鋼材上から440C、ATS-34、
銀紙1号
かなりナイフに詳しい友人
とのナイフ対談において、
二人とも日立金属の人間で
はないので解けない問題が
ある。
それは、なぜ極めて優秀な
刃物鋼材である日立金属の
ATS-34と銀紙が製造取りや
めになったのか、という案
件だ。
特にATSに関しては、35年
の永きに亘り刃物業界に暁
光をもたらした日本が世界
に誇る世界一の鋼材だった。
銀紙は包丁などに適してい
る粘りあるステンレスで、
こちらも優秀な刃物鋼だっ
た。
何が起きているのだろう。
何か驚くような内部的な事
情があるぞ、と我々は予想
していた。
先月末、日立は日立金属を
売却することを発表した。
つまり、日本の鋼業を支え
た日立金属は無くなる。
旧靖国たたらを日刀保と共
に再建して保存運営に尽力
したのは日立金属だ。
日立金属は民間企業だが、
国の宝だ。
しかし、採算性が悪い企業
はグループのトップは切り
捨てる。自社子会社を売り
飛ばすのだ。
実にアメリカ的。
企業は利益は愛しても、人
や国や文化や歴史などは愛
さないし、ある局面におい
ては国家と国民と歴史と文
化の破壊者に回る。
要するに自由主義の資本主
義は利益第一であるので、
人を踏みにじり国を滅ぼす
自由をも持ち得てしまうの
だ。ゼニカネにより。
故に私は昔から、ブルジョ
ワジーこそが売国奴だと言
っているのだが、歴史的な
功績のある企業を売却とは
ただごとではない。
しかし、日本国は自由主義
的金融資本主義の国だ。会
社売り飛ばしなどは自由だ。
そこで働く勤労労働者の生
活や生存権の保障などは関
係ない。
つくづく資本主義というの
は、ゼニカネ利益儲けのみ
を大切にする亡者量産体制
であり、非人道的であると
思うよ。
自由って、好き勝手やるそ
の自由だけではなく、博愛
と結合しないととんでもな
い暴虐を生むことになるの
に。
ATSと銀紙の生産中止に踏み
切った理由が薄らと判った
ような気がする。
これは上からの命令だ。
業務を縮小するように、と。
看板商品への稼働力を停止
させよ、と。
数年かけた会社の売却準備
だったのだろう。
そして今、日立グループの
トップは日立金属を売り飛
ばす。
オーナーである筆頭株主が
決めた事だろう。いわゆる
「松の廊下」のお歴々が。
目的はカネ。それしか無い。
また、これは、日立自体が
不採算部門の子会社を維持
する体力が消滅している事
も表している。
例え不採算であろうと、歴
史的功績や従業員の生活
を維持していくという大
企業としての余力的体力が
不存在になったということ
だ。
これが日立金属がドル箱子
会社ならば、絶対に売却な
どはしない。
電車やバスや特装車を作っ
ていた東急グループの東急
車輛は日立金属と同じよう
に売却された。そして、新
明和工業が購入した。たっ
た23億円で。
内部事情的にはネットには
書けないような悲惨な事が
その後の企業内で起きてい
る。
企業は人は愛さない。
企業は利益のみを愛す。
これは現実だ。
だが、そうではない「下町
ロケット」のような会社の
資質も、実は大企業であっ
ても保有している企業は今
後も身切りの身売りをせず
とも生き残るだろう。