はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「孫の成長を楽しむ水先案内」

2011-08-16 08:59:54 | 岩国エッセイサロンより
2011年8月11日 (木)

岩国市  会 員   吉岡 賢一
 
 毎朝8時半、近くに住む小学5年と3年の孫兄弟がやって来る。夏休みの宿題を中心に、日記や自由研究、作文のヒントなどを考えながら、午前中を私と過ごす。いわゆる「じいちゃん学校」への登校である。机に向かうのはせいぜい40分程度。それでも集中力は途切れがちで、学習態度も決していいとは言えない。
 
 無理もない。学校から解放され、この世で2番目に甘えられる私が先生なのだから。 そうは言っても、私としては共働きの娘夫婦から預かった責任もある。「もう少ししゃんとせー」と大声を出そうと思うが、7割方は2人の言いなりになる。

 お昼には一番甘えられるばあちゃんがパートから帰ってくる。昼ご飯を食べさせ、プールへ送り出す。そうして娘の家で夕飯の支度をしながら、彼らの帰りを待つ。夕方には保育所から帰った2歳の三男坊が、ばあちゃんから離れない。孫に振り回される毎日である。

 それでも私たちは今、彼らが大きく成長していく過程の水先案内人をさせてもらっている。それは一つの贅沢であり、喜びである。そして何より、生きる活力、スタミナ源になっている。
(2011.8.11 朝日新聞「声・テーマ『スタミナ源』掲載」) 岩國エッセイサロンより転載



「胃の舞台」

2011-08-16 08:55:03 | 岩国エッセイサロンより
2011年8月16日 (火)
  
岩国市  会 員   片山 清勝

医者が内視鏡で私の胃を画面に映し、診ている。私はベッドで同じ画面を見ながら説明を聞く。臓器の内部を見るという不思議な感覚。いつの間にか内壁の様子やその色模様などを真剣に見ている。胃の中で動きを感じるたび、そこが演技するように画面が変わる。

 見えない所が診られるようになった現代医学。どこまで技術が進歩するのか、あまりの長寿は考えもの。そんなことを思っていると「治っていますよ」の声で十数分の色鮮やかな舞台が終わった。

 仕事を終えた内視鏡がつり下げられ揺れている。物言わぬそれに心の中でそっと「ありがとう」。
  (2011.08.16 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩國エッセイサロンより転載

万華鏡

2011-08-14 23:30:25 | はがき随筆


 子供のころ、万華鏡に魅せられ作ってみたいと思ったがそのまま。先日、市で催されるサンデイ・サイエンスに小学低学年生に交じって万華鏡を作った。
 ミラーシートを三角に合わせ円筒の先に偏光板を張る。その上に透明テープを張り光の屈折で起こる多彩な模様が見えた。
 透明感のある美しい色彩は現代の万華鏡か。以前の万華鏡は色紙の小片が作り出す模様だった。素材の変化に時の流れを感じた。
 かしゃ、かしゃ、かすかな色紙の音を聞きながら、回す万華鏡の模様に感動していた子供のころが懐かしく思い出された。
  出水市 年神貞子 2011/8/14毎日新聞鹿児島版掲載

埋もれる美術品

2011-08-14 23:25:59 | はがき随筆
 まったく偶然だった。「H・良子─美術資料館」という看板に、私は気づいた。薩摩永野を車で通りかかった時である。
 美術館に入ると、彼女の迫力のある油彩の抽象画に圧倒された。絵の構成や色づかい、作品が放つ主題が、素人私の目をくぎづけにし、大作の絵約20点が、激しく胸をゆすった。
 隣の館も、美術同行者数人のすばらしい作品で満ちていた。
 帰宅後、Hさんにお礼の電話をすると「元気が出ます」と、とても喜ばれた。
 残念なことに、当寺、見学者は私1人。埋もれるのが実に惜しい、美術作品だ。
  出水市 小村忍 2011/8/13 毎日新聞鹿児島版掲載

