怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

澤口俊之「老いは脳科学的に素晴らしい」

2023-05-28 09:23:59 | 
数え年で言うと今年古稀。最近記憶力はおぼつかなくなるし体力的にも衰えを感じ、長い友のはずの髪の毛にも徐々に愛想をつかれてきています。
それでも澤口先生によると脳科学的には老いでは衰えていないとか。

ホンマでっかと言いたくなりますが、ちゃんと論文として発表されていて根拠があるそうです。
ここまで出ているのになかなか思い出せないとか言うことはよくあることで、記憶力の減退を実感するのですが、日々暮らしていると膨大な量の情報を脳にため込んでいるわけで、歳をとればとるほど情報量は増える。若者のように少ない情報ストックから引き出すのではなく、年輪を重ねた膨大な情報のストックから引き出すことはなかなか難しくなると言われるとそれなりに納得します。
それでも多様な記憶(知識・経験)を活用して適切な判断や決断を導く能力「結晶性知能」は高齢になるほど高くなる。高齢になるほど豊富な知識経験を積み重ねていくし、その中から意味ある重要な記憶を引き出す能力は加齢により衰えていない。社会環境を含む環境に適応する能力は高齢になるほど高いとなります。不適切・非適応的な古い知識を修正している高齢の政治家とか経営者は概して結晶性知能が高く優れたリーダーになっている。
ところで人は脳の情報処理能力の省エネ・効率化と安定・安心のため「ステレオタイプ思考」にとらわれてしまいます。
「高齢者は記憶力が低い」とか「女性は理系に弱い」とか広く無意識に思いこまれているのですが、これは実験してみると偏見だと分かるそうです。実験方法は実際に本で読んでいただければいいのですが、高齢者とか女性自身がこのステレオタイプ思考にとらわれているので、普通に試験をするとそれを裏付ける結果が出るのですが、そのステレオタイプ思考を排して試験をするとまた違った結果が出て、それが偏見だと分かるとか。普段の日常生活から如何に我々が思い込みにとらわれていて、実際の行動もその思い込みに規定されているかと言うことです。
以前読んだ「ゾウの時間ネズミの時間」によると心臓の鼓動数と寿命は相関関係があるのだが、人類はその傾向線から大きく離れていて長寿。普通動物は生殖年齢を過ぎると寿命が来るのだが、人の女性の平均寿命は倍近い。これは人間の子どもが成長期が長く独り立ちするまでに時間がかかるのだが、母親一人では子育てが困難で祖母が子育てを手伝うことが種の生存戦略に有利なためと考えられている。これを祖母効果というのだが、そのためには高齢になっても的確な判断を下せる結晶性知能が必要になる。どちらが先かを考えると混乱するけど両者相まって進化したのでしょう。そうすると男性が長寿の理由はとなるのですが、あまり子育てには関与していないので祖父効果というのは期待されずに比較的生殖年齢が長いので、そこまでは、まあいいかということか。でも個人的には最近そろそろ役に立たないことを実感しているので、生物的には最早寿命が来ていると言うことなのか。ちょっと寂しい。
それでもいかに高齢になっても結晶性知能は衰えないと言っても、実際に認知症の人たちを身近で見ていると外観だけでは分からないので色々壊れてくるよなと思うのは自然な感想では。認知症は病気なので同列に論じてはいけないのですが、肉体的には確実に衰えてきているので出来ないことは増えてきていて、それが判断誤りに結びつくこともある。老いは脳科学的には素晴らしくてもそんなに手放しでは素晴らしいとは行かないでしょう。
因みに人類の婚姻形態は中途半端な一夫多妻制。生殖可能年齢の差もあるので男性が糟糠の妻から若い子に乗り換えれば、そこで張り切って長寿になるかもしれませんが、そのごちゃごちゃのストレスと無理な頑張りでぽっくり行きそうです。加藤茶なんかドリフターズの唯一のメンバーにになるのではないかと思いますが、幸せな再婚だったんですよね。
後半は、幸福な長寿をもたらすにはどうすればいいかと言うことを縷々述べていますが、アッと驚くようなことはなく、ある意味よく言われているようなこと。
人類は家族を基本単位とした氏族集団で暮らしてきたので、結婚して家族を持つ方がリスクが少ないし、離婚は明らかにリスク要因になります。孤立せずに人とのつながりを持った生活が大切で、オンラインでもいいので毎日友人と会うことが良いとか、自発的協調的な助け合いであるボランティア活動を行うこともいい。さらに進化的本質的に狩猟採集民族なので、出来るだけ座らない生活でウオーキングをする、太陽の光を浴びて緑の中で散歩する。
何をどう食べるといいかについても書いてあります。日本食を基本にきのこ・海藻・豆類・魚を食べて。一日三杯は緑茶を飲みましょう。
どうも対処法は常識的なのですが、どうも澤口さんがこれは定説なり正しい原理だと断定されるとちょっと上から目線を感じて引いてしまいます。一般読者向けに難しい議論を飛ばして分かりやすく書いているのでしょうけど、学説は絶えず変わることがあるのでもう少し控えめに主張してもいいのでは。
でも歳をとることは素晴らしいと言うことは大いに主張されるべきことだと思い、元気が出ました。
コメント
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