれないが、テゲテゲな私も黙って見過ごすわけにはいかない。改めて憲法について考える記念日となった。
 毎日新聞 鹿児島支局長 竹本啓自 2006/5/3 掲載

路傍の自転車

2006-05-03 21:38:09 | はがき随筆
 約10年愛用している自転車がある。その間、二度の盗難に遭い、私は自分で歩き回って自転車を捜した。子どものころ、父親の自転車は大きく、私は「三角乗り」という乗り方で利用していた。小学3年の時、父親に自分専用の自転車を買ってもらった。その時のうれしさと喜び、有りがたさはいまでもハッキリと記憶している。今、粗末に扱われ、無惨な姿で休耕田や河川敷、路傍に乗り捨てされ、放置されたままの自転車を見る度に、モノの豊かさが貧しくとも心に富んでいた時代を押し流し、どこか人間の根源まで浸食しているような気がしてならない。
   鹿児島市山田町 吉松幸夫(48) 2006/5/3 掲載

やっけたこっじゃ

2006-05-02 07:55:49 | はがき随筆
 一雨毎に庭の雑草が目立つ。昨年までは「お前たちも冬を越せてよかったな」と、口にしてみたいほどの柔らかい葉をそっとなでていたのに、今年は憎らしくなってきた。お前らに忙殺されるではないか。しかも取った後から後から生えてきやがる。そういえば、歳を忘れさせた女性とのメールも、郵便受けを何度ものぞかせた文通もおっくうになってきた。はがき随筆にしても、感動を覚えると、さっさと筆を執ったのに……。
 肉体の衰えと共に精神の萎縮も始まり「こら、やっけなこちヒンなったわい」と、嘆きのため息の毎日である。
   肝付町前田 吉井三男(64) 2006/5/2 掲載
(写真は三男先生宅のお庭ではありません。管理人宅のナチュラルガーデンです、グランドカバー? で土も見えません)

第2ステージ

2006-05-01 07:22:50 | はがき随筆
 定年後5年が炭焼体験・巨木巡り・ビデオ投稿などでアッと言う間に過ぎ一区切りついた。
 地元でスタートするNPO・FMラジオ局がボランティアスタッフを募集していたので、生まれて初めて履歴書を書いて応募した。これまで私を育んでくれた故郷が少しでも元気になるのに役に立てたらと思ったから。
 まずは、懐かしい人々や麗しい山河への思いを気軽に田舎言葉で発信してみたい。メールがわりに、とことん故郷大好き人間と交流できたら楽しい。そう思うと、ふるさとさがし、自分さがしに俄然元気が出てきた。
   鹿屋市札元 上村 泉(65) 2006/5/1 掲載