韓国雑記帳~韓国草の根塾&日韓環境情報センター&ジャパンフィルムプロジェクトブログ

韓国に暮らして30年。なぜか韓国、いまだに韓国、明日も韓国。2022年もよろしくお願いします。

スンチョンの冒険

2013-02-28 00:29:33 | 環境保護&エコツアー(2012~13)

 スンチョン市では今年4月20日から10月21日まで<2013スンチョン湾国際庭園博覧会>が行われます。どんな博覧会なのか、HPの説明は次のようになっています。HPはこちら

2013年4月から10月までの6ヶ月間、生態系の宝庫である順天湾一円1,112千㎡の広大な広さで開かれる国際庭園博覧会は、150年にわたってヨーロッパなどの先進国で普遍化されてきてもので、現代に至っては都市の再生と環境計画の一環として発展しており、多様な形態の生態庭園が造成されて時間が経てば経つほど樹木や花が調和し、その価値が高くなるという未来型博覧会です。

地球上で一番完全に保存されている世界5大沿岸湿地である順天湾とともに世界最高の生態庭園を保有する順天市は、大韓民国を代表する親環境生態都市、グリーン成長先導都市として生まれかわることでしょう。

博覧会の開催を成功させるために皆様の積極的なご参加とご声援をお待ちしております。2013年には順天にお越しください。

 この博覧会については、市の担当者から説明を聞いたこともあるので、どんなものであるかだいたい想像はついていましたが、今回、庭園博覧会の現場を見る機会があり、想像以上だなとかなり心配になってきました。僕の心配が外れることを祈っていますが、果たして<スンチョンの冒険>は成功するでしょうか?

 工事中の会場。

 工事のおかげでほこりだらけになりました。

 まず、博覧会の目的が、いまひとつわかりません。日本語版HPなどにはほとんどかかれていませんので補足説明をすると、現在28万人口のスンチョンの街がどんどん拡大し、スンチョン湾にせまろうとしている。これを食い止めるために、町の中心部とスンチョン湾の間に緩衝地帯を作るという案が作られ、そんな緩衝地帯として庭園博覧会で作られる公園を活用しようというものです。

 ここで疑問、全羅南道でも数少ない人口増加の自治体ですが、スンチョン湾にせまるほどの大量の人口増加とは思えません。もちろん緩衝地帯は必要かもしれませんが、博覧会で作らなくてもいいはずです。

 この建物が湿地センター、立派です。

 豪華な湿地センターや無人のモノレール(PRT)などの新しい施設が作られていますが、はたして博覧会の後の利用は大丈夫なのでしょうか? 湿地センターには国際会議のできる会議場などがメインのようですが、それだけ会議が行われるのか疑問です。それ以上に怪しいのが無人運行のモノレールです。

 このモノレール、1両に6名から8名乗りで、庭園博物館の会場内に立てられた湿地センターの前から出発しますが、到着はスンチョン湾湿地公園にあるビジターセンターでなく、それより1キロ以上上流にある<文学館>という施設までつながります。1分で1両が出発しても1時間で60両×8名=480名を運びます。でも、週末は1万人以上来るわけで、いったいどうやって来る人たちを処理するのでしょうか?

いまネットで検索したところ、往復で5000ウォンとなっていて、一般の交通機関と考えればかなり高く、アトラクションのひとつと考えれば納得できる金額かもしれません。ただ、乗るところも駅の前とかバスターミナルの前ではないし、降りるところもスンチョン湾のアシ原のデッキらかは1キロ以上離れているので、中途半端という感じがします。

 モノレールの線路と駅

どちらにしても、今後年間の訪問者が現在の300万人から400万人ぐらいまで増加すると、市当局は予想していますが、だとしたら、現在の湿地公園の施設を拡充するほうが先ではないでしょうか? つまり、遊歩道の幅を広げたり、新しい遊歩道を作るなどして、アシ原の混雑を解消するのが先決でしょう。

また、現在、ほとんど有効な湿地教育、生態研究などができない状態でいるわけで、そこを充実する必要があります。せっかく、年300万人もくるのですから、その力を利用して、もっと生態教育に力を入れるのが重要です。

いろいろ書きましたが、スンチョンの庭園博覧会、不安なところがたくさんあります。ほんと、スンチョン市の冒険はどこへ行くのでしょうか?

