韓国雑記帳~韓国草の根塾&日韓環境情報センター&ジャパンフィルムプロジェクトブログ

韓国に暮らして30年。なぜか韓国、いまだに韓国、明日も韓国。2022年もよろしくお願いします。

第2回韓国草の根塾 フィールドワークで見えてきたもの 上

2020-02-08 14:34:49 | 韓国草の根塾
フェイスブックにアップした記事をブログでも紹介します。

韓国草の根塾 第2回フィールドワークで見えてきたもの その1

韓国オーガニック無償給食フィールドワークが無事終わりました。関係者の皆さん、お疲れ様&ありがとうございました。

さて、"見えてきたもの" 第1弾、カンドン区子供給食管理支援センター。
ここは、保育園、幼稚園、地域児童センター(地域学童保育)を対象に衛生管理と栄養管理を支援する地域センターで、このような地域センターは2019年末で韓国全国に225ヶ所あります。各施設は食品栄養関連学科のある大学などに業務委託をして運営されています。
僕らが訪問したカンドン区のセンターの場合、ソンナム市にあるカチョン大学が運営、センター長はカチョン大学の教授が非常勤で担当、栄養士や衛生士が10人常勤で働いています。

主な業務は、
1) 保育園や幼稚園などの乳幼児対象の給食メニューの作成、栄養管理、園長&調理担当者への教育、父母や乳幼児への教育
2) 衛生面の実態把握、相談、園長&調理担当者への教育、父母や乳幼児への教育

等で、月に1回ほどスタッフがカンドン区内の保育園や幼稚園などの施設、200ヶ所近くを訪問して行っています。
カンドン区の場合、年間5000万円程の予算が、国、ソウル市、カンドン区からおりています。
この事業は2008年から研究事業が始まり、2009年には法的根拠となる「子供食生活安全管理特別法」が制定されて食品医薬品安全処が担当部署になっています。
2011年には11ヶ所で地域センターがオープンし、毎年新規地域センターが設置され、2019年現在で225の地域センターが運営されています。カンドン区のセンターは2013年頃のオープンです。

このセンターが設置される背景には次のような要因があります。
まず、共稼ぎの増加による保育施設利用家庭の増加があり、その一方で給食の栄養面や安全面での不信、不安が増大していました。
これは、100名以下の施設では栄養士をおかなくてもよく、また実際に調理している人が50~60代の女性で、園児80人以下の場合は調理師が一人で調理を行っています。
これでは、栄養面でも衛生面でもいろいろ問題があっただろうと想像できます。
これらの問題点を全国同じレベルを目標にして解決するために、子供給食管理支援センターがスタートしたわけです。

実は、今回、保育園の見学が急にキャンセルとなってあわてて連絡をして訪問した施設です。センター長がたまたま日本で学位をとった方だったため、訪問がすぐにOKになりました^^
多分、このセンターは日本でまだ紹介されていない制度&業務だじゃないでしょうか。
韓国全土で225ヶ所で1500人以上の栄養士&衛生士が保育園などを回って栄養と衛生を直接、管理しサポートしています。
比較的若いスタッフが自分の親ぐらい年の離れている調理担当のアジュマを管理したりサポートするのは、大変だろうなと思います。
しかし、公共給食センターが安全な食材供給を担当し、子供給食管理支援センターが栄養と衛生を担当するという合理的な制度設計に驚いた訪問でした。





韓国草の根塾 第2回フィールドワークで見えてきたもの その2

ワンジュローカルフード協同組合を訪問しました。通訳したときの記憶を元にメモします。
ここは韓国で初めてローカルフードを始めたところ。マスコミでも何度も報道され、去年訪問したスンチョン・ローカルフードを初めとして全国のローカルフード運動のお手本となっているところです。
ここは2008年に準備をはじめ、2009年にワンジュ郡が条例を制定、3年間の準備を経て2012年にスタートしました。初日は売り上げが30万ウォンにも届きませんでしたが、3か月ぐらいすると売り上げが急激に増え、販売する農産物がないぐらい利用客が増えたそうです。
以前、スンチョンのローカルフードでも説明しましたが、このワンジュ郡の場合も、自治体の支援の下、始まっています。具体的に言うと、2009年から12年までの準備期間5名のスタッフが様々な準備をしますが、その間はワンジュ郡が人件費や活動費を負担しています。また、最初、株式会社として始まりますが、ワンジュ郡がかなりの金額を出資しています。(金額は確認します)
今回説明を聞いて、参加者が驚いたというか感心したというか、とにかく素晴らしいと感じた部分がいくつかあります。
まず、3年間の間、農家を直接訪ね、現状を調査します。このローカルフード運動は地域の小規模農家・家族経営農家・高齢者農家・女性農家などを対象にしています。販路が限られ、どんどん先細りしていく彼ら・彼女らの農業を支え、成長させるというのが大きな目標です。なので、どこで、どのような作物をどのくらい、いつ作っているのか、というデータを集めるために、農家を直接訪問します。毎日、農家を訪問し、夜には農家に集まってもらい、話し合いを持ちます。
この活動は3つほどの目的があります。
まず、データをもとにして、1年中、適切に農産物を生産する計画生産を立てるための教育や話し合いを持ちます。高齢者や経営が難しい農家にはなるべく栽培しやすい作物や時期を配分し、余裕や技術のある’農家は栽培が難しい作物や時期を選ぶようにします。この作業を通して、1年中、都市の消費者が安心して買い物ができる環境ができます。
また、競争ではなくともに助け合う関係を作ります。ワンジュのローカルフードも最初は株式会社の形態で始めましたが、利益が出ても農家に還元できない、という問題にぶつかりました。というのも、株主がワンジュ郡と地域農協が主な株主のため彼らに利益が行ってしまいます。そのため、株主に出資金を全部返却して、生産農家が1口50万ウォン出資して協同組合への転換をはかります。協同組合の場合、出資額に区分なく組合員一人が1票ですし、組合員へ利益還元も可能になります。
そして、安全で安心できる農産物を作る、言い換えれば顔が見える農産物を作るための教育や努力も続けています。とくに、地域内で生産できないものは売らない、逆に言うと、地域内で生産できないものは作ってみる、という発想があるそうです。具体例として、リンゴを上げてくれました。もともと、リンゴで有名な産地がワンジュの近くにあるので、それを販売してもいいのではと考えてしまいますが、ワンジュ郡のローカルフードではあくまでも地域の農産物にこだわるそうです。
また、オーガニック農産物への転換も積極的に進めています。現在は除草剤は禁止、農薬は基準の3分の1で残留農薬が検出された場合は出荷禁止、などが基準になっていますが、徐々に無農薬(化学肥料は一部使用)や有機への転換するそうです。
このワンジュローカルフードを基盤にして、ワンジュ公共給食支援センターが作られ、地域の給食やソウル市カンドン区の公共給食に食材を提供していきます。このセンターについては、次にまとめてみましょう。









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