ケン坊のこんな感じ。
キーボーディスト、川村ケンのブログです。




ピアノという楽器は、こんなにも美しい音を出すことができるんだ・・・。

勿論、それはキースだからこそ、なのだとしても、この喜びの大きさを、一体どうやって表現できましょう。

 

待ちに待った、夜でした。

指おり数えながら楽しみにしていた、コンサートでした。

チケットを取ったのは、今年の初めでした。

震災が起こるなんて、思ってもいない頃でした。

そして、原発があんな大きな事故を起こして、まさか数ヵ月後に、野菜や魚を買うのに躊躇するようなことになっているなんて、思ってみなかった頃でした。

 

震災の後、ちょっと落ち着いたころ、「そうだ、キースは来てくれるだろうか」って思った日がありましたが、

なんとなく「うん、キースは、来てくれそうだなあ」と、確信めいた気持ちもありました。

 

そして、今日、願いどおり、キースと同じ空間にいることができました。

20世紀から21世紀をまたぐ、世界最高のピアニストである、キースの生音を、聴くことができました。

 

キースのソロ・コンサートは、今回で、三回目になります。

 

まったく決め事のない、どう始まってどうやって曲が終るか、僕たちはもとより、キース本人さえ、決めていない。

その場で、全てが作られる即興=インプロヴィゼーションによるコンサート。

歴史的名盤、あの美しい「ケルン・コンサート」の演奏に魅了されて、キースのファンになった人は沢山いると思います。

しかし、それ以降、キースは「ケルンを求めて聴きに来てくれるお客さんが沢山いるのは知ってるけど、僕はもう、あれと同じことはしない」と公言し、

一時はかなりアブストラクト(抽象的)な世界に踏み込んでいった時期があります。

ケルンのような、ひたすら美しいタッチとメロディを、意識的に離れるかのようにして(まったく演奏しない訳ではないけれど)、かなり難解なものだった時期があるのです。

 

しかし、今日のキースの演奏は・・・、

もしかしたら、ケルンをも越えたのではないだろうか、と思うような、透明感に溢れた、美しく、とってもとってもロマンティックなサイドのキースの、オン・パレードでした。

お得意のゴスペル風の演奏や、現代音楽的(無調的ともいえるかな。フリーとか、構成音楽でも、スクリャービンとかの、あんな感じの)なものをはさみながらも、

とにかく、美しかったのです。

 

あの震災のニュースを、映像を、キースが見ていないわけもありませんから、やっぱり、日本でのコンサートということで、何らかの影響があったとも思われます。

あのキースのことですから、ただ「癒してあげよう」というような短絡的な発想をするはずもなく、きっと、もっといつものようにひたすら自分を追い込んだ末に、

自然発生的に出てきたものが、きっと、あの美しいメロディの数々だったのだと思うのです。

 

本当に素晴らしかった。あと1000回、素晴らしかった、と書きたいくらいですが、パソコンでは「なんだい、コピペじゃん」ということで、説得力がありませんから止めておきますが(笑)、

本当に素晴らしかったです。

 

キースも、とってもノッていたように思いました。

一曲あたりが比較的、15分とか20分とかではなくて、5~8分くらいという短めの演奏で、バンバンバン!と次々にいろんなモチーフが溢れてきてる感じでした。

盛り上がると入ってくる、あのうなり声も、独特の中腰ステップも、ほぼ全曲であって、

気持ちよさそうに演奏してるなあ、と思って聞いておりました。

 

そして、本編最後の曲では、もう魔法を見るような、まさに“ジーニアス・ボーイ(天才少年)キース”の最高の演奏で締めくくられたのでした。

ジーニアス・ボーイとは、あの帝王マイルス・デイビスが、当時まだ十代のキースを評して、付けた言葉です。

 

そんなこともあってか、アンコールも、初日にしては異例とも思われる3回。

しかも、その一曲目は、僕も、「ケルン~」と並んで、大好きな「The Melody At Night, With You」あの「I Loves You Porgy」でした。

キース自身が病気でピアノが弾けなくなった後、復帰第一作として、献身的に尽くしてくれた奥さんの為に、と自宅のピアノで録った、

めずらしいスタジオ盤の、その一曲目の曲です。

自殺まで考えたという、絶望の長い長いトンネルを抜けたキースの、その記念すべき復帰の曲。

 

この曲を、このアンコールに持ってきたのは、予定していたことだったのか、たまたまなのかは判りませんが、

僕は、この曲の意味と、今の日本の現状を重ね合わせて感じてしまって、涙が止まらなくなってしまいました。

 

本当に、どうもありがとう。素晴らしい演奏でした。

キースと、時代を一緒に過ごせていることを、心から誇りに思い、その存在に心から感謝します。

また、本物の音楽の素晴らしさを味あわせてくれて、ありがとう。

なんだか、魂が救われた気さえしています。

 

今年、67歳になられる、ジーニアス・ボーイ、キース。

またこうして日本に来てくれて、本当にありがとう。

どうか、少しでも素敵な滞在を・・・

 

 

ってか、グランドピアノ、また欲しくなったー(笑)。

キースのようには弾けなくてもさ・・・欲しいです、ほんと。

あーあ、なんて素晴らしい楽器なんだろう

 

ではー。



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