 記念品のコーナー、おしゃれな石鹸。

  月曜日なので遊覧船はお休み。

 写真を撮るキム・インチョルさん。

 漁船もお休みです。

 渡り鳥が来ているので立ち入り禁止。

 

 


韓国の有機農業のメッカ、南楊州~鹿島市担当者を案内して(その3)

2013-02-22 23:07:57 | 環境問題&有機農業

 そのあと、南楊州有機農業試験団地と九里(クリ)公設市場に行ってきました。

本来はここでもエゴマの栽培の様子を見るはずでしたが、今年の異常な寒さでかなりの被害を受けてしまい、けっきょくサンチュとイチゴのビニールハウスを見学しました。

ここの団地が造成された背景には、4大河川事業があります。この事業により河川敷での農業を認めなくなり、河川敷で営農していた農家と各地でさまざまな対立や葛藤が生まれました。トゥムリモリでのミサや集会については、このブログでもお知らせしたことがあります。この団地も河川敷(南楊州がわ)で営農をしていた人たちが、市や京畿道などを相手に交渉をして、集団移転でできた農地なのです。

ここの営農組合の代表者に有機農業の認定はどうなっているのか質問したところ、今年からは認定が取れるとのことです。というのも、移転するとき、かつての河川敷の土を大量に持ってきて捕縄をつくり、そのおかげで勇気認定が通常の3年より早く取れるようになったとのことです。代表者は、「ヤンピョン(トゥムルモリのある郡)のようにばらばらにならずに、集団で移転できた」と胸を張っていました。いままで、ブログでトゥムルモリの農家の闘いばかりお知らせしてきましたが、じつはこのような闘いも4大河川事業が強行される中、行われていたことに、いろいろと考えさせられました。

たとえ、移転をしても有機農業の農地を地域として、農家を集団として守ることに成功した、彼らの取り組みを過小評価することはできないと思います。ナクトンガンなどでも河川敷の農家が営農できなくなりましたが、果たしてこのような集団移転があったのか、いまのところ、よくわかりません。マスコミやいままでの経緯を考えると、ほぼないのではないかと思います。南楊州の場合、10年間の賃貸契約を結んでいますが、周辺の農地の賃貸価格と比べると4分の1から5分の1ぐらいのようです。この金額も交渉の結果、勝ち取ったとのこと。4大河川事業をめぐってはいろいろな動きが、まだまだありそうです。

このあと、南楊州の隣町、クリにある公設市場での野菜の競売を見学しました。夜7時半から明け方まで、野菜が到着するにしたがって、せりを行うそうです。

この市場には農家が直接持ってくる場合も多いそうです。なかにはトラックでなく乗用車で持ってくる人がいて、ちょっと驚きました。まあ、葉物ですから、重くないので可能ですね。1箱、1万とか2万ウォンとか価格がつけば、20箱ぐらいずつ毎日出荷すれば、十分農家としてやっていけるでしょう。自分の畑で夕方まで収穫して、終わってから車でここに持ち込めば、登録してあれば、あとは仲買がせりで落としてくれるので、いなくてもいいそうです。家に戻ってから、晩御飯の準備をすると、見学に付き合ってくれたグリーン農業大学のおばさんが教えてくれました。

野菜をチェックする仲買人、手に小さな計算機のようなものを持ち、これで価格を入れていくそうです。

これがセリ台(というのかな?) 自走式なので、日本から来た二人は驚いていました。

ということで、鹿島市の見学も無事に終わりました。最終日は、エゴマの種を買ったり、大型スーパーでの販売の様子などを見、最後にエゴマをたっぷり使ったカムジャタンで締めて、帰国の途へ。どうもご苦労様でした。これからもよろしくお願いします^^

 

 


韓国の有機農業のメッカ、南楊州~鹿島市担当者を案内して(その2)

2013-02-18 17:32:45 | 環境問題&有機農業

 さて、2日目の14日、この日は午前中の農家の見学に始まり、夜の公設市場での野菜のせり(競売)まで、7~8箇所を見学しました。写真と一緒に紹介しましょう。

まず、最初にチョアン地区で有機農業のえごま栽培をしているピョ・サンホさんのビニールハウスを訪問しました。韓国では焼肉や刺身などを食べるとき、さまざまな生野菜に包んで食べますが、えごまもそのひとつ。そのため、1年中消費される野菜のひとつです。そのうえ、葉っぱものですから、長期間の保存はでず、毎日出荷をすることになります。そのため、消費量の多い大都市の近くでの栽培が有利になります。えごまは、このように包み野菜のひとつとして食べますし、しょうゆ漬けにしたり、実から油を絞ったり、つぶして粉にして鍋物に使ったりもします。

次にいったのが、南楊州の有機農業博物館(韓国語ですがこちらをどうぞ→남양주유기농테마파크)。2011年の世界有機農業大会の会場になり、今年10月1日から6日まで行われる、アジア・オセアニア地区のスローフード国際大会の会場にもなります。まず、入り口で記念写真を撮ってから、入場です。左から、チョアン地区の農家でグリーン農業大学でいっしょに日本にも行ったチェ・ウンギさん、鹿島市役所の森さん、下村さん、博物館のイ・ソッキュン館長。

入り口は土の中の模型、ここで有機農業や微生物の大切さを確認します。

韓国お得意の I Tを使った展示物。

実は、この博物館にはコーヒー専門店があり、かねてから疑問に思っていたので質問したところ・・・、カウンターの中からコーヒー豆の入った袋を取り出し、説明してくれました。ここのコーヒーはコロンビアで有機栽培をして収穫したもので、韓国政府の担当者が現地でチェックをしたそうです。これで納得しました。

