古賀茂明 今話題の人ですね。
しかし一読しての読後感は残念なものでした。
中学生にもすらすら読めるように書いたから余計でしょうが、もう少し人事制度に対する深い洞察(ちなみにこの字は「とうさつ」で変換すると「盗撮」としか出てこないので思わず辞書で確かめてしまいました。「どうさつ」ならでました。)が必要ではないでしょうか。
意地の悪い言い方をすると、こんなにも優秀で国民のためを思っている自分を処遇しない人事制度は全くなっていないと誰も言ってくれないので自分で言っているように聞こえます。
まず、バブル崩壊後の失われた20年まではわが国の官僚機構は総体としてみれば非常にうまく機能しており、それを支えていたのはその人事制度だった思われます。そこでは、ただ省益だけで物事を決していたわけではなく、立場、立場(省、省)の違いはあれ日本のため国民のために動いていたのではないでしょうか。
日本の年功序列は最終的にはある年齢では局長、次官と絞り込まれていくことから、競争をできるだけ長く引っ張っていくという一面もあります。次官になるためにはキャリア組の中での猛烈な競争があるのです。
中にはだめな人もいるのですが、そういう人は早々に脱落して外郭に行ったりするのですが、その人たちに現役と同じような待遇を保障するということは必要悪の側面もあるのでは。私から見ても保障しすぎという面はあるにしてもそんなにむちゃくちゃなのか冷静に見る必要があります。
そもそも筆者の言うように若手で優秀な人をどんどん引き上げ、だめな人は切り捨てればいいと言うのなら、誰がそれを評価するのでしょうか。役に立たないかどうかは局面、状況しだいで変わるものです。大石内蔵助は普段昼行灯と言われてましたが非常時には有能なリーダーでした。そのときの状況でどんどん人を切り捨てると変化に対する柔軟な対応はできなくなるでしょう。
制度が固まりすぎて過剰適応、垢がたまっている面はあるにしても、それが本質なのか根本的問題なのかというと疑問があります。
天下りが諸悪の根源みたいに言われますが、民間でも大企業では役員になれない人はある年齢で子会社なりに出向します。
ちなみに私の大学の同期で銀行に入った人たちは、ボード入りした人を除いてはみんな関連会社なりに行って、銀行に残っている人はいません。残念ながらトヨタとか東芝にいった連中も子会社なり下請け関連会社なりに出ています。
もっともその企業の命運を託すに足る人物を選別し目いっぱい働かせるためには、同じような人事制度になってくるのではないのでしょうか。どちらが先かわかりませんが、少なくとも日本の大企業も官庁も、そんなに違う労働慣行ではないみたいです。
ある制度が成り立つにはそれ相応の理由があり、それが持続しているには社会的に認められる効果と合理性があるはずです。
民主党の言う政治主導では政策判断は政治がやるにしてもそれを実現する実務は官僚機構がやるということを分かっていないことから大混乱していると思います。わが社の社長はそもそも実務があるということがわかっていないというのが残念ですが、民主党にも官僚は邪悪な存在だという先入観はぬぐってほしいものです。
永きに渉る自民党政治を支えていたのが官僚機構だから許せないというのは分かりやすいのですが、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いという類ではないでしょうか。
この本に書いてあることも含めて官僚機構を改革しなければいけないことは否定しませんし、直すべき点も多いと思いますが、日本の根本的な問題とはとても思えません。
労働経済学の小池和男さんの本を読んでいただきたいのですが、地味な実証に基づく研究はなかなか取り上げられず、声高に官僚機構=悪という声が世間にもてはやされるのでしょう。そういう意味で残念な読後感です。
しかし一読しての読後感は残念なものでした。
中学生にもすらすら読めるように書いたから余計でしょうが、もう少し人事制度に対する深い洞察(ちなみにこの字は「とうさつ」で変換すると「盗撮」としか出てこないので思わず辞書で確かめてしまいました。「どうさつ」ならでました。)が必要ではないでしょうか。
意地の悪い言い方をすると、こんなにも優秀で国民のためを思っている自分を処遇しない人事制度は全くなっていないと誰も言ってくれないので自分で言っているように聞こえます。
まず、バブル崩壊後の失われた20年まではわが国の官僚機構は総体としてみれば非常にうまく機能しており、それを支えていたのはその人事制度だった思われます。そこでは、ただ省益だけで物事を決していたわけではなく、立場、立場(省、省)の違いはあれ日本のため国民のために動いていたのではないでしょうか。
日本の年功序列は最終的にはある年齢では局長、次官と絞り込まれていくことから、競争をできるだけ長く引っ張っていくという一面もあります。次官になるためにはキャリア組の中での猛烈な競争があるのです。
中にはだめな人もいるのですが、そういう人は早々に脱落して外郭に行ったりするのですが、その人たちに現役と同じような待遇を保障するということは必要悪の側面もあるのでは。私から見ても保障しすぎという面はあるにしてもそんなにむちゃくちゃなのか冷静に見る必要があります。
そもそも筆者の言うように若手で優秀な人をどんどん引き上げ、だめな人は切り捨てればいいと言うのなら、誰がそれを評価するのでしょうか。役に立たないかどうかは局面、状況しだいで変わるものです。大石内蔵助は普段昼行灯と言われてましたが非常時には有能なリーダーでした。そのときの状況でどんどん人を切り捨てると変化に対する柔軟な対応はできなくなるでしょう。
制度が固まりすぎて過剰適応、垢がたまっている面はあるにしても、それが本質なのか根本的問題なのかというと疑問があります。
天下りが諸悪の根源みたいに言われますが、民間でも大企業では役員になれない人はある年齢で子会社なりに出向します。
ちなみに私の大学の同期で銀行に入った人たちは、ボード入りした人を除いてはみんな関連会社なりに行って、銀行に残っている人はいません。残念ながらトヨタとか東芝にいった連中も子会社なり下請け関連会社なりに出ています。
もっともその企業の命運を託すに足る人物を選別し目いっぱい働かせるためには、同じような人事制度になってくるのではないのでしょうか。どちらが先かわかりませんが、少なくとも日本の大企業も官庁も、そんなに違う労働慣行ではないみたいです。
ある制度が成り立つにはそれ相応の理由があり、それが持続しているには社会的に認められる効果と合理性があるはずです。
民主党の言う政治主導では政策判断は政治がやるにしてもそれを実現する実務は官僚機構がやるということを分かっていないことから大混乱していると思います。わが社の社長はそもそも実務があるということがわかっていないというのが残念ですが、民主党にも官僚は邪悪な存在だという先入観はぬぐってほしいものです。
永きに渉る自民党政治を支えていたのが官僚機構だから許せないというのは分かりやすいのですが、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いという類ではないでしょうか。
この本に書いてあることも含めて官僚機構を改革しなければいけないことは否定しませんし、直すべき点も多いと思いますが、日本の根本的な問題とはとても思えません。
労働経済学の小池和男さんの本を読んでいただきたいのですが、地味な実証に基づく研究はなかなか取り上げられず、声高に官僚機構=悪という声が世間にもてはやされるのでしょう。そういう意味で残念な読後感です。