東洋医学の実践的理論研究~人間が病むということの過程的構造からの東洋医学的治療論の研究~

人間が病むということの過程的像から、鍼灸等の問題を説いてみたいと思います。よろしくお願いいたします。

『漢方が救う人体危機』を読む〜東洋医学如何に説くべきか〜

2017-09-18 15:31:30 | 漢方薬、食
 『漢方が救う人体危機 西洋医学一辺倒からの脱出』(渡辺武著 立風書房……以下『漢方が救う人体危機』と略記する)を読んだ。現代に東洋医学を説くことのイメージが広がったとの思いする。

 以前に紹介した「昌栄薬品」さんのブログを拝見していて、先生にあたるかたの著書であると紹介されていた『漢方が救う人体危機』を読んだ。詳細はお読みいただければと思うが(興味深い内容が多く説かれてあるので)、そこでは古代より受け継がれてきている東洋医学=漢方が、現代の我々に分かるように、言ってみれば現代語訳、本当の意味での現代語訳がなされている(それも西洋医学をしっかりと踏まえた上でそれとの対比で、である)と思える。

 例えば。「香辛料を常食すれば自然に体質が改善される!」という項では以下のごとくに説かれている。

  「……香辛料が不足すると、どういう状態になるかというと、生肉を放置すると腐敗してくるのと同じことが体内で起こってきます。私たちの体温は、36.5~37度あります。食べた肉は、だいたい二十四時間は体内にありますから、温かい胃や腸でどんどん腐っていきます。
 つまり、肉食だけをつづけていると、腸内に蛋白質の腐敗物がたまってヘドロ化し、その毒素が再吸収されます。肝臓は、それを解毒するためにフル回転することになり、負担が大きくなります。その負担が極限に達すると、いろいろな病気が発生してくるのです。」
 「そもそも近代医薬学の薬物学の分野では、胡椒、辛子、山椒、唐辛子、生姜などは、辛味性健胃整腸薬とされ、またケイヒ、チンピ、トウヒ、ウイキョウ、月桂樹、シソ、ハッカなどは芳香性健胃整腸薬とされています。
 一方、香辛料を漢方薬の気味薬性でいうと、五味の”辛温”に属し、”気剤”として重要な作用をもっています。気とは、血とか水のように形ある肉体そのものではなく、無形の精神とか神経をいいます。そしてこの無形の気こそ、人間の生命活動にもっとも重要な原点なのです。香辛料には、その気を円滑に機能させる作用があるわけです。まさにストレス社会の現代にこそ求められるものといえます。」


 我々が、現代という時代に東洋医学としての鍼灸を学び実践していく我々がなすべきことは、渡辺先生が為されているごとくに、東洋医学的言葉を単に現代語訳することでは無しに、ましてそのまま自身も患者も理解でき無いままに使うことでも無しに、自身(の事実)でしっかりと捉え返すとともに、現代に生きる人々にも分かってもらえるように、現代に生きる言葉として説く、説き直すということであるのだと、そのことの必要性痛感させられた。(この両者の違いがわかっていただけるであろうか?)

 これは例えば、武道の世界の例で言えば、『五輪書』(宮本武蔵著)を現代語に翻訳するのに、東大卒の国際武道大学教授である魚住孝至氏による『定本 五輪書』(新人物往来社)と、兵法二天一流第11代継承者・兵法二天一流玄信会主宰師範である宮田和宏氏による『新編真訳 五輪書 ──兵法二天一流真諦──』(文芸社)との違いをイメージしていただければ、と思う。(『定本 五輪書』は、確か何かの賞も受賞している素晴らしい訳であるが、ここでの基準は武道を学び実践していく我々にとっては、であるのであって本の良し悪しを云々しているわけではないので、念の為……)
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