風来坊参男坊

思い付くまま、気が向くまま、記述する雑文。好奇心は若さの秘訣。退屈なら屁理屈が心の良薬。

脳軟化の奨め 128号

2007年07月23日 10時52分36秒 | 随想
医学的に言えば、脳軟化症は脳梗塞のことで、 動脈の閉塞、または狭窄のため、脳に血液が循環しないで、脳組織が酸素、または栄養の不足のため壊死し、溶けてしまうことに由来する。片麻痺、意識障害、失語など、突然に発症したものは、脳卒中と呼ばれる。徐々に進行する老人の認知症などである。人としての活動が大幅に制限される。脳のハードの欠陥で、復旧は困難である。

健康でも、ソフトの欠陥である「とらわれ、かたより、こだわり」が原因で、脳味噌の思考が硬化することが有る。マインドコントロールされた状態で、社会通念や常識の名で呼ばれる、価値観の統一である。軍隊の兵士と同様、集団で活動するには都合が良い。自分独自の考えを披瀝することなく、多数決の意見を自分の意見のごとくすりかえれば、楽して、収入が得られ、安泰である。自分で考えることを放棄することが、金万能社会では有効で有るように見える。そして金の力で物欲を満足させ、本来の自分を誤魔化せば、人生は楽しく、優越感があり、成功者であるという錯覚に陥る。本来の自分を殺した、豊かな日本人が大相撲で横綱になれない理由で、牧畜民族のモンゴル人が凌駕している。

金の切れ目が縁の切れ目で、収入の方策が断たれると、過去の人生が、夢幻となり、不平不満が昂じ、一攫千金のギャンブルに裏切られ、自暴自棄のアルコール依存症になる。その時に気が付いては遅いのである。

若い時から、多面的に思考する訓練や、体験が必要なのである。「本当に社会常識は自分にとって正しいのか」。世間常識を、自分の内面で試行錯誤して、納得して自前の常識を構築する努力が要る。柔軟な思考が可能な脳のことを、脳軟化と私は言っている。

専門的な方法は、禅の公案である。善悪・優劣・上下・左右・有無など二者択一の思考にマインドコントロールされている、優秀で常識的な社会人にとっては、難解で理解不能の禅問答である。

禅を極めた禅の高僧は、考えに「とらわれ、かたより、こだわり」がなく、各個人の人間性を見抜き、その時々で、豊富な考え方を取捨選択して、話をして、相手を納得させ安心を与える事が出来る。脳が軟らかいのである。常識の権化である社会人が、全て聞いたら支離滅裂で禅問答である。

会社員の時の、経営コンサルタントによる意識改革の研修で、禅問答と同じ様な経験があった。「大阪から東京に行く方法を10個考えてください」という問題である。新幹線で、電車で、飛行機・自動車・高速バス・オートバイ・自転車・徒歩・人力車など、すぐに浮ぶ。「50個」になると、午前中の新幹線・午後の新幹線・夜行の寝台車・中央道経由の高速バス・東名経由の高速バス・サイドカー付のオートバイ・女房運転の自家用車・ANAの飛行機・JALの旅客機など、比較的簡単に思い浮ぶ。「500個」になると、「新幹線で神戸に行き、神戸空港から飛行機に乗る」や「伊丹空港から韓国ソウルに飛び、東京行きの飛行機に乗る」など無駄と思われる答えも出てくる。「千個」「5千個」「1万個」。

もう限界で、常識的な考えは出ない。しかし業務命令の研修であるから、何か書かなくてはならない。死ぬ苦しみである。本当に死ぬのではないのかと思ったのである。その時思い浮んだ答えは「死んで荼毘に付され、煙となって東京に行く」であった。そして研修は終わった。

知識が過多になった脳味噌の堤防が決壊して、知識が無くなってしまった。何も無い脳味噌は、無尽蔵に考える事が出来る軟らかさなので、脳軟化の完成である。古い脳が破壊され、新たな脳に再生された。ソフトは自在に交換可能なのである。

手っ取り早い脳軟化の方法は、芋焼酎「風太」を飲むことなので、これから頂く事にする。ご馳走様です。

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