怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

豪腕とは

2012-01-07 08:24:37 | Weblog
内田樹のブログはいつも愛読しており、なるほどと思うことが多いのだが今回も目からうろこでした。
内田はブログの記事の引用も転載も自由と言っているので、少し長いのですがお言葉に甘えて転載します。
引用は「内田樹の研究室」の記事『「腹の読めないおじさん」から「のっぺりしたリーダー」へ』からです。興味がありましたらぜひ原文を全部読んでください。
『大統領就任のときケネディは弱冠44歳だった。
前任者のアイゼンハワーは70歳、アメリカのゴールデン・エイジの8年間大統領職にあった「アメリカで最後の古いタイプのリーダー」だった。
「古いタイプのリーダー」ということは「何を考えているのか、よくわからないおじさん」だったということである。
それは彼の軍歴によく現れている。
アイゼンハワーの軍歴のきわだった特徴は平時の長期にわたる停滞と戦時における異常な速度の昇進である。
アイゼンハワーは少佐から中佐に昇進するまで16年間を要した。アメリカが相対的な平和と繁栄のうちにあった1930年代を彼は同期生が昇進するのを指をくわえて眺めながらまるまる少佐という低い階級で過ごしたのである。
第二次世界大戦勃発時にアイゼンハワーは一介の中佐に過ぎなかった。
そのような凡庸な(というより劣悪な)軍歴しかもたない軍人が、抜擢され、ノルマンディー上陸作戦を成功させ、ヨーロッパ戦線の連合軍450万人を指揮し、5年で中佐から陸軍元帥になった。
これはアメリカ陸軍における昇進スピードの最速記録であり、おそらくこのあと破られることがないだろう(ナポレオン軍にはあったと思うが)。
一介の中佐が開戦後あっいう間に元帥まで超スピード昇進したのは、彼が「想定外の事態」に遭遇したときに、例外的に手際よく最適解を選択できるだけでなく、起案した作戦計画を遅滞なく実行できる人物だということがひろく軍隊内部で知られていたからである。
頭のよい参謀なら「最適解」を選ぶことができるかも知れない。けれども、起案したその「最高の作戦」を実施するためには、連合軍内部での利害調整や思惑のすりあわせや腹の探り合いやらを手際よく片付けられなければならない。
アイゼンハワーはブラッドリーやパットン将軍といった前線指揮官の信頼を勝ち取り、チャーチルやド・ゴール将軍のような腹の底の見えない同盟者たちと巧みに連携し、ソ連軍のジューコフ元帥やスターリンとさえタフな交渉をした。
このような仕事ができる人のことを「豪腕」という。
「豪腕」というのは、前にも書いたことがあるが、暴力的に「無理を通す」人のことではない。
「あいつはもののわかった人間だから」という評価が安定している人のことである。
だから、頼まれた方は、何がどう「よほどのこと」かはわからないけれど、あいつがわざわざ頼んでくるくらいだから、「よほどのこと」なのだろう。とすれば、断るわけにはゆくまいと思う。
そういうふうに交渉相手に思わせることのできる人だけが「無理を通せる」。
アイゼンハワーは「天才的な管理能力と交渉力」があったと言われるが、それは彼があらゆる機会をとらえて、「いずれ大事なことを頼みそうな相手」には「貸し」を作っておくということを心がけていたからだと私は思う。
とくに不遇の16年間を彼はもっぱら軍隊の内部に、「いずれ大事なことを頼みそうな相手」を見出し、ケアするという仕事を丁寧にやっていたのであろう。
さまざまな部署に散らばっている「この人の頼みは断れない」と思ってくれる人のことをスパイ用語では「アセッツ」と呼ぶ。
「アセッツ」をどれほど広い範囲に多様なレベルに展開しているか、それによって、その人の「政治力」は決定される。
こういう「どこに何を隠しているのかわからない」人がひさしく国際政治の登場人物であった。』
アイゼンハワーがどうしてこんなに昇進できたのか、彼が不遇の時代にいずれ大事なことを頼みそうな相手を見出し、ケアをしていたと簡単に言いますが、まず少佐の身でいずれ大事なことを頼みそうな相手を見分けるなんてことがどうできるのか、それを見出してもどうケアしていくのか、貸しを作るなんて出来るのでしょうか。実際には、これはものすごく難しいことですよね。だからこそ空前絶後の出世を遂げることが出来たんでしょうけど。
今豪腕と言われている「小沢一郎」は、裏ではいろんな人にありとあらゆるケアをしていたと言うことでしょうか。どうも今の話からすると彼は本当の豪腕ではなかったと言えるかもしれません。今太閤と言われ首相まで上り詰めた田中角栄は十分すぎるケアをしていたみたいですけど。その意味で言えば金丸もそうだったのかな。わが社で出世している人もなんとなくこういう視点で見ると分かるみたいな気もします。
でも私にはこれだと思う人がわかってもこちらからケアするようなことは何もなかったような気がしているのですが、だからイマイチだったんでしょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする