岡山から愛宕梨参上 ４３０号

大きな梨が宅急便で届いた。姉の嫁ぎ先の岡山の特産品である愛宕梨は、二十世紀と今村秋を交配した大粒種で、直径１５cm・重さ１kgが５個梱包された贈り物である。

二十世紀や長十郎は馴染み深かいが、飯田市の援農体験で、幸水・豊水・二十世紀・新高の順に生産量が多く、他に長野県特産の南水があることを知った。

明治時代に松戸市で青梨の二十世紀が、川崎市で赤梨の長十郎が発見された。長年の試行錯誤の交配の歴史は多くの梨の、新種を誕生させた。

早生幸蔵と菊水から幸水。幸水とイ-３３で豊水。新潟の天の川と高知の今村秋で新高。新水と越後から南水を誕生させた。二十世紀以外はすべて赤梨である。

品種改良は食感・味覚・視覚・収穫時期・日持ち等を勘案して人間の都合で交配される。しかし相性があり、相手を選ぶのは人間と同じである。

改良品種の種子繁殖は園芸試験場でなされ、接ぎ木によって増やされる。そして風害回避や日照確保の為に、平棚に枝を誘導し、枝を四方八方に広げる栽培方法である。援農先の篠田農園で二十世紀の台木に幸水・豊水・新高が鈴生りに実っていた。

晩冬に枝の選定をし、春に摘果、完熟具合を見て、選択収穫は熟練の職人技である。

果樹園の援農体験があるので、農家の精進努力のご苦労を体感し、愛宕梨の背後霊として感じ取れるので、ありがたく頂戴したいと思うのである。

太陽の光、梅雨空からの雨、大地の栄養、そして温度差のある空気の自然環境と人の営みの歴史が一個の梨に集約されたお陰がある。自分の為すべき事に精進努力して腹を空かし、感謝しながら頂かないと罰が当たる。

愛宕梨の貨幣価値はさておき、栽培農家の、贈り主の、自然の仏心を有り難がるのである。