韓国雑記帳~韓国草の根塾&日韓環境情報センター&ジャパンフィルムプロジェクトブログ

韓国に暮らして30年。なぜか韓国、いまだに韓国、明日も韓国。2022年もよろしくお願いします。

韓国のエコ農産物(有機・無農薬栽培)学校給食について

2019-06-21 16:32:47 | 環境問題&有機農業

韓国の学校給食でのエコ農産物の使用について、まとめてみました。

9月上旬に韓国現地の視察をしようと考えています。ぜひ、興味のあるかた、メッセージを送ってください。 

 

1.学校給食の一般的な現況

・韓国の小中高および特別支援学校の総数は11,800校、児童・生徒数は575万人(17年)であり、すべての学校で給食を実施、そのうち97.8%が直営で運営。日本のよなセンターでの調理、学校への配達という方式はほとんどなく、学校内での調理を行っている。

・学校給食の予算は5兆9,088億ウォン、教育庁が3兆1,655億ウォン(53.6%)、自治体が1兆925億ウォン(18.5%)、保護者が1兆4,972億ウォン(25.3%)を負担してる。ただし“教育は無償”という憲法の規定を法的根拠にして、各自治体で学校給食の無償化に取り組んでいる。数年のうちには高校まで学校給食の無償化が定着する模様。

・献立は各学校に配置された栄養士(教師兼任)により標準献立から作成、米に雑穀を混ぜたゴハンが主、おかず、お汁、デザートなどの構成。麺類やパンなどもでるが、ゴハンも必ず一緒にでる。日本のような<ゴハンに味噌汁なし、牛乳で代用>といった奇抜?なメニューはない。

・献立ごとにアレルギー食材の番号が振ってあり、児童・生徒も自分でアレルギー食材を避けることができる。(代わりの食事を準備する場合もある)

・ほとんどの学校で調理室と食堂が併設されていて、担任や栄養士教師が見回りながら児童・生徒は食事をする。

 

2.エコ農産物学校給食の現況

 

・2017年度基準、学校給食全体の農産物に対してエコ農産物(有機農業、無農薬)の割合は55.4%であり、チェジュ島は92.8%、全羅南道は91.5%と高い。ソウル市も2~3年後をめどに全品エコ農残物に移行することを決めているなど、今後エコ農産物の割合は増えていく傾向にある。

・エコ農産物は慣行農産物より20~30%ほど価格が高いので、この差額を各自治体が独自に予算を編成して補助をしている。この補助の法的根拠を作るために条例が制定されているが、地域の保護者や生協などが協力して条例制定のための署名運動などを実施したところも多い。(ソウル市トボン区、キョンギ道シフン市、全羅南道スンチョン市など)

・各農産物ごとに営農組合が組織され、食材供給業者と年間契約(価格と生産量)を結んで、生産するケースが一般的。この制度のため、エコ農産物生産農家の経営が安定し、また生産量が拡大した。とくに、稲作については技術的にも無農薬栽培が安定してきており、エコ農産物学校給食の原動力となっている。

 

3.学校給食食材の調達方法

 

・食材の調達方法は2つある。一つは学校単位の個別購入であり、もう一つは地域単位の共同購入である。

・個別購入は、農林水産食品部(日本の農水省に該当)傘下の農産物流通センターが運営している学校給食食材注文サイト( aT サイバー取引所に登録されている中間供給業者へ発注する)に1週間単位で発注、中間供給業者は前処理をした状態で毎朝、配達を行う。食材はその日のうちに使い切り、主食材を保存する冷蔵庫は、学校の調理室にはない。

・地域単位の共同購入は、市町村単位に<学校給食支援センター>が設置され、ここを通して集団購入を行う。注文した食材が毎朝、配達され、その日のうちに使い切る点は個別注文と同一。この支援センターも地域住民の署名活動により条例が制定、その条例に従って設置された自治体も多い。

・中間供給業者は食材ごとに指定されていて、米、野菜、果物、肉類などに分かれていて、大きな自治体の場合はそれぞれに複数の中間供給業者が業務を行っている。

・ただし、その日のうちに使い切るという方法については、納品する農家や中間供給業者からは不満があるのも事実である。

 

