先々週、工石山で始まったアケボノ狂想曲も、先週の休みは雨で出かけられず、二週間
空いてしまうと、YAMAPを見ると主だった場所ではもう終盤と書かれている。今日
予定した佐々連尾山のアケボノの丘も日曜日には大勢の人で賑わっていたようだが、月
曜日の夜には風を伴った雨、そして昨日も雨が降って半ばあきらめムード。それでも少
しは頑張って花を散らさずに残っていてくれるのを期待して出かけてきた。
法皇トンネルを抜け下って行くと、金砂湖にかかる赤いひらのはしを凪いだ湖面が鏡の
ようにきれいに映し出していた。
銅山川に沿って走り、途中猿田川橋の手前から左折して南へと走って行く。最終集落を
過ぎ、杉林の中の道になると4カ所ほど未舗装の場所があるが、ゆっくり走れば問題は
ない。白髪隧道を抜けると2台の車とバイクが1台停まっていた。すでに皆さんスター
トしているようなので、私たちも身支度をして歩き始める。
汐見川の最上流部になる沢沿いの荒れた作業道を登って行くと、昨日の雨のせいか道の
至る所で脇から水が流れ出ていた。今日はルリちゃんがお休みであっちゃんと二人での
山行なのでのんびりと思ってたら、最初からあっちゃんのぺースが早くてすぐに息が
切れ始め、左膝に違和感が出てきた。
道の正面に小さく佐々連尾山と書かれた案内板から左手に登って行くと、『佐々連尾山へ』
の案内板。道は杉林の中の道になり九十九折れの道を過ぎると、石畳の名残りのような
荒れてはいるが平らな石の道が続いている。スタートから25分ほどで猿田峠に着いた。
形が独特な住友の鉄塔の横で北側の山並みを眺めていたら、玉取の大カツラの方から林
道を一台の車が上がってきた。『さすが四駆だけある、私の車では無理だな』と思いなが
ら見ていると、男性二人と女性一人が降りてきた。見覚えのある車だなと思いながら、
軽く挨拶をして峠を後にする。見上げた大森山方面にはまだガスがかかっている。
1194mの標高点を過ぎると道の勾配も徐々に急になって行く。新緑の中、鳥の鳴く
声が響き渡っている。道の脇にはミツバツツジがチラホラ咲いていた、
※画像が粗い場合は歯車マークをクリックして、画質を1080Pにするか、youtubeを見る
をクリックしてください。
すると今日最初のアケボノツツジ。残念ながら空はまだ白く薄いピンクの花は、その光
の中に溶けている。
あっちゃん、ここは右に回り込むよ!
大岩が次々と現れると、最初のロープ場。以前はロープだけだったが昨年登った時にも
ロープと別にアブミがかかっていた。揺れるアブミに足をかけて登るのは少しコツがい
る。片足をアブミに足をかけ、もう片足を岩に足をかけて登って行く。
次のロープ場は傾斜もゆるく意外と簡単に登っていけた。ただ木の根にのってしまうと
ツルっと滑るので注意が必要だ。
大岩を回り込んだりロープを使って登ったりと子供がいたら喜びそうな、まるでアスレ
チックのような道。アケボノツツジも少しづつ顔出しをしてくれ始めている。
最初の展望岩の下で道を外してロープ場を通り過ぎてしまう。木の枝や幹を掴みながら
岩の頂部をめがけて登っていると、チェーンアイゼンが落ちていた。冬場に道を外れた
場所で、アイゼンがなかったら大変だっただろうな?
