初めて知ったんですが、池谷さんは週刊エコノミストに2008年から毎月巻頭エッセイを連載している。この本は14年分のエッセイをテーマ別に分類してまとめたもの。
巻頭エッセイなので1項目が見開き2ページ。他の池谷さんの著作と比べて週刊エコノミスト連載なのでその傾向の読者を意識しての方向のテーマが多い気がします。
毎朝一番で数多のアップされた論文の目を通しているのが日課という池谷さん。その中で気になった論文を選んで、その趣旨を分かりやすく紹介しています。ページの最後には小さな字で読めませんが出典も書いてあります。
もっとも見開き2ページの量ですのであまり深掘りできないし、反対の趣旨の論文も結構あると思うのですが、時を経て今や常識となったものもあります。
ホンマでっかという説やへ~という説もあるのですが、論文での根拠があるだけに知的好奇心を刺激されます。

いろいろ紹介されている説の中で、気になったもの(あくまで私個人の感想です)をアトランダムに書き出してみます。
・脳は慣れるのが比較的得意で、ニューノーマルは遅かれ早かれただのノーマルになる。新しい習慣に慣れるのにどれくらいかかるかと計測してみたら平均して66日、2カ月ほど努力して継続すれば、それが新しい習慣として根付くそうです。
・歳をとれば記憶力は衰えると言うのは俗説で、解剖学的知見では脳の神経細胞の数は3歳時以降ほぼ一定で経年劣化しません。記憶力が衰弱した気がする一番の原因は「老化すれば記憶力が衰える」と本人が思い込んでいるから…年年歳歳経年劣化の進んでいる私の実感からはこれは本当かなと思うのですけど。
・集中力を鍛えるためには、疲れたらより簡単で集中力を要しない課題に切り替えて対処しようと思いがちですが、あえて難しい問題に挑み集中力を要求することで集中力は再活性化するそうです。集中力は消費することで枯渇してしまう減価資源ではなく、掘れば噴き出す湧泉と言われるといつも疲れたからと安易な道を探るのはだめか。
・女性の涙には男性の感情に影響を与える化学物質が含まれている。実験によると涙が男性の性的興奮を低下させることが分かっている。女の涙に騙されてはいけないのに脳は無意識にちゃんと反応してしまうみたいです。
・私個人としては血液型性格判定などは信じていないのですが、血液型占いはあながち荒唐無稽な話でもないみたいです。アメリカ自殺研究センターが先進国における自殺要因を大規模に解析したところ、国を超えて最も普遍的な要因は環境因子ではなくて血液型にあり、O型は自殺率が少ないのです。因みにO型はマラリアにかかっても劇症化しにくいそうです。
・様々な状況に置かれた人を想像して、その時の感情を推測するテストを行った結果、テストの直前に短編小説を読んでもらうとテストの点数が5~10%上昇した。心を読む脳力は鍛えるには小説を読むといいみたいですが、大衆性の高い探偵小説や恋愛小説ではだめで文学賞を取る様な格調高い文芸作品でないと効果がない。読者に想像力を要求する心理的負荷の高い読書がお勧めです。
・ラッシュ時には渋滞が常態化していますが、上空から見ると道路の表面積の90%以上には車が存在しない。道路は効率的に活用されていない。AIによる自動制御になれば都心の交通網は現在の数倍にも耐えられるようになる。20年後には運転を趣味とする人は公道では走れずサーキットへ追いやられる?