4.エコ農産物の学校給食への供給量

 

主な15種類の農産物の供給量は137,588トン、このうちエコ農産物の供給量は79,339トン(57.7%)で、金額は2,414億ウォンとなっている。

注=15種類は次の通り。米、もち米、玉ねぎ、ジャガイモ、ニンニク、豆もやし、長ネギ、ニンジン、ズッキーニ、白菜、大根、リンゴ、キュウリ、イチゴ、唐辛子。

このうち、玉ねぎ、ジャガイモ、ンン人、長ネギ、梨は40%以上がエコ農産物。おもなエコ農産物の生産量と学校給食での消費量は次の通りだ。

 

<エコ農産物生産量と学校給食での消費量>

品目

親環境生産量

学校給食需要量

余り(不足量)

114,733トン

74,369トン

40,364トン 

玉ねぎ

14,265トン

10,396トン

3,869トン 

ジャガイモ

9,905トン

8,983トン

922トン 

ニンニク

2,225トン

1,595トン

630トン

ニンジン

4,441トン

2,965トン

1,476トン

イチゴ

3,559トン

1,222トン

2,337トン

長ネギ

4,194トン

2,851トン

1,343トン

大根

10,352トン

8,681トン

1,671トン

ズッキーニ

4,197トン

3,675トン

522トン

きゅうり

3,541トン

2,135トン

1,406トン

プチトマト

1,727トン

1,756トン

-29トン

キャベツ

10,251トン

3,305トン

6,946トン

1,060トン

1,318トン

-258トン

 

 

5.エコ農産物の流通経路の実態

・韓国では1997年に農民団体や消費者団体の働きかけによって<親環境農業推進法>が制定され、有機農業や無農薬栽培に対する法的な根拠ができた。この法律では、農業の環境保全機能を増大させ、農業による環境汚染を減らし、環境に配慮した農業を実践する農家を育成することで、持続可能で環境に配慮した農業を追及することを目的と制定された。

・この目的を実現するために、国は5年ごとの育成計画を、地方自治体は実践計画を策定し施行することが求められている。

・この法律をもとに、エコ農産物の市場拡大と安定経営を実現するために、2000年度ごろから各地で学校給食にエコ農産物を利用するように要請する署名運動が展開され、エコ農産物学校給食が定着することになる。

・この時期は同時に、有機農産物の供給を主な目的として生活協同組合の活動が各地で活発になる時期であった。ハンサルリム、ICOOPに代表される韓国の生協は、組合員数でみると、日本の生協よりはるかに規模が小さいが、有機農業の供給という点でははるかに先駆的な役割を果たした。

・これらのことは、エコ農産物の流通経路の調査によっても明らかになっている。エコ農産物は、 生産地から地域農協(37.6%)、生産者団体(10.8%)、専門流通会社(10.0%)などを経た上で、学校給食(39.0%)、大型流通会社(29.4%)、親環境専門店(9.8%)、生協(19.2%)などを通じて消費者に伝わっている。やはり、学校給食がエコ農産物の消費にとって大きな位置を占めていることがわかる。ちなみに日本の場合は、有機農産物の流通経路や消費状況のデータすら存在しない。この点でも、エコ農産物が韓国社会に定着していることがわかる。

 

 6.まとめ

現在、韓国では全耕作地の5%近くがエコ農産物(有機栽培・無農薬栽培)の農地となっている。また、有機認証も圃場の土壌検査も行っていて、日本の認証制度よりも厳しい検査が行われている。(日本は書類提出&現地チェックで、土壌検査は行っていない)ただし、認証に伴う費用はほとんどの場合、自治体からの補助が行われていて、農家の経済的な負担は少なくなっている。

このように韓国では有機農業をはじめとするエコ農産物の栽培が年々拡大していて、その背景の一つが学校給食でのエコ農産物の使用であろう。

また、自治体はなるべく自分たちの地域でできた農産物を利用することを進めていて、地域経済の活性化にも繋がっている。

このように、学校給食でのエコ農産物の利用は、安全・安心な食材を使うというレベルにとどまらず、農家経営の安定と地域経済の活性化と結びついた政策といえる。


韓国DMZ探訪ツアー、参加者募集中! ( 8月9日~12日)