展望岩から南を見ると汐見川の下流はまだガスがかかっている。工石山や白髪山はガス
が流れて山容が確認できたが、反対の北側の二ツ岳は雲の上にチョコンと頭をだしてい
るだけだった。
ここで猿田峠でお会いした三人さんも登ってきた。『駐車している車が見えますよ!』な
どと話をしながら男性のザックを見てみると『granpa』ろ書かれた名札が目に付いた。
『granpaさんですか?』と声をかけ『YAMAPでフォローさせてもらっています』と
言うと『おたくは?』と聞かれたので『KAZASHIと言います』と答えたら、YA
MAPで見覚えがあったらしく、そこから色々と話が始まった。
granpaさんたちには『お先に!』とあいさつをして、しばらく登って行くと大森山山頂
近くはなだらかな尾根道になる。後から出たはずなのにgranpaさんご一行はもう後ろに来
ている。ミツバツツジの濃い赤紫とバイケソウの緑が続く気持ちのいい尾根道。
わざとらしく疲れた顔をしてみる
大森山でザックを下ろして行動食を口にしていると、三人さんはすぐにやってきて、少
しして今度は先に歩き始めた。天気予報では午前中が晴れで、午後から曇りになってい
た。北側の法皇山系にはまだ雲がかかっているが、それでも青空が顔を覗かせている。
ただこれから行く佐々連尾山方面はまだ薄曇りだった。
大森山からの尾根はブナと笹の気持ちのいい道。大森山の手前から道の脇のバイケイソ
ウが何本も茎から刈り取られていた。切り口が真っすぐなので動物ではなく、人が刈っ
た様子だけれど、歩くのに邪魔になるほどでもないし、いったい何のため?だろう。
尾根の先の大岩に、先に歩き始めたgranpaさんが立っているのが見える。『速いな~!』
granpaさんが立っていた展望岩まで来ると西に土佐のマッターホルンと呼ばれる山頂近
くが尖った登岐山が見える。この猿田峠から玉取山、兵庫山、そして登岐山・野地峰に
かけては、線で繋いでいる時にけっこうしんどかった区域だ。その登岐山までの稜線を
眺めながら、二人で『線を繋いででよく歩いたね!』と話をする。
展望岩から見える一つ目のピークを過ぎると、佐々連尾山までは笹原の道。大森山辺り
は愛媛県側がなだらかな笹原だったが、この辺りは高知県側が比較的なだらかな笹原に
なっている。反対側の樹林帯も背が低く見晴らしのいい尾根道が続いている。
佐々連尾山には三人さんの姿はすでになかった。代わりに男女のペアが歩き始めたとこ
ろで『こんにちは』とあいさつをして山頂で入れ替わった。
時間は11時半前。当然あっちゃはお昼ごはんを食べる場所を気にしている。『もう少し
先のアケボノの丘に下りる途中の林道でいいですか?』と聞くと『ハイ!いいですよ』と
意外な返事が返ってきた。いつもなら今が待てないように言って、この山頂でごはんにし
ましょうと言うはずなのに・・・・でも考えたらすでにおにぎり2個は頬張っている。
佐々連尾山からアケボノの丘への分岐へと歩いて行くと、三人さんが尾根の先でお弁当を
広げていた。さすが360度の景色が広がる抜群のロケーションに、『いいですね綺麗な場
所で!』と声をかけて先を行く。
途中でピンクのテープが枝に巻かれた場所から北東に進んで下って行く。佐々連尾山から派
生するこの支尾根もブナの木の尾根道。林道の手前で最後に段差を慎重に林道へと降り
て、『さあそれではお昼にしましょう!』
横に長い岩をベンチ代わりにして腰掛けお弁当を広げていると、下から男性が登ってきた。
ちょうど我々が座っている岩が道を塞いでいる。『すみませんね!』と声をかけ、『アケボノ
はどうでした?』と聞いてみると『え~まだ綺麗でしたよ!』と教えてくれた。
林道から鞍部に向かっての道もブナや大岩が点在する雰囲気のいい支尾根の道。佐々連
尾山からここまでの下りで、今日初めて膝が差し込んできた。時々ポキポキと音をたて
ていたが、急な下りになるとやはり膝に負担がかかるようで、炎症を起こさなければと
思うが、それでも周りの景色がそんな不安を忘れさせてくれる。
支尾根の右手にはミツバとアケボノの二つのツツジが競い合って咲いている。鞍部を過
ぎると巨大な岩が現れる。二度ほどそんな大岩を巻いて登って行く。
1289mのピークが近づいてくると、お目当てのアケボノツツジのお目見え!昨日の
雨風のせいか足元には結構花びらが散っているが、それでも見ごたえがある。昨年の青
空と比べると薄曇りなのが少し残念だが、それでもアケボノの丘、来て良かった!