夜明けの渚

2011-08-14 23:19:51 | はがき随筆
 台風の余波で夏の海は荒れている。満潮のせいか、海水浴場の砂浜もいつもよりせまくなり高い波が渚に襲いかかるように寄せていた。風もかなり強い。
 砂浜に立っていると、風でしぶきが飛んでくるので、早めに切り上げて車に戻る。ようやく明け始めの空に黒い山脈の稜線が見えてくる。
 早寝早起きで朝早く4㌔ほど離れた海水浴場に行って海を見るのが私の日課である。渚に寄せる波が好きである。海も毎日変わる。夜明けの海と空を見ていると心が洗われる。老いてゆく心に生きる力を与えてくれるようて゜うれしくなる。
  志布志市 小村豊一郎 2011/8/12 毎日新聞鹿児島版掲載

ヒナはいずこに?

2011-08-14 22:25:46 | アカショウビンのつぶやき


長い旅に出る時は、毎回、友人に庭の水まきをお願いする。
今年は水まきに加えてもう一つのお願い事があった。
我が家のキウイ棚に営巣したキジバトの観察。

雨が降ろうが風が吹こうがじっと耐えて卵を暖めている姿がいじらしい。
そろそろ、孵化する頃なので、ウッタツケ(鹿児島弁で粗雑な? と言うような意味)の、巣の強度が心配だった。

帰宅した翌朝、窓を開けると いました、居ました。
もじゃもじゃの小さな羽根をばたつかせながら、母親からミルクを貰っているようでした。
良かったねぇ、生きてたんだ。

然し、夕方、訪ねてきた友の話にびっくり。
「数日前に小さなヒナが落ちていたので、巣に戻したけれど翌日もまた落ちていて、懇ろに葬っからね」と言うのです。

キジバトは普通、卵を2個産むらしいので、もう兄弟(?)は居ないのかもしれません。
ヒナの姿をみたのは、それっきり。鳴き声も全くしません。

どうなったのかなあと我が子のように心配している、アカショウビンです。

名言

2011-08-14 21:53:46 | はがき随筆
 病院内の随所に「置き引き注意!」の張り紙。
 問診はそれまで忙しげに立ち働いていた孫ぐらいの看護師。「置き引きに注意してね」「生活困窮者が増えたんだね」「違うのよ。人の物を盗もうという意志と、見つからないようにという知恵があるだけ。働く気さえあれば何でも仕事はあるの。ずるいだけよ」と諭された。
 テレビは報じる。福島県の避難区域に空き巣横行と。人間が住めない地域に侵入する勇気があり、警察の目をかいくぐる知恵が働くのだから、それこそ、働く場はあるだろうにと、看護師の懸命な姿が目に浮かんだ。
  肝付町 吉井三男 2011/8/11 毎日新聞鹿児島版掲載

泣いたトロンボーン

2011-08-14 21:47:12 | はがき随筆
 50年前、出水駅で演奏した米ノ津中学校の「蛍の光」は音程が外れていました。ボストンバッグに丸刈り、おさげ髪が今でも目に焼き付いています。既に満席に近い集団就職列車が着くと、それまでの談笑がピタリとやんで「母ちゃあん」と悲しい泣き声に変わりました。汽笛が鳴り列車が動き出すと、私のトロンボーンも泣きだして音が外れました。
 「関門トンネルを抜けるまですすり泣きが続いた」と先輩から後年聞きました。
 帰省の時季になると、今の日本の豊かさを築かれた、あの日の先輩方の顔を思い出します。
   出水市 塩田幸弘  2011/8/10 毎日新聞鹿児島版掲載

減っている?

2011-08-14 21:29:40 | はがき随筆


 数年前は63匹、年々少なくなって去年は4匹、今年は5匹。春先すみれ類で育つツマグロヒョウモンの幼虫の数である。
 幼虫は「花は終わりだから葉っぱをくださいな」とビオラやパンジーを茎だけにしてしまう。庭のどこで蛹となり羽化するのか毎年探すが一向に見つからない。やがて羽根を忙しく動かして飛び回るヒョウモン蝶にに大変身! そのころになるとアゲハの幼虫がパセリやミカンで大きくなっていく。しかし、これらも年々減っているのは確かだ。何が原因なのだろうか。
 蝶の道語りし人の忌は近く
 炎天の庭にあげはは飛び交う
   姶良市 高橋たま 2011/8/8 毎日新聞鹿児島版掲載

ただいま その2

2011-08-14 19:20:46 | アカショウビンのつぶやき
蔕の会の友人と浜松で別れ、いよいよ本番の、
キリスト教会の全国大会に参加するため、岡山に向かう。
開催地は岡山県美作市の湯郷グランドホテル。
開催前日は、広島の友人宅に泊めて頂くため、
まずは広島のKさん宅にお邪魔する。
Kさんは、高校卒業後、大阪の神学校で学び、
更にアメリカのシンシナティ神学校に留学、
現在は広島伴キリスト教会で牧師をしておられる。

翌日は岡山へ。
幾重にも連なる雄大な中国山地を走る中国自動車道のドライブ。
どこまでも人工林の杉山が続く鹿児島の山とは様相がまるで違う。
秋は全山紅葉すると聞き驚く。



キリストの教会全国大会は、
8月2日から4日まで、北は北海道から南の沖縄まで、
仲間が一堂に集まり、交わりと学びの時を過ごす。

今年のテーマは「主に在って堅く立て」。

講師の先生方がこのテーマに沿って、講演する。



恵みの広場では、鹿児島県の吉野、鹿児島両教会の姉妹方が
手話による、ゴスペルフラをご披露し、好評だった。




3日間の大会は終了、広島のKさん宅、伴キリストの教会に向かう。





翌日は周防大島のセカンドハウスに招かれ、おまごちゃんと。





中央に見えるのが四国最高峰「石鎚山」。
この季節は殆ど見えないそうで、奇跡のようだとKさんが言う。
夫が大好きだった石鎚山。
10数年前、私は夫の思い出をたどって、近くまで行った思いでの山。感無量だった。



翌日は、山口県、大畠駅から広島へ向かう。
ローカル線の小さな駅では、可愛い金魚提灯が風に揺れていた。
岩國駅で乗り替え広島へ。
岩國のエッセイ仲間たちを思いつつ、新幹線で一路鹿児島へ。
長い旅だった。無事に帰れたことを感謝しつつ我が家へ、
はあ、いささか疲れました-。

by アカショウビン

ただいま その1

2011-08-14 19:18:35 | アカショウビンのつぶやき
久々にちょっと長い旅。
スミマセン、ブログも長いです。
酷暑の時期、体調に不安を抱えながらも、
懐かしい友のお誘いに重い腰をあげた。

その友とは、15年前に出会った。
わたしにとって、かけがえのない友人たちである。
その出合いは、
配偶者を亡くした人をサポートする全国組織、
ほほえみネットワークのミーティングだった。
10名の同期生のうち、現在もおつきあいが続いているのが8名。
以前は毎年どこかで、会うことにしていたが、
それぞれ高齢化して、それも難しくなった。
東京方面は時々集まる機会もあるようだが、鹿児島からは難しい。
私が上京する機会があると、さっと集まってくれる有り難い友である。

今回の旅の目的は、袋井に住む仲間が、立ち上げた
「袋井パン祭り」に行こうと言う単純なもの。

もともと手広く靴屋を経営するO氏は、地域のリーダー。
東北大震災で一時はお祭り中止かと思われたが、
みんなが元気になるために開催を決めたという。
キャッチフレーズは「3丁目の勇気」とか。
お祭りなんて何年ぶり? 胸が弾む旅となった。


今までの旅では、空路を使うことが多かったが、
今年3月新幹線が全線開通。
初めての長時間の列車の旅に少々不安を抱えながらの出発となった。

岡山乗り換え、新大阪から枚方の友と合流して浜松まで。
岡山駅でキヨスクのおばちゃんにすすめられ
桃太郎すし(だったかな)を買う。美味しかった。







米粉で作るパンはもちもちしてとっても美味しい。
中でもこのメロンパンが一番の目玉。




袋井駅に着いた時は、雷鳴と激しいにわか雨で
お祭りはどうなるかと心配したが、
すっかり雨もあがり、祭りは益々賑やかに…
久しぶりに見る、ちんどん屋さんと。



お祭りの最後は参加者全員の大合唱。
途中で雨が降り出し、少々寂しくなったけれど、
「上を向いて歩こう/翼をください」の2曲を歌う。
みんなの歌声には力がある。「届けよう希望の歌声」を!
実行委員長のO氏は、最後まで楽しそうにお祭りを仕切っていた。
本当にお疲れ様でした。



翌日は、浜松楽器博物館で楽しい時を過ごす。
O氏はお祭りの後片付けをほっぽり出して
午後逢いに来てくださり、久々に話が弾んだ。
かくして、お祭り応援隊の旅は終わり、再会を約して次の岡山へ
goでした。


by アカショウビン


要精検

2011-08-14 18:58:50 | はがき随筆
 「要精検」と書かれた胸部検診の結果を見て目を疑った。今まで問題はなかったのに……。不安を感じ、生まれて初めてCT検査を受けた。突然余命数ヶ月を宣言されたように、ひどく落ち込んだ。真っ先に思ったのは、まだ十代のこどもたちのこと。習い始めた油絵を一枚も仕上げていないことなど。反省と懺悔の2時間が瞬く間に過ぎ去った。幸い「異常なし」の診断に心から安堵した。「良かったね」という妻の電話は、天使のささやきに聞こえた。あれっ? そう言えば妻のことは思い浮かべたっけ? それこそ「要精験」と言われそうだ。
  姶良市 上野利美 2011/8/9 毎日新聞鹿児島版掲載

メタボ症候群

2011-08-14 18:50:58 | はがき随筆
 検診にひっかかった。メタボ症候群。私91㌢。これは大変。そこでおかず3品を2品に、ごはんも3分の2にする。減らした分をお金に換算し震災地の募金に充てようと挑戦した。1カ月後、募金はコツコツと増えた。1日分約100~200円になる。おかずが減ると物足りないが、健康のため。腹囲も細くなり夫の顔に笑みがこぼれた。「一石二鳥だよ」と言葉を発した。募金は市役所へ届けた。9月末が閉めきりだからまだまだメタボ減らしに挑戦しよう。多額ではないが何か役に立つだろう。力を合わせよう。
  姶良市 堀美代子 2011/8/7 毎日新聞鹿児島版掲載

出かけた

2011-08-14 18:44:53 | はがき随筆


 小雨ではあったが、大川の滝に行ってみようということになり、3人で出かけた。
 わあ、ここが、大川の滝。
 水が高い岩山から豪快な音をたてて、真っ白なしぶきを上げて流れ落ちている。落差88㍍という滝。滝つぼから脇に流れている水は、透き通っている。屋久島の自然が生んだ偉大な滝。
 滝のすき間から、今にも孫悟空が飛び出してきそうな気がしつつ、滝を後にし、温泉へ立ち寄った。目の前に一面に広がる青い青い海。それを眺めながらお湯につかる。なんて爽快。母にも一度入ってほしいと思った。
  屋久島町 山岡淳子 2011/8/6 毎日新聞鹿児島版掲載

ある時

2011-08-14 18:38:17 | はがき随筆


 ブルドーザーが忙しく動き回り、そこは見通しのいい荒れ地になった。狭い土地ながらも雑木林と草が生い茂っていた自然が消えた。周辺の田は宅地化され、新しい家が建ち並び始めた。
 やがてこの土地にも家が建つのだろうか。この小さな“大地”にはつがいの雉が暮らしていた。自転車通勤の私だけが知っていた秘密だったかもしれない。
 朝、生い茂った草の一隅に美しい雄雉の姿を見つける度に<今日一日を頑張ろう>という感情がわいてきた。住み処を追われた雉は自然の中でしか生活できない。おうい、雉よ、どこにいるんだい。
  鹿児島市 吉松幸夫 2011/8/5 毎日新聞鹿児島版掲載