2019-06-15 10:03:31 | 日韓環境情報センターの活動
8月9日より12日、韓国のDMZ(非武装地帯)の周辺を探訪するツアーを行います。普通の観光ツアーでは入れない地域まで、韓国軍の兵士と一緒に入り、南北分断の現実を体験、平和と統一を考えようと思います。
詳しいことは、チラシ、またはフェイスブックのイベントページをご覧下さい。
参加希望の方はメッセージ、またはメール(tanaka551119@naver.com)で連絡を下さい。




















第14回日韓田んぼの生きもの調査交流会のお知らせ

2019-06-05 12:49:37 | 環境問題&有機農業

8月19日から21日の2泊3日、韓国忠清北道、青洲で実施される<第14回日韓田んぼの生きもの調査交流会>の日程が決まりましたので、お知らせします。

日本から参加される方は、8月19日12時にキンポ空港で待ち合わせのあと、専用車で会場の忠北大学へ移動します。
終了は8月21日12時、そのあとキンポ空港&ソウル市内へ専用車を出します。
日本からの航空券は参加される方がご自分で購入することになります。8月19日に韓国にくる場合は、朝8時台の羽田発の便でお願いします。また21日の帰国便も夕方5時以降の便でお願いします。
航空券に関して、詳しいことは個別に問い合わせてください。

なお、参加費ですが、韓国2泊3日の滞在費が25,000円、これとは別途、キンポ空港から現地までの専用車代が必要になります(5,000円前後)

ぜひ、多くの皆さんの参加をお願いします。

<第14回日韓田んぼの生きもの調査交流会スケジュール>
8月19日(月)
3時~3時40分 開会式
  ・開催自治体(清州市)あいさつ
  ・歓迎のあいさつ
  ・日韓主催団体のあいさつ
  ・祝辞、その他

4時~6時20分 生物多様性保全のためのセミナー
  ・生物多様性農業の技術と方向(民間稲作研究所、稲葉理事長)
  ・BM水を活用した稲作(日本BM技術協会 伊藤理事長)
  ・生物多様性優秀事例(千葉県いすみ市 手塚先生)
日本人の発表だけ記載してあります。(予定を含む)韓国人を含む全体の内容は6月中旬~末ごろお知らせします。
セミナーの後、夕食

7時30分~8時30 グループ別討論
  ①伝統農法を探す(伝統種子保存の団体が発表して討論)
  ②自足可能な生物多様性農業と田んぼの生き物調査
   (韓国水田湿地ネットワークが発表して討論)
  ③都市農業、生物多様性と稲作(光州の帰農グループが発表して討論)
 (④清州市の親環境農業)
  日本からの参加者は①~③に参加します。④には通訳が入りません。

8月20日(火)
8時~10時 田んぼの生きもの調査(5か所)
  A)慣行栽培の田んぼ
  B)ジャンボタニシ除草の田んぼ
  C)施設栽培から転換した田んぼ
  D)湖の周辺湿地
  E)団地の中の田んぼ

10時~11時半 コウノトリ復元センター、またはヒキガエル生態公園

12時~14時     昼食後、忠北大博物館見学

2時40分~3時20分 生きもの調査の報告
3時30分~6時    テーマ別発表(通訳込10分)
  ①生物多様性を育む稲作
  ・有機二毛作の実例報告
  ②絶滅危機種の復元と生息地確保のための努力
  ・両生類保護
  ・野生復帰と田んぼの生態系
  ③田んぼ生態系の大衆化
  ・いすみ市での取り組み
  ④生き物調査研究と政策
  ・日本の田んぼの生きもの調査
#日本人の発表だけ記載してあります。(予定を含む)韓国人を含む全体の内容は6月中旬~末ごろお知らせします。 

18時30~20時30分  晩餐&文化公演(ソロリ村)

8月21日(水)
10時~  総合討論(後日、討論者を決めます)
11時~  閉会式
  ・日本側代表あいさつ
  ・日本参加者の感想など
12時 解散
*解散後、専用車でキンポ空港&ソウル市内まで移動します。詳しくは事務局までお問い合わせください

以上です。