先に来ていたgranpaさんたちも、あちこちの木に移動しながら写真を撮っている。
それにしても散っていなくてすべての花が咲いていたらどれだけの密度だろう。何枚、
何十枚と写真を撮り今日は満腹!二週間前にアケボノ狂想曲と謡ったものの、結局今日
で二回目のアケボノツツジ。それも今年は今日で終わりそうだ。
名残惜しいがまた来年はタイミングもよく、もっと咲いていることを期待しながらアケ
ボノの丘をあとにする。林道から鞍部はわずか100mほどの標高差だが、登りの急登
に息が切れる。相変わらずあっちゃんはいいペースで登って行く。
アケボノの丘から一旦下って登り返すと20分弱で林道に出た。ここからは去年と同じ
ように佐々連尾山には戻らず林道を歩いて行く。ただし昨年は林道の最終地点から尾根
に向かって登って行ったものの、急登に飽きて途中からショートカットをしようとした
ら谷筋に当たってしまって、急登どころではない急斜面を四つん這いになりながら登っ
た失敗がある。二の足は踏むまいと今日は大森山の先の緩斜面を登っていた人のルート
をダウンロードしてきたので大丈夫だ。
林道に飛び出したところでgranpaさんたち追いついたあっちゃんが『granpaさんたちも
林道の終点まで行って急登を大森山の尾根へと登って行くそうよ』と教えてくれた。
ダウンロードしたトラックを見ながら尾根へと取り付く場所を見逃さないように歩いて
いたのに、世間話に夢中になってその取り付きから随分先へと林道を歩いているのに気
が付いた。『いかんいかんこれではいつも朝ドラの話をしていて道を間違えるあっちゃん
とルリちゃんではないか!』
地形図を見ると大森山への斜面は等高線も広く緩やかなようだ。少しだけ後戻りをして、
ダウンロードしたトラックとは違う場所から適当に取り付いて登って行く。
最初は杉林の中の斜面だったが、すぐに広い笹原に出た。ここからは笹原を横断する獣
道を時々横切りながら尾根に向かって真っすぐに登って行く。
すると足元に白い物体が・・・・。二本の角からするとどうやら鹿の頭蓋骨の様だ。
その頭蓋骨をよ~く見ると角と角の間からちょうど縫い合わせたような黒い筋。
人間の頭蓋骨にも縫合があるように、鹿にも縫合があるようだ。
笹原にコバイケソウが目に付くようになるとすぐに尾根道だ。そして大ブナが点在し始
めると尾根道に出た。『林道からは今のルートが楽勝でいいわね!』とあっちゃん。
尾根からあとは下るだけ。ただしこの山域は地質なのか、笹原の尾根でも雨の後は割と
ぬかるんでいる。それが急坂下りやロープ場ともなればなおさら注意が必要だ。
尾根道から少し脇にそれると青空が広がり始めた西側の遠望が効いている。すぐに同定
できるのは、スキーのジャンプ台のような急斜面になった沓掛山。そこから続いている
ように見えるのがちち山だ。東赤石山から二ツ岳、赤星山まで続く稜線もきれいに見え
る。『線で繋ぐ西赤石山から阿讃山脈』で残すところ3回となる区間だ。
案の定まだ気温が上がらず乾ききらない道は、所々でぬかるんでいる。ストックで体を
支えながら注意深く下って行く。こんな所で転んでしまってはせっかく今まで養生して
いた膝が更にまた傷んでしまう。今までだったら何でもないロープ場での下りも、重心
が左ひざにかかると突然差し込んでくる。あっちゃんはいつものようにトントンと調子
よく下っている。
すると佐々連尾山でお会いした男女のお二人が立ち止まって指さし何やら見ている。男性
が説明をしているようで、あっちゃんが『なにかいるんですか?』と聞くと『キツツキの
仲間だと教えてくれた』男性はガイドの様で鳥の事も詳しく色々とあっちゃんに話をして
くれている。『いた~見えました!』とあっちゃんが声をあげた。残念だが近眼の私には
どこにいるのかさっぱり見えない。
指さす場所をズームで撮るが、的外れだったようだ
『いつも木をつつく音だけは聞いたことがあるけど、姿を見るのは初めて!』といたって
感激したご様子の奥様。その後はルンルン気分で猿田峠まで下って行っている。
峠では先に林道を歩いて行ったgranpaさんたちは未だ着いていないようだった。振り返る
と朝は雲に隠れていた大森山の手前のピークがくっきりと見えた。
そのうちに先ほどのガイドさんたちそしてgranpaさんたちも降りてきた。猿田峠からは20
分ほどで白髪隧道に着いた。すでに車はガイドさんたちの車だけになっていた。
アケボノの狂想曲も狂う間もなく終わってしまった感があるが、それでも頑張って花を残し
てくれていたアケボノの丘。その年の表・裏年、そして直近での天気と花のジャストタイム
に出会えるのはなかなか難しいが、透き通った淡いピンクと、丸くふんわりとした何とも言
えず可愛らしい花びらのアケボノツツジ。また来年に期待して帰路に就いた。