かぜねこ花鳥風月館

出会いの花鳥風月を心の中にとじこめる日記

500万年前に触れる

2019-12-19 07:25:53 | 日記

広瀬川は、青葉城のふもとの霊屋橋から大橋にかけて大きくU字にくびれ、U字の下端あたりに竜の口渓谷という細い支流が流れている。この渓谷は、高さ100mはあろうかと思われる狭いV字谷となっていて、震災で崩壊しやすくなっているとかで、今は、立ち入り禁止の看板が立っている。

が、そこに、あの石川善助「化石を拾う」の舞台があったんだと聞いて、少し探検してみる。初冬の渇水期なので、長靴さえ履いていれば、流れを渡るのは容易で、途中倒木や落石危険場所もあるが、その化石層には、短時間でたどり着いた。

断崖の下方の流れの近いところの褶曲した層に白い貝殻がいっぱい閉じ込められていた、むき出しの貝殻は指でつまむと容易に欠けるほど脆い。炭酸カルシウムという成分そのまま。まるで、卵の殻ほどの脆さ。

その薄っぺらな白い貝殻が固い岩盤に閉じ込められている。先のとがったハンマーでないと割り裂くことは不可能なほど。広瀬川ホームページによると、500万年ほどまえの浅瀬の海に生息していたハマグリの仲間など。次第に海が引いて、陸となり死骸になったものが波や流れある土砂に揉まれたのなら、砕け散って砂になってこのような形状を残していないに違いない。生きている間に、あの化石木と同じように七ツ森当たりからの大火砕流や降り注ぐ火山灰に閉じ込められてしまったのではないか。

だが火山灰がかくも硬い岩盤に変化するとはどのようなことなのだろう。500万年という時間のプレッシャーなのか、500万年の間に上積みされた地層が圧力をかけ続け、その重圧で火山灰が固い岩盤に変化したというのか。想像もつかないエネルギーだ。

だが、謎はそれだけでない。このようなⅤ字谷はなぜできたのか。この谷がなければ、このような貝殻の化石層は、目の前に現れないのではないか。500万年の間に、計り知れない大きな地震のような地殻変動があって地面が割れる。そこに雨が流れる。すこしづつ周りの地層を侵食する。その積み重ねが、仏教でいう「五劫の擦り切れ」(天女が100年に1回降りてきて、羽衣で岩を1回撫でて、その岩が摩擦で消滅する)ほどの時間の間に、この谷を形作って、この化石層を露にしたということなのか。想像もつかない時間だ。

想像もつかないエネルギーと時間とによって存在が許された岩盤に閉じ込められた白い脆い貝殻が、2019年の地上に露になっている。何が何だか分からないままこの世に生を受けたオイラが、偶然散歩で出会った石碑に感化されて、この場所にたどり着いて、初冬の外気と水流に冷たくなったそれらの化石に触れている。

夜空の星を眺める如く、不可思議な心地にもなってくる。

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