・アメリカ国民健康栄養調査のデータから食生活が環境に与える影響を調べてみると健康的な食事はそれだけ多くの水や土地やエネルギを要し、地球環境には優しくない。
・高齢化が進むとともにアルツハイマー病患者は増大しているのですが、年齢や診断制度の高まり損段基準などの外部要因を除去して計算するとアルツハイマー病の罹患率は年々減っているそうです。男性の罹患率は過去20年間で平均20%減少している!理由はよく分からないけど糖尿病とかメタボリック症候群などのリスク要因に対して予防線を張るようになったからかも。これはなんか希望が持てる話ですけど、ホンマかいなです。
と書きだすときりがないので興味がある人は後は自分で読んでみることです。1項目が見開き2ページなのでもう少し深掘りしてほしいことが多々あるし、説明が舌足らずに思えるところもあるのですけどそれはそれとして知的好奇心を刺激されます。
一緒に写っているもう1冊は藤岡換太郎「天変地異の地球学」です。
有史以来人類は数々の天変地異に見舞われてきましたが、地球誕生以来46億年の歴史から見ると蚊が刺したようなもの。
地球に生命が誕生してからの40億年を見ても、何度となく大きな天変地異が起こり、ほぼ生物が絶滅すると言うことが少なくとも5回はあるとか。そのうち1回は有名な恐竜絶滅をもたらしたユカタン半島への隕石落下による地震・津波、気候大変動なのですが、それ以外の4回の生命大量絶滅の原因は火山活動とかによる無酸素状態になったことなど言われていますが、複合的でいろいろな説もあるみたいです。大陸がくっついたり離れたり、大洋が形成されたり大山脈が出来たりする過程では地震津波、火山活動などなど想像を絶する天変地異が起こっていたと思います。
さらに言えば「全球凍結」スノーボールアースという天変地異もありました。地球表面が厚さ3000メートルの氷に覆われ、その状態が数千万年から数億年続いたと言うのですが、これが2あるいは3度あったとか。当然生物も大打撃を受けたのですが、ごくわずかな種は生き残っています。
全球凍結迄は行かなくても、よく知られているように氷河期というのも周期的に訪れていて、過去30万年を見れば今はウルム氷期が終わっての第4間氷期。どうしてそうなるのかという点については太陽の活動の変化とか言われていますがまだまだ諸説あります。そう言えば安部公房の小説で「第四間氷期」という題のものがありましたけど、これは関係ない。
間氷期の中でも温暖化したり寒冷化したりしているのですが、私たち人類が誕生して以来の500万年(現生人類で言えば30万年)を見れば、いろいろな天変地異に襲われたと言っても、長い地球の歴史から見れば比較的落ち着いていると言ってもいいぐらい。人為的な二酸化炭素の増大で地球温暖化が進んでいると言われていますが、氷河期が来るとどうなるのか。私たちの文明というのは非常に小さなレンジの気候変動でも大きく影響を受ける脆弱なものと思えてきてしまいます。
まあ、宇宙誕生からの大きなレンジで地球環境を考えてみるにはいい本です。
巻頭エッセイなので1項目が見開き2ページ。他の池谷さんの著作と比べて週刊エコノミスト連載なのでその傾向の読者を意識しての方向のテーマが多い気がします。
毎朝一番で数多のアップされた論文の目を通しているのが日課という池谷さん。その中で気になった論文を選んで、その趣旨を分かりやすく紹介しています。ページの最後には小さな字で読めませんが出典も書いてあります。
もっとも見開き2ページの量ですのであまり深掘りできないし、反対の趣旨の論文も結構あると思うのですが、時を経て今や常識となったものもあります。
ホンマでっかという説やへ~という説もあるのですが、論文での根拠があるだけに知的好奇心を刺激されます。

いろいろ紹介されている説の中で、気になったもの(あくまで私個人の感想です)をアトランダムに書き出してみます。
・脳は慣れるのが比較的得意で、ニューノーマルは遅かれ早かれただのノーマルになる。新しい習慣に慣れるのにどれくらいかかるかと計測してみたら平均して66日、2カ月ほど努力して継続すれば、それが新しい習慣として根付くそうです。
・歳をとれば記憶力は衰えると言うのは俗説で、解剖学的知見では脳の神経細胞の数は3歳時以降ほぼ一定で経年劣化しません。記憶力が衰弱した気がする一番の原因は「老化すれば記憶力が衰える」と本人が思い込んでいるから…年年歳歳経年劣化の進んでいる私の実感からはこれは本当かなと思うのですけど。
・集中力を鍛えるためには、疲れたらより簡単で集中力を要しない課題に切り替えて対処しようと思いがちですが、あえて難しい問題に挑み集中力を要求することで集中力は再活性化するそうです。集中力は消費することで枯渇してしまう減価資源ではなく、掘れば噴き出す湧泉と言われるといつも疲れたからと安易な道を探るのはだめか。
・女性の涙には男性の感情に影響を与える化学物質が含まれている。実験によると涙が男性の性的興奮を低下させることが分かっている。女の涙に騙されてはいけないのに脳は無意識にちゃんと反応してしまうみたいです。
・私個人としては血液型性格判定などは信じていないのですが、血液型占いはあながち荒唐無稽な話でもないみたいです。アメリカ自殺研究センターが先進国における自殺要因を大規模に解析したところ、国を超えて最も普遍的な要因は環境因子ではなくて血液型にあり、O型は自殺率が少ないのです。因みにO型はマラリアにかかっても劇症化しにくいそうです。
・様々な状況に置かれた人を想像して、その時の感情を推測するテストを行った結果、テストの直前に短編小説を読んでもらうとテストの点数が5~10%上昇した。心を読む脳力は鍛えるには小説を読むといいみたいですが、大衆性の高い探偵小説や恋愛小説ではだめで文学賞を取る様な格調高い文芸作品でないと効果がない。読者に想像力を要求する心理的負荷の高い読書がお勧めです。
・ラッシュ時には渋滞が常態化していますが、上空から見ると道路の表面積の90%以上には車が存在しない。道路は効率的に活用されていない。AIによる自動制御になれば都心の交通網は現在の数倍にも耐えられるようになる。20年後には運転を趣味とする人は公道では走れずサーキットへ追いやられる?
・アメリカ国民健康栄養調査のデータから食生活が環境に与える影響を調べてみると健康的な食事はそれだけ多くの水や土地やエネルギを要し、地球環境には優しくない。
・高齢化が進むとともにアルツハイマー病患者は増大しているのですが、年齢や診断制度の高まり損段基準などの外部要因を除去して計算するとアルツハイマー病の罹患率は年々減っているそうです。男性の罹患率は過去20年間で平均20%減少している!理由はよく分からないけど糖尿病とかメタボリック症候群などのリスク要因に対して予防線を張るようになったからかも。これはなんか希望が持てる話ですけど、ホンマかいなです。
と書きだすときりがないので興味がある人は後は自分で読んでみることです。1項目が見開き2ページなのでもう少し深掘りしてほしいことが多々あるし、説明が舌足らずに思えるところもあるのですけどそれはそれとして知的好奇心を刺激されます。
一緒に写っているもう1冊は藤岡換太郎「天変地異の地球学」です。
有史以来人類は数々の天変地異に見舞われてきましたが、地球誕生以来46億年の歴史から見ると蚊が刺したようなもの。
地球に生命が誕生してからの40億年を見ても、何度となく大きな天変地異が起こり、ほぼ生物が絶滅すると言うことが少なくとも5回はあるとか。そのうち1回は有名な恐竜絶滅をもたらしたユカタン半島への隕石落下による地震・津波、気候大変動なのですが、それ以外の4回の生命大量絶滅の原因は火山活動とかによる無酸素状態になったことなど言われていますが、複合的でいろいろな説もあるみたいです。大陸がくっついたり離れたり、大洋が形成されたり大山脈が出来たりする過程では地震津波、火山活動などなど想像を絶する天変地異が起こっていたと思います。
さらに言えば「全球凍結」スノーボールアースという天変地異もありました。地球表面が厚さ3000メートルの氷に覆われ、その状態が数千万年から数億年続いたと言うのですが、これが2あるいは3度あったとか。当然生物も大打撃を受けたのですが、ごくわずかな種は生き残っています。
全球凍結迄は行かなくても、よく知られているように氷河期というのも周期的に訪れていて、過去30万年を見れば今はウルム氷期が終わっての第4間氷期。どうしてそうなるのかという点については太陽の活動の変化とか言われていますがまだまだ諸説あります。そう言えば安部公房の小説で「第四間氷期」という題のものがありましたけど、これは関係ない。
間氷期の中でも温暖化したり寒冷化したりしているのですが、私たち人類が誕生して以来の500万年(現生人類で言えば30万年)を見れば、いろいろな天変地異に襲われたと言っても、長い地球の歴史から見れば比較的落ち着いていると言ってもいいぐらい。人為的な二酸化炭素の増大で地球温暖化が進んでいると言われていますが、氷河期が来るとどうなるのか。私たちの文明というのは非常に小さなレンジの気候変動でも大きく影響を受ける脆弱なものと思えてきてしまいます。
まあ、宇宙誕生からの大きなレンジで地球環境を考えてみるにはいい本です。