KAZASHI TREKKING CLUB

四国の山を中心に毎週楽しく歩いています。

『らんまん』の軌跡を追って横倉山へ!

2023年08月30日 | 四国の山


線で繋ぐで『引地山から石鎚山』を繋いでひと段落した後、大山の三ノ沢から登った

槍ケ峰イワカガミのお花畑で目覚めてしまい、新たに『花巡り』が始まった。大山も

さらにユートピア小屋のお花畑へ。そしてとうとう中央アルプスの千畳敷カールのお花

畑、そして伊吹山まで訪ねて行った。それには4月から始まった朝ドラの『らんまん』

の影響が少なからずある。私はその時間には出社しているので一度もドラマを見たこと

はないのだけれど、とにかく奥様たちは二人で歩きながらそのドラマの今後の展開やキ

ャストの話をしている。するとあっちゃんは出かける山に咲いているだろう花の絵を手

書きで書いてメモしてき始めた。そしてルリちゃんと言えば花の本を買って予習をして

きて、とにかくそんなに興味のなかった花に目覚めた奥様たちに釣られるようにして、

私の計画も花の咲く山をチェックするようになった。

そして先週は牧野博士所縁のコオロギランを目当てに甫喜ケ峰に出かけてきた。そうな

ればやはり牧野博士の故郷、そして博士が足げく通った横倉山は押さえておかなければ

ならない。できればまたコオロギランを見てみたいし、ミヤマウズラナツエビネも見

られればと思い出かけてきた。

ただしこのところずっと天気は週中でぐずついている。定例の水曜日は降水確率100%

の予報だ。仕方がないので少しはマシな今日にずらして、奥様たちには『それでも雨に

降られるのでそのつもりで!』と連絡して出かけてきた。





横倉山にはWOC登山部で4年前に。山楽会では18年も前に30名近くで来た山。

いずれも雨に降られて晴れた日の記憶がない。そしておそらく今日も・・・・・。

第一駐車場にはまだ木の香りが漂ってきそうな真新しいトイレが出来ていた。

駐車場からはアスファルトの林道を少し登って行くと登山口になる。その登山口までの

林道沿いにも小さな花がたくさん咲いていた。









ヤブラン




登山口には南遊歩道と書かれた朽ちそうになった古い標識と、新しく『ここから横倉宮

までは急な坂で岩場の多い登山道です。通行にはくれぐれも注意してください』と書か

れた標識が立っていた。道は階段状のいきなりの急登。しかもこの先には鎖場がある。

『これはやっぱり遊歩道ではなく、登山道やね!』とあっちゃんと話をしながら登って

行く。雨が降るというのに鎖場があるこのコースを選んだのはあっちゃんだった。そし

て『巻き道があるから!』とルリちゃんを何とか説得したのだった。








急登が終わると道の脇にはシコクママコナの群生。雲早山にはシャクナゲ尾根があるが

ここはママコナ尾根だ。



シコクママコナ






周りは次第にガスがかかり始め、ポツリポツリと雨が降り始めた。『一休み!』と書か

れた看板を見ながらも止まらずどんどん進んで行く奥様たち。











すると道に大岩が現れたと思うと、また階段状の急登、そして露岩の急登と変化のある道

になる。『気になるようなら上だけでもカッパを着ますか?』と前を行く二人に声をかけ

るが『もう濡れているからこのままでいいわ』と返事が返ってくる。














更に進んで行くと注意喚起の案内板。その先に一つ目の鎖が掛かっていた。ここは高さ

もなく足がかりもいいので、ルリちゃんも難なくクリアー!











