はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

存命だけで幸せ

2014-04-04 17:03:12 | はがき随筆
 母とスーパーの店内を見て回る。「もし、財布を落としましたよ」。年配のご婦人に呼び止められた。少しばかりのお礼を差し出すと、押し返された。しばしの押し問答の末にご婦人は「私は早くに両親を亡くして、親孝行をしていないの。このお金であなたのお母さんの好物を買って親孝行しなさい。そうすると、私も親孝行をしたことになります。親を喜ばすことが一番です。親が存命だけであなたは幸せですよ」。ご婦人の暖かい言葉にウルッときた目を、慌てて押さえた。「親が存命だけで幸せ」。目からうろこが落ちるような衝撃だった。
  出水市 道田道範 2014/4/2 毎日新聞鹿児島版掲載

桜と花火

2014-04-04 16:56:42 | はがき随筆
 春の訪れを感じるのは冷たい風が暖かな風に吹かれ、枯れ葉の林から新緑の林になる頃であるが、日本人に親しまれ、愛着のある花は桜の花であろう。
 この花が咲くと、春が来たと実感できる。
 熊本の水上村の市房ダム周辺にある1500本の桜の花は今が見ごろである。
 風に吹かれて散る花びらは乱舞する妖精のようである。そして夜になると春の花火大会では九州一の規模を誇る花火があり、夜空に競演の花を咲かせる。それが終わると、ライトアップされた桜は妖艶のごとく、いつまでも心に残像した。
  鹿児島市 下内幸一 2014/4/1 毎日新聞鹿児島版掲載

まーるいこたつ

2014-04-01 01:01:03 | 岩国エッセイサロンより


2014年3月29日 (土)


岩国市  会 員   吉岡 賢一


ホームこたつといえば四角いものだと思い込んでいた私は、円形ホームこたつを見つけた時「おっ、これはいける」と直感した。でも値段は四角いものの2倍以上。ウーンどうする? しばし迷う。
 家族8人が板の間で、まーるいちゃぶ台を囲んでいた遠い昔の夕飯の情景が目に浮かぶ。食べ物など決して満足ではなかったが、寄り添う家族のぬくもりがあった。そんな思い出が、円形こたつを奮発させた。

大きい足、小さい足、温かい足、冷たい足があちこちから入ってくる。気持ちまでまーるくなった冬が行く。春はすぐそこに。
  (2014.03.29 毎日新聞「はがき随筆」掲載)