絆、という日本中に流通した言葉を踏まえたわけではない。もしこの小説の中に絆があるとすれば、断ち切りたくても断ち切れないもの、やっかいなものとして描いてあると思う。
芥川賞の共喰いの作者の言葉である。
柵(しがらみ)なる言葉がある。現代では絆の対義語で罪と同様に扱われる。
家族の柵、村の柵、国の柵、規則規制で雁字搦めだから自由が無いと解釈する。
敗戦による欧米文化の強制は自由の名の下に柵を撤廃した。
質素倹約の柵から開放され、浪費は美徳の物欲社会に変貌し、日本人の心は荒んだ。
究極が自然を恐れぬ原発による電力浪費。大震災で自然は警告した。
物欲社会の絆を断ち、物は無くても楽しい我が家の柵を作る時。
体の動きを拘束する座禅、心は無限の宇宙を飛び回る。