一つ目を登りきると先頭のルリちゃんが『これは無理!』と声をあげた。見てみるると

けっこうな高さの岩壁に鎖が掛かっている。『私は巻き道で行くから、みんなはどうす

るん?』とルリちゃんが言っている横であっちゃんは鎖に手を掛けていた。『あ~あ、

雨降ってるし、岩も濡れてるし・・・。』と思いながらも仕方がないので付いて登って

行く。ガスがかかっているお陰で、左側は切れ落ちていても高度感がほとんどないのが

幸いした。あっちゃんはグイグイと登って行っているが、私の靴底がグリップが効かず

にズルズルと滑る。何度が冷や汗を掻きながらも何とか第二の鎖もクリアーした。




















鎖を登りきると今まで真っ白だった周りのガスが一瞬流れて、麓の坂折川に沿った集落

桐見ダムが見えた。『わ~素敵!』と声をあげるあっちゃん。




















鎖場が終わるとカブト嶽石鎚神社があった。ただ祠の横の標識には『かむとだき』

書かれていた。このカブト嶽の岩は4億年以上も前の日本最古の火山活動による火砕流

堆積物(溶結凝灰岩)からできている。











石鎚神社からは尾根筋の道になる。相変わらず雨は降っているようだったが、周りの

木々のお陰で大きくは濡れずに気持ちよく歩いて行ける。途中に右手に小さな祠がひと

つ。その祠からさらに進んで行くと夫婦杉への分岐に出た。前回WOC登山部で来た時は

ここから下って第二駐車場へと下りて行った場所だ。











尾根道は良く踏まれていて歩きやすい。『そろそろ何か花がありそうね!』と言いながら

奥様たちは道の右左を見ながら歩いている。










すると足元に何やら大きな物体が。よ~く見ると周りの落ち葉の保護色になったヒキガエ

ルくんだった。『あっちゃん』と小さめの声で先を歩くあっちゃんを呼び止め手招きする。

このヒキガエルはいつも多少の事では逃げようとしない。同じ姿勢でじっとしている。ひ

ょっとしたら保護色なので見つからないと思ってじっとしているのかもしれない。







『そろそろ花が・・・・』と言いながら、周りはキノコばかりが目に付く。










すると今度はルリちゃんが『あっ!』と声をあげた。そうオバケが空を飛んでいるよう

な、可愛らしい顔をしたミヤマウズラだった。(これも小さいのでピントが合わない)

まだ咲きはじめなのか他には蕾の花もある。







横倉山三角点の手前ではまたヒキガエルが、今度は道の真ん中でこちらに向かって座っ

ていた。私たちが見ていても『我関せず』と言った感じで、あまりにも堂々としていて

思わず笑ってしまった。








三角点から横倉宮までは何回かのアップダウン。青ヌタの十字路と呼ばれる田口社への

分岐の道標から少し歩くと横倉宮になる。














祭神が安徳天皇になる横倉宮。もともとは横倉権現と呼ばれていたそうだが、天皇崩御

750年祭(昭和24年)の際に横倉宮と改められたそうだ。






ヌスビトハギ


ヤマジノホトトギス




その本殿の横を通って行くとこれも牧野博士が命名したヨコグラノキが石灰岩の瘦せ地

に今もなお立っていた。新種として発表するための基準標本を採取した原木が現存する

のは非常に珍しいらしい。







そのヨコグラノキの先が80メートルの断崖の『馬鹿試し』。普通人では容易にその突端

には近づけず、敢えて危険を冒して先端に足を運ぶ者は“馬鹿者”の類いと称され、「馬鹿

か否かを試す」意味から“馬鹿試し”と呼ぶようになったといわれている。前回WOC登山部

で来た時はその先端まであっちゃん一人が降りて行ったが、今日はガスで何も見えないの

で、さすがに馬鹿を試すことなくあっさりとパス。










馬鹿試しからは本殿の横の反対側を通って正面まで戻る。






ヌスビトハギ




本殿からは住吉神社の方へ一旦下り、さらに南に平家の穴まで下ってみる。石灰岩の露

出する急な坂を下って行くと、途中に赤い屋根の岩屋神社の祠があった。この岩屋神社

からは、保安3(112)年. の年号の刻まれた四国最古の経筒(銅板製)が見つかっている。







その岩屋神社からさらに50mほど下って行くと、馬鹿試しの岩壁の根元になる場所に

平家の穴があった。この平家の穴は源氏の追っ手が襲来した際、安徳天皇の避難場所に

されたと言われる洞窟。敵の目を欺くためか正面からは穴があることがわからず、横か

ら覗き込まないと見えないようになっていて、身を潜めるには最適だったことだろう。

明治初年頃まで、刀剣や槍、銅鏡などが残っていたと言われており、その中にあった宝

剣が三種の神器のひとつ、天叢雲剣ではないかとも囁かれている。横倉宮からこの平家

の穴までの途中にも様々な花が咲いていた。(目当ての〇〇ダケは見つからなかった)