次はチェ・ウンギさんの農場を訪問。彼も春先からはえごまを作っています。この袋はえごまの実です。チェさんの家でお昼をご馳走になった後、マウル会館(村の集会所)へ移動。

ここでは、村のおばさんたちが農村体験を行っています。

いろいろな山菜のしょうゆ漬けやチョングックチャン(納豆みたいな味噌)などの体験教室を運営しています。

記念写真を撮って、いろいろお土産ももらいました。ありがとうございます^^

そのあと、村の作業場へ行き、油を絞る機械の見学です。

いちごに興味があるというので、南楊州で一番大きい体験農場を見学。ここは以前佐渡農協のかたがたを案内したところ。

ソルヒャンという品種で、とても甘かったですよ。この体験農家は1年に2万人が訪れるというものすごいところ。そこを、お父さん、おかみさん、息子の3人で経営しているのですから・・・、まあ、機会があったら一度、訪問してみてください。HPはこちらです。

と、きょうはここまで、のこりはまた明日、アップします^^

 

 

 

 


韓国の有機農業のメッカ、南楊州~鹿島市担当者を案内して(その1)

2013-02-17 13:39:03 | 環境問題&有機農業

 以前、南楊州の農家の人たちと九州の農家を訪問したという記事を書きましたが、そのときお世話になった佐賀県鹿島市の担当者の方が、先週、2泊3日の日程で南楊州を訪問しました。

 初日は、南楊州市の農業技術センターを訪問し、技術普及課のコ・ヒョンマン課長と親環境農業チームのイ・グァンスチーム長の案内で、センターの中にあるいろいろな施設を見学しました。僕も今まで知らなかった施設もあり、なかなか刺激的でした。今回、見学した施設をまとめてみましょう。(施設の正式名称は違う場合もあります、写真がなく文章だけです^^)

1 農産物加工の実習室=収穫するだけでなく、ジャム、ジュース、しょうゆ漬け、味噌、からし味噌など農産物を利用して加工して、付加価値を上げ、農家の収入の拡大へと結びつける施設。

2 分析室=分析室は2つあり、ひとつは土壌や水の中の農薬・重金属・残留肥料などを調べ、もうひとつでは土壌そのものの分析を行っています。専門家でないので、よくわかりませんでしたが、かなり高そうな機械がずらりと並び、日本なら県レベルの施設にある分析機器のようです。土壌分析室では農家から持ち込まれた成長不良のサンチュが土のついた状態でテーブルの上に置かれていて、これから原因を調べるそうです。南楊州で有機農業と認定されている農家の場合、無料で検査をしてくれるそうで、1年に2000件程度、調べているそうです。

3 微生物培養室=酵母などの有効微生物を培養して、農家に供給しています(これも、認定農家は無料です)。ビニールハウスなどでは土地の改良や、病虫害の予防に使い、酪農農家ではえさに混ぜて使っているそうです。、とくに、微生物が混ざったえさを食べた牛の排泄物は臭いが激減しするそうです。毎週、10リットルずつ使うそうですが、これが無料というのは、かなりすごいなと感じました。

4 学習館=子供向けの学習施設。入り口には、大きな梨の模型(本当の梨の木を樹脂加工したもの)があり、90度ずつ四季の様子を表していて、なかなか鋭いアイデアです。(冬の枝には雪が積もっていて、春の枝には花が咲いています) ここでは南楊州の農業、とくに米作りを四季ごとに紹介し、また土の中の微税物の働きや、有機農業の特徴などの展示があります。南楊州には、ここ以外にも<有機農業博物館>があり、若干、展示がダブっていますが、小規模ながら、アイデアにとんだ展示がありました。

5 農機具バンク=これは、以前、佐渡の農協の方々が見学して驚いていたところで、今回の鹿島市の担当者も同じように驚いていました。日本の場合は、農機具メーカーの代理店が各地域にあり、そこの営業力が強いので、なかなかこのような施設を作るのは、難しいでしょうね。南楊州の農機具バンクは、個人の農機具の管理・保管の代行もやっていますし、貸した農機具は、全部水洗いをして、農薬や肥料などを落とし、必要な場合は修理をするのですから、かなり徹底しています。農機具の使い方の研修も、別個に行っているそうで、行政主導でこれだけのことができるのは、珍しいでしょう。

これ以外にも、調理室などの施設があり、また、グリーン農業大学以外にも、IT教育やマーケッティング教育、若手の後継者向けの教育など、いろいろなことをやっています。とくに、後継者教育は20名ほどのグループを作り、このグループをこれから5年間ほど続けて教育していって、中核となる農家を育てる計画だそうです。

正直、日本の農村の様子や農政の現場の様子がなかなかわからないので、ずれているかもしれませんが、南楊州の農業技術センターは、多方面にわたって活動していることは確かです。これらの活動を、日本の皆さんにも、ぜひ、知ってもらいたいと思います。見学したい方は連絡ください。では、次回は、南楊州の農家の様子をお知らせしましょう。