ずっと以前、実家の片づけをしていて出てきた母の手編みのニット。
どちらも古い毛糸を使って編んだもの(再生品)のようです。上の黄色いベストはほぼ同じものが2着。25年は前の作品だと思われます。どうも彼女の仕上げの癖らしく、前立て部分がつっています。
グレーの編み込みカーディガンも前立てがすごくつっていたので、前立て部分だけほどいて編みなおしましたが、黄色いベストは、前立てを直したとしても、デザイン的にもサイズ的にもちょっと着用には適さない。…
それで何度も捨てようかと思いましたが、編み込みの模様の毛糸は私たちが子供時代に来たセーターの毛糸のようで、見覚えがあったりして、それを再生して編んだかと思うと捨てられず…。たまにひっぱり出してはどうしようかとため息をついて、またしまい込む、を繰り返していました。
でもきっと、また時間が経って自分の子供たちが私の品を整理するときには、すぐに捨てられるだろうな…。
だったら思い切ってこのベストをほどいて、その毛糸でモチーフ編みのブランケットを作ろうと思いました。ブランケットなら少しは役に立つかも。
モチーフ編みはまた流行っているようで、色々な編み物本に載っていますが、モチーフ編みの最大の欠点は、一つ編むたびに糸を切ること。新しい毛糸をぶちぶち切るのは忍びないのです。もう一つの問題は配色。合わせる色を考えるのも難しい。
ところがこのベストをほどけば上の二つの問題は解決!
しかしもう一つの難題があります。ほどいた後の毛糸のちりちりをどうなおすか。
昔は「湯のし器」という、鉄瓶の口とかにとりつけて毛糸を通し、出てくる蒸気を毛糸に当てて伸ばす器具がありました。
ネットで調べたら、ヤフオクで一点、妙に高いのを見つけました。それだったら新しい毛糸が買えますよ!って言いいたい値段でした。そこまでしてね…。
それでもしつこく調べたら、蒸し器を2段重ねて毛糸を湯のしする…というような記述のブログを発見。そうか蒸し器か…ということでうちの蒸し器で下の様にセットして伸ばしてみました。
蒸し器の中敷きの、何と呼ぶのか丸い蓋のようなものの留め具の下に糸を通して、手前から出します。手前にアルミのワイヤーを取り付けて毛糸が最短コースを通らないように、(直径部分を通るように) 糸を通します。上にのっけてあるのは蓋が開かないための重しの鉄玉子(やってみるとコロコロ転げるので、この後、ココットの器に鉄玉子を入れて重しにしました)。私がやった細工はアルミワイヤのみ。
弱火で湯を沸騰させながら、一定の速度で毛糸を引っ張る。
そして… 出てきたのは、
お見事!伸びた毛糸です。高温の水蒸気恐るべし!
右はちりちりのインスタントラーメンのような毛糸。左は伸びてちょっと玉子素麺のような毛糸。
これが
こうなりました 。
休み休みやって半日かかりましたが、達成感あり!
羊を飼って、毛を刈って、あれやこれやの行程を経て毛糸を作ることを考えるとラクなものです。
昭和の前半はこれが普通だったんでしょうね。湯伸し器が普通に売ってたから。
江戸時代の、江戸の町の市民の暮らしは随分とエコだった、とよく耳にするけれど、昭和も前半はエコだったんだなと、湯のしをしながら考えてました。
ただし蒸気を使うので火傷と、火の元には気を付けなくてはいけない。(実は毛糸を二度ほど焦がしてしまいました。)
のびた毛糸でモチーフを作ってみました。結構いい感じ。