ヤブラン


アキノタムラソウ




平家の穴からは今度は当然登り返しの急登になる。杉原神社の下の夫婦杉も大きいが、こ

ちらの2本の夫婦杉の幹周りもかなり太い。その中の良い夫婦の間を分け入るあっちゃん。





横倉宮からの鞍部まで登り次に向かうは安徳天皇陵墓参考地。陵墓参考地とは、広義の陵

墓のうち、被葬者が特定出来ないが陵墓である可能性が高いため、宮内庁により管理され

ている墳墓等のこと。全国に46基あるうちの一つがここ横倉山にある。













陵墓は御影石の玉垣に囲まれてひっそりと佇んでいた。二重の玉垣に囲まれた陵墓の外

側の玉垣の正面には、Xの形の門扉が鎖と鍵で閉じられていた。ちなみにこの門扉。香

川の崇徳天皇の白峰御陵の門扉と全く同じ形をしている。







陵墓参考地からは尾根を通って今日のコースの西端になる住吉神社へと向かっていく。

尾根から一旦下って登り返していく途中に空池の看板。鬱蒼とした杉林に雲の切れ目か

ら陽が差し込む。苔むした岩が積み重なった空池との分岐を過ぎて登って行くと右手

には鹿害避けのネットが張られていた。













その坂を登り詰めると眺望が開けた場所に出た。たしかこの辺りが住吉神社?と思って

スマホを見ると神社はこの先一旦下った場所になっていた。











但しここから住吉神社に向かっても鎖が垂れていた。途中まではルリちゃんも付いて来

ていたが、神社の前の岩壁に垂れ下がったロープ場を見てまた『無理!』と言って引き

返して行った。














そんなルリちゃんを他所にあっちゃんはホイホイと下りて行き。先ほどルリちゃんが見

て無理だと言った大岩に取り付いていた。でも思っていたより足がかりもあり、二人と

も意外と楽に登って行き、岩の先端に祀られていた祠に手を合わせる。











ここが今日の折り返し地点。さっそく今登ったロープ場を降り、下って来た鎖を登り返

して行く。予定していなかった二つ目の鎖場を登りきって、あっちゃんも満足気だ。








住吉神社からは空池を経由して戻って行く。一旦階段を登って次に下って行くと空池の

底になる場所に出た。周りは苔むした大岩で囲まれ、水のない池の底は緑一色の底地。

まるで緑の深海の様。ここでも貴重植物の保護の為鹿よけのネットで囲ってあった。

















空池から先ほど通った分岐を抜け、御陵参考地の方へと歩いて行く。途中にはここでも

いろんな植物が目についた。

トチバニンジン


ツチアケビ










横倉宮を過ぎた辺りから既にあっちゃんは『お昼ご飯までにあとどのくらい?』と騒ぎ

始めていた。『住吉神社を廻ってですから1時間はかかります』と言うと、『え~そん

なに』と言いながら、ザックからおにぎりを取り出し頬張っていた。もう既におにぎり

を何個も食べているはずなのに、また騒ぎ始めた。所々であるベンチは先ほどの雨で濡

れている。『この先に山の家があるのでそこでお昼にします!』となだめる。










今日の最終地は杉原神社。そこまではほぼ下りの道。途中にある横倉宮の鳥居。銅板で

造られた鳥居は当初は眩しく輝いていただろうが、今は緑青の落ち着いた色になってい

る。鳥居を過ぎると今度は道の右手に越知町の天然記念物のカツラの巨木。樹高は30m、

幹周りは6.6m、樹齢は250年にもなる巨木だ。その奥にも二股に分かれたこちらも天

然記念物のカツラの木があった。










更に進んで行くと道の脇にもアカガシの巨木が並んでいた。木々にとっての環境がいい

のか、この横倉山には巨木が目立つ。田口社を過ぎ平安社の鳥居を横目に見ながら歩い

て行くと、山小屋と東屋のある広場に着いた。ここでお楽しみのお昼にする。













この広場には牧野博士の「森々と杉の木立の限りなく神代ながらの横倉の山」と書かれた

自筆の碑が立っている。屋島の合戦で敗れた平家一門が、安徳帝を擁しくこの地に落ち延

びられ、平知盛外80余名が天の高市(武家屋敷跡)に25軒の住を構え、都とした折りに、

ここの泉水を供御水とされた安徳水はここから少し下った場所になる。お昼ご飯を食べた

あと、少し先にあるすぐ杉原神社に。この杉原神社は明治時代に建て替えられたが、当時

長州大工と呼ばれる周防大島の一目置かれた宮大工が手掛けたそうだ。その長州大工でも

特に有名だった門井宗吉がこの杉原神社を手掛けている。愛媛から高知県にかけて数々の

社寺を手掛けているが、この杉原神社は特にその彫刻が凄い。こんな山の中でひっそりと

佇んでいるのはもったいないと思うほどの作品だ。






















杉原神社からは遊歩道を降りて行く。第二と第三駐車場の間へと続くコンクリートの

遊歩道。ここでも様々な小さな花が咲いていた。






ガンクビソウ






遊歩道から林道に出て車を停めた第一駐車場へと下って行く。林道の脇の斜面にも色々

な花たち。最後まで楽しませてくれた横倉山。

ヤブラン





イワタバコ







織田公園を過ぎ第一駐車場に着くと青空が広がっていた。先週と同じように汗で濡れた

衣服を脱いで真新しいトイレで着替える。夏の花の季節もそろそろ終わりを告げようと

している。花巡りが終わると次なる目標はまた『線で繋ぐシリーズ』の再開かな?なん

て考えながら、帰路にある芋や金次郎で自宅の奥様のご機嫌取りのお土産を買って帰る。










今日出会った花たち

咲いているコオロギランは見つけられなかった。


今日一番見たかったミヤマウズラ


とても愛くるしい顔をしている


幽霊?オバケ?





そして終わりかけのナツエビナ





クサアジサイ


ヨコクラツクバネ


キンミズヒキ


ヤブラン


シギンカラマツ


ミヤマウズラ


ヒヨドリバナ


ギボウシ


マツカゼソウ