せっかくの機会ですから、浅水湾(チョンスマン)の歴史や特徴について整理してみますしょう。
韓国の検索サイト、ネイバーの百科事典によると、
”東をサン市・ホンソン郡・ポリョン市の海岸地帯が、西側をテアン郡のテアン半島とその先にあるアンミョン島によって囲まれた浅水湾は、南北にながく海岸線の長さは200キロにも及ぶ。広い干拓地が作られ、また干潟の部分も多い。水深は浅く、暗礁や小さい中州が多く、大型船舶の通行は難しい。小さい規模の塩田や牡蠣や海苔の養殖場がある。”
と説明されています。ちょっとこれだけじゃ、渡り鳥との関係がよくわかりませんね。ほかの資料を探していると、昨年まで開催されていた<ソサン浅水湾世界渡り鳥紀行展>のHPに詳しい説明がありましたので、ポイントを紹介しましょう。
”1980年代から浅水湾で現代財閥による干拓事業が始まり、15万5千ha(4,700坪)が防潮堤で仕切られ、干拓地と淡水湖になりました。淡水湖は東側がカンウォル湖(A地区)、西側がプナム湖(B地区)で、それぞれの沿岸には見渡す限りの農耕地が干拓事業により造成されました。
西海(日本でいう“黄海”)に近く、偏西風の影響で10月から3月までの平均気温が4.8℃、最高は10月の12.8℃で最低は1月の-0.3度で、慶尚南道のチュナム貯水池やナクトンガン河口などに比べると、4度ほど気温が低い。”
以前、干潟だったところが大規模な農耕地となり、とくに現代財閥の個人農場という特殊事情により収穫のあとの落穀が非常に多かったため、広大な<餌場>となりました。また、水深の浅い淡水湖の水棲植物や魚類、芦原など、冬の渡り鳥の越冬地として格好の条件を備えたわけです。
ただ、10年ほど前(だったと思います)、現代財閥が所有していた農耕地を分譲し、A地区は個人の経営者の所有となり、だんだん落穀も少なくなってきます。そのうえ、渡り鳥を観光資源にしているため、淡水湖の護岸のすぐ脇の未舗装道路を広げて舗装しようとして工事を進めています。ですので、以前に比べると渡り鳥の数は大幅に減ったと、ペンションのオーナーのソ・ハンスさんが説明してくれました。

たとえば、上の写真にある白いものは家畜用の飼料として藁を発酵させているものです。以前は藁などは稲刈りあとの田んぼにそのまま置いたので、その中でネズミなどが越冬するので猛禽類の格好のエサになったそうです。じっさい、今回のツアーでもノスリが食べていたカモ(?)を見つけて記念撮影をはじめ、みなさんなかなか根性がありますね。ペンションのオーナーのハンスさんも、驚いていましたよ。

屍骸をチェックする小田先生と高田先生たち。

で、こんなふうに手にとって記念撮影です。

途中にはこのような鳥観察用の施設があります。ここは2008年のラムサールCOP10でエコツアーをやったときにも観察したポイントです。

せっかくですので、みんなで記念撮影。左のうえにある鳥の形をした飾りは<ソッテ>という村の入り口にある守り神です。伝統的なもので、一時期衰退しましたが、最近また人気がありますね。

こうやって車の中からの観察もします。なぜか車が来ても鳥たちは逃げない場合が多く、車のドアを開けたり、降りたりするだけで鳥が飛び立つ場合があります。なぜでしょうね。
午前中、朝ごはん抜きで3時間ぐらい浅水湾のA地区を見て回りました。今回のメンバーは2年前にもここに来てバードウォッチングをしたのですが、とても寒く、専用の車もなかったので、そのときはじっくり見ることができなかったそうです。やはり、浅水湾で鳥を見ようと思ったら車がないと、動きが取れませんね。
11時ぐらいに朝昼兼用の食事。キムチチゲとテンジャンチゲ+牡蠣入りパジョン(韓国風お好み焼き)という豪華版。食事のあとで、このお店が<韓国野生鳥類協会>の指定のお店と知って納得しました。浅水湾にバードウォッチングに来ると、昼ごはんを必ずここでとるそうです。こんなお店、たしかナクトンガンの河口にもありましたね。会員証を見せると割引になる、というわけではありませんでしたが、サービスはいろいろしてくれるようです。


食事のあとで、店の前に水槽があるのを発見。昨日、刺身で食べたウロックという魚も泳いでいたので、みんなで観察です。

お店の名前は<チャンリ食堂>です。ぜひ、いちど立ち寄ってください。お店の目の前が海でした。
さて、お腹もいっぱいほろ酔い加減で(昼からビールです^_^)つぎのコースの<ソサンバードランド>へ。ここは10日ほど前にオープンしたばかりの施設。僕たちの泊まったペンションの近くにあります。


<バードランド>に向かう高田先生とお嬢さんのみちよさん、奥さんの公代さん。

入り口のエントランスルームには大きな木の模型があり、その脇に座れるようになっています。受付の上の大型プロジェクターで流れていた浅水湾のドキュメントは、じつはペンションのオーナーのハンスさんがカメラマンの仕事をしてたときの作品です。

館内には剥製がいっぱいあります。学芸員のチョさんが浅水湾一帯を調査しながら、死んだ鳥をもってきて剥製にしたものも、何体かあるそうです。

この方が学芸員のチョさん。手にしているカレンダーの写真は浅水湾で観察できる鳥を月ごとに分類して載せてあります。カレンダーで使われている写真は、全部チョさんの写したものと聞いて、びっくりです。

このポスターは入り口にありました。1昨年までの渡り鳥祭り<ソサン浅水湾世界渡り鳥紀行展>のポスターです。去年は鳥インフルで中止となり、ことしからはお祭りをしないで、このバードランドが毎日ツアーバスを出しているそうです。週末は3台から4台のバスが、1日数回、1時間ほどのツアーをするわけです。事前に予約をしないと参加できない人気コースだそうです。
ということで、浅水湾のバードウォッチングも無事に終了しました。オーナーのハンスさんや学芸員のチョさんにお礼を述べて、錦江河口へ出発です。(つづく)