怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

浅田次郎「鉄道員(ぽっぽや)」は映画も小説も堪能

2021-10-14 07:05:45 | 映画
NHKのBSで、「鉄道員(ぽっぽや)」をやってました。

実はこの映画、封切りの時に見ていて、暗い映画館のシートで泣けた泣けた。
その後何度かテレビで放送した時があったのですが、民放だとCМが入りかつ家族のいる前で泣くのも憚られ、子どもが騒いでいる中、風呂へ入れとか布団を敷けとか雑音が行きかうところで見る気も減退して、気合を入れてしっかり見たことはない。
今回は昼間で一人で見ることができたので、思う存分堪能して観ることができました。
そしてやっぱり泣けました。
映画はCМ抜きで一人で静かに見るものだと改めて確認した次第。
高倉健の顎付近のしわを見ると年齢は隠しようがなく、若い頃の回想はちょっと無理があるけど、さすが健さんは格好いい。
石炭産業の衰退と相次ぎ坑内事故、鉄路が永遠に続くと思われていた時代から衰退し次第にローカル線が廃線となっていき、マル生運動と厳しい労働争議、そういった時代背景を肌感覚でわかるのは私たちぐらいが最後の世代かも。マル生が生産性向上運動の経営側の略称なんて今では分からんでしょうし、そこから国労、動労の組織存亡をかけた労働争議と順法闘争なんて言うのは、今は昔としか言いようがない。
そんな中でも、一つ一つの駅務手順を全く手抜きすることなくまじめに職務を遂行する駅員一人しかいない駅の駅長佐藤乙松役の高倉健。鉄道業務に誇りと愛着を持ち、子どもが病気でも仕事を抜けることなく、妻の臨終にも間に合わない。家族のことは「私」のことで、駅の仕事は鉄道員としての「公」のこと。鉄道員としてはまず「公」を最優先しなければいけない。こういう人の働きで、世界一と言う正確かつ安心安全な日本の鉄道網が成り立っていたんだ。不器用な生き方ですけど不器用だからこそ、その姿には泣けてきます。
もっとも、今や「公」の仕事はない身としては、「私」の見たくない現実に向き合いたくないので「公」に逃げ込んでいるという側面もあったのか…否が応でも母の認知症に対応しなければいけなくなった身としては、どこか仕事にでも逃げ込みたくなる時もあるのは正直な感覚なんですけど、自らのゲスさにちょっと恥じ入ります。
ところでこの映画の原作は浅田次郎の短編集「鉄道員」の中の「鉄道員」です。これも読んだことがあるのですが、映画を見た勢いでもう一度小説も読んでみました。
40ページほどの短編ですが、改めて読んでみるとちょっと驚いたのですが、セリフなどが結構そのまま忠実に映画に使われています。

もっとも短編小説なのでこれを2時間の映画にするために原作にないことを加えたり小さなエピソードを膨らましたり。志村けんの出番は映画で付け加えたところですし、その子どものことも原作にはない。それでも結構原作に忠実に原作を映画化していると言っていいでしょう。
因みに最後のクレジット迄しっかり見たのですが、どこに出っていたのか分からなかったのですが、板東英二とか田中要次とかの名前がいろいろ出ていたので、金と手間をかけて俳優も贅沢に使っていることが分かり、さすが映画と感心しました
映画も小説もそれぞれ独立して楽しめますし、観てから読んでも読んでから観ても十分満足できます。
もっとも私的には小説では「鉄道員」収録の「うらぼんえ」が一番好きだったんですけど。鯔背で孫への強い思いと愛情の深さで冥界から出てくる祖父の姿にはこれまた泣けてきます。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 10月10日熱田神宮公園テ... | トップ | 10月16日熱田神宮公園テ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画」カテゴリの最新記事