有機農業をどのようにとらえるか色々あると思いますが、単純に農産物の安全だけでなく生態系への配慮も大切な問題だろうと思います。そんな視点から見ると、韓国の有機農業も実はいろんな問題をはらんでいます。
以前、江原道の農家を南楊州(僕の住んでいるところ)の農家と一緒に訪問したことがあります。訪問先は、集落レベルで営農組合をつくってビニールハウスでイチゴの有機栽培をしているところでした。江原道の海に近い地域でしたが、冬はとても寒くなるところ、寒さ対策はどうしていますかという質問に、
「石油のボイラーを使っています。もちろん、石油代は営農組合への補助金があるので、それでまかなっています。これからは、大きく投資して大きく儲けないと」と、自慢をされてしまい、あれれと思ったことがありました。いっしょに行った南楊州の農家のオジサンはオバサン、いやお姉さんたちも、腑に落ちないという感じでした。だれかが、補助が無くなったらどうするんだい、と独り言を言っていましたっけ。
また、はっきりとは口に出してはいませんが、石油をバンバン焚いてやるビニールハウスって、おかしいという感じを持っているようでした。とあいうのも、南楊州の場合、地下水が豊富なため、ビニールハウスを2重にして、水カーテンをつくって冬の寒さ(とくに夜の寒さ)対策をしています。もちろん、水カーテンをやるのにも地下水をポンプアップしてやるわけですから、電気は使っていますが、まあ、直接石油を使うよりは環境に配慮していると言えます。
さて、いま登場したイチゴ、南楊州でも栽培が盛んですが、家の近くのスーパーなどではお目にかかることがありません。いつも、100キロ以上離れたノンサンという地域だったり、プヨだったり、とにかく遠くのイチゴを食べています。地域で栽培していなかったら、まあ、しかたがないことですが、同じ地域で栽培しているのに、それを食べられないって、なんかおかしいですよね。いわゆる、フードマイレージの問題でして、イチゴに関してはローカルフードが通用していません。
というのも、南楊州はソウル中心部から1時間ちょっとで来れるところなので、いわゆるイチゴ摘みの体験農場になってしまいました。イチゴ摘みとお土産のイチゴ、場合によってはジャムを作って持って帰ったり、サンギョプサルを食べたりと、いろいろプログラムにも工夫を凝らしています。先日、日本の農政関係の公務員といっしょに訪問した営農組合では、土日の週末に600人が訪れたといっていました。一人、2,000円としても120万円! これを収穫して市場に出そうと思ったら、ぎゃくに人件費がかかってしまうので、比較にならないでしょう。実際、3年前までは葉っぱ物を栽培し、専門のレストランと契約を結んで出荷をしていた農家も、収穫のときの手間がかかるので、イチゴ栽培に切り替えてしまいました。
もちろん、このような体験農場も一つの解決策ですが、すべての地域でできるわけではないですよね。行政(農業技術センターというのがあります)は、このような6次産業を推薦していますが、ソウルに近い南楊州だからできる話です。そうそう、日本の公務員が、有機でイチゴつくり、たいへんじゃありませんか、と質問したところ、
「むかしやっていたブドウよりは、簡単だよ」と言われてしまい、有機でブドウをやっていたのならイチゴはそれほど難しくないだろうと感じました。
まあ、イチゴ以外にもハウス栽培はいろいろありまして、収穫の手間がかかるので大変ですが、葉っぱ物はけっこういい値段で市場に出ています。また、野菜によっては全生産量の70%以上、南楊州で作っているものもありますか、やっぱりすごい話です。このへんの栽培技術はかなりのレベルじゃないかなと思います。ただ、いくつか納得できない、疑問に思ったところもありますが、それは次の機会にしましょう。
ハウス栽培のイチゴです。
こんな感じで栽培しています。