母とスーパーの店内を見て回る。「もし、財布を落としましたよ」。年配のご婦人に呼び止められた。少しばかりのお礼を差し出すと、押し返された。しばしの押し問答の末にご婦人は「私は早くに両親を亡くして、親孝行をしていないの。このお金であなたのお母さんの好物を買って親孝行しなさい。そうすると、私も親孝行をしたことになります。親を喜ばすことが一番です。親が存命だけであなたは幸せですよ」。ご婦人の暖かい言葉にウルッときた目を、慌てて押さえた。「親が存命だけで幸せ」。目からうろこが落ちるような衝撃だった。
出水市 道田道範 2014/4/2 毎日新聞鹿児島版掲載
出水市 道田道範 2014/4/2 毎日新聞鹿